【財務のプロが語る企業選びの軸】営業利益率とは?ホールディングス制がオススメの理由は?

就職先を選ぶ際、ともすると企業の知名度や規模、安定性ばかりに気を取られがち。しかし、違う視点でリサーチしてみると、これまで知らなかった企業に出会える可能性も高まります。

今回は、財務のエキスパートであるシンクタンク・日本総合研究所の高津輝章さんに、企業選びのポイントをインタビューしました。企業を選ぶ際に見ておくと良いポイントとは?

 

日本総合研究所・高津輝章さんプロフィールプロフィール 株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー
高津輝章さん
企業を「経営企画」「経営管理」「財務」の観点から支援するプロジェクトを多数手がけている。また、企業がグループ本社機能の高度化・効率化を目指す際の支援も。公認会計士。

【ポイント1】売上高ではなく、営業利益率の高さに着目。収益の秘密を探ろう

財務に関する指標は、企業を見る上でとてもわかりやすい“ものさし”です。上場企業の財務状況はインターネットにも公表されていて、誰でも閲覧可能です。財務指標というと、まず目がいくのが売上高ですが、着目してほしいのは「営業利益率(売上高営業利益率)」です。

営業利益率とは?高い企業は「優良企業」の可能性が高い

営業利益率とは、売上高に営業利益が占める割合のことで、「営業利益÷売上高」で計算することができます。利益率が高ければ業績が良いということ。営業利益率が高い企業は、何らかの工夫でコストを抑えているか、高くても売れるような付加価値の高いモノやサービスを提供しているかのいずれかのケースに該当することが多いです。すなわち、優れたビジネスモデルや経営戦略を持っている可能性が高い企業であると言えます。

営業利益率はインターネットで検索できる。平均値は5~6%

営業利益率のランキングは、インターネットに掲載されています。こうした数字を見る際の一つのポイントは、平均値を知っておくこと。日本企業の営業利益率の平均値は5~6%です。平均値より営業利益率がかなり高い場合には、その企業の事業内容やビジネスモデルを確認してみるといいでしょう。有名な企業ではないにもかかわらず営業利益率が20%を超えるような高利益率の企業も少なくないので、今まで名前を知らなかった優良企業と出会えることもあるかと思います。

【ポイント2】ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)の高さで、資産と利益の関係を知ろう

自己資本(純資産)に対して、どれぐらい利益を生み出しているのかを示す「ROE(自己資本利益率)」も、企業を見る際の一つの材料となります。

ROEは、「より少ない資産でより高い利益を上げている企業ほど良い企業」という考え方に基づく指標です。ROEは分母が自己資本なので株主目線の指標ですが、もう一つ、総資産に対してどれくらい利益を生み出しているかを示す「ROA(総資産利益率)」という指標もあります。

余剰資産や自己資本(純資産)が高いからといって、良い企業とは限らない!?

ROEやROAが高い企業は、営業利益率のときと同様、優れたビジネスモデルや経営戦略を持っている可能性が高いのですが、それに加えて、余剰資産をあまり保有していない(成長のためにお金を投資している)ことが多いのも特徴です。余剰資産とは、当面使う予定のない現預金や遊休不動産など。学生の皆さんは、「現金をたくさん持っているのは、良い企業では?」と思うかもしれませんが、今の預金利息からもわかるように、現預金がたくさんあっても、そこからは収益はほとんど生み出されません。余剰資産が多い企業は純資産や総資産が膨らみますので、そこから収益が上がっていないとROEやROAは低くなってしまいます。逆に、成長機会が多くある企業は、余剰資産を持つのではなく、収益を生む設備投資などに充当するため、ROEやROAが高まりやすくなるのです。

同じ理由で、自己資本の比率が高い企業も必ずしも良いとは限りません。日本企業の自己資本比率(返済不要の自己資本が全体の資本調達の何%あるかを示す数値)の平均は、30~40%です。自己資本比率があまりに高い企業(例えば70~80%以上)は経営の安定性は高いと言えますが、借り入れがまったく不要な状態、つまり成長のための投資先がない状態であるとも言えるのです。

一方で、自己資本比率が低すぎる企業は、経営の安定性が損なわれている可能性があります。ただし金融業界のように、そもそも業界の特性上自己資本比率が低い場合もあります。同じ業界の他社と比較するなどして、業界の平均的な水準も知っておきましょう。

最低でも過去3年分を調べるのがコツ

興味を持った企業について調べる場合は、金融庁の「EDINET」や「Yahoo!ファイナンス」などが便利です。調べる時は、1年という短期間ではなく、過去3年間ぐらいを参考にしつつ、異常な数値が出ている年は除外して考えましょう。例えばリストラに関する費用が発生して一時的に大赤字になっている場合や、逆に土地などを売却して一時的に大きな黒字が発生している場合などがこれに該当します。

なお、ここまで営業利益率やROEなど「率」で見るメリットを説明してきましたが、当然「率」だけで見るのではなく、上高や従業員数など規模に関する情報は実数で捉え、併せて見るようにしましょう。

財務のプロが語る企業選びの軸:イメージ画像

【ポイント3】やりたいことができる風土の可能性あり!?カンパニー制やホールディングス制

グループ経営機能強化に関するコンサルティングなどにも携わっている立場から、私は「各事業の自立性・独立性を重視しているかどうか」も、企業選びの重要なポイントだと考えています。その理由は、各事業の自立性・独立性を重視している企業は、比較的各組織や個人に与える裁量や権限も大きい傾向にあり、やりたいことができる風土が培われている可能性が高いからです。

そういう企業は多くの場合、経営方針や経営計画の中で「各事業の自立性・独立性」をうたっています。また、事業ごとに複数の企業に見立てて独立採算制の組織とする「カンパニー制」や、カンパニー制をさらに進めた「持ち株会社制(ホールディングス制)」を採っている企業も各事業の自立性・独立性を志向しているケースが多いです。

こうした企業は、各事業に責任と権限を与えて、各事業の自立的な成長を促そうとしていることが多いので、グループ全体での成長が期待できます。また、カンパニー長やグループ会社の社長といった経営目線で事業に携わることができるポストも多くあります。

成長志向のために制度を取り入れている企業を選ぶのが良い

インターネットで、持ち株会社制やカンパニー制を採用している会社を検索することも可能です。こうした組織形態を採用している企業は比較的大企業が多いですが、これまで名前を知らなかった中堅企業も見つかるでしょう。

注意点としては、カンパニー制やホールディングス制を採用している目的は、必ずしも事業の自立性・独立性だけではないという点です。例えば、経営統合の過程で持株会社を設立するケースなどもあります。その会社がどういった経緯でその組織体制を採用しているかは、企業のホームページ上の「沿革」や、過去のIR資料などから確認できます。

何より大切なのは、自分に合う企業かどうかを肌感覚で判断すること

大企業でも10年後、20年後はどうなるかわからない今の時代、「絶対の安定などない」と心得ておきましょう。

もし私がこれから就活するとしたら、決して企業規模が大きくなくても、優れたビジネスモデルを持っていて(ゆえに利益率が高く)、さらに環境の変化に対応できる柔軟性を持った企業には魅力を感じます。例えば、一定の成功を収めた後、なお成長意欲の衰えていない上場ベンチャー企業などが該当します。

上場するほどの成長を遂げながらも、ベンチャー気質を持ち続けている企業なら、おそらく人手も不足しているでしょうから、新しい仕事や重要な仕事も任せてもらいやすいと思います。そういう環境で仕事をすれば、将来どんな企業でも通用する力が身につく可能性が高いですし、若いうちから経営的な目線を養うことも可能です。

今回挙げた3つのポイントは、インターネットでリサーチできる内容ですが、何より大切なことは、その企業が自分に合うかどうかを“肌で感じる”こと。実際に会社を訪問して先輩社員の話を聞いたり、会社説明会で社長の話を聞いたり、できればインターンシップを経験するなどして、最後は自分の肌感覚で判断してください。その場に身を置いたとき、自分が不快か不快ではないか――その企業を調べたときには何の不満がなくても、実際にその会社を肌で感じたときに何か引っかかるような感覚があれば、合わないと判断した方がいいこともあります。逆に、リサーチ段階では意識していなかった企業であっても、自分が自然体でいられる感覚が得られたときには、その感覚はぜひ大切にしてみてください。

 

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取材・文/笠井貞子
撮影/平山 諭


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