「俳優で食べていけるなんて思いもしなかった」西島秀俊さんが語る、仕事への向き合い方

西島秀俊さん写真

プロフィール 西島秀俊(にしじま・ひでとし) 1971年、東京都生まれ。94年『居酒屋ゆうれい』で映画初出演。以降、数々のドラマや映画に出演。ドラマでは『チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋』 (2010) 『ダブルフェイス』(12)『流星ワゴン』(15)、NHK大河ドラマ『八重の桜』(13)、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(16)など。映画では『2/デュオ』(97)、『ニンゲン合格』(99)、『Dolls(ドールズ)』(02)、『帰郷』(05)、『サヨナライツカ』(10)、『CUT』(11)、『風立ちぬ』(13)、『劇場版 MOZU』(15)など。近年の作品にドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(17)、『奥様は、取り扱い注意』(17)、映画『クリーピー 偽りの隣人』(16)、『ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~』(17)などがある。現在、『散り椿』が公開中。今後も『人魚の眠る家』(18)、『空母いぶき』(19)など出演作が控えている。

10月26日から公開される映画『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』(https://ozland.jp/)の主人公は、自分の希望とは裏腹に、地方の寂れた遊園地に配属された新入社員の波平(なみひら)。彼女をやる気にさせる無邪気な笑顔の“カリスマ上司”・小塚を演じる西島秀俊さんに、お話をうかがいました。西島さんは、どんな新人時代を送っていたのでしょうか。

先輩たちが失敗させてくれたことが、今の自分をつくっている

―西島さんが演じられた小塚は魅力的な上司ですね。波瑠さん演じる主人公の波平は、彼の仕事ぶりに影響されて、働く喜びに目覚めていきます。

小塚はよく「やってみろ」って波平に言いますが、僕自身も若手のころ、たくさんの先輩がいろいろチャレンジさせてくださいました。そこで失敗したり、学んだりという経験をたくさんさせてもらったんですね。

―そうなんですね。

若くて、物事がよくわかっていなかったから、トンチンカンなこともしていたと思います。きっと僕の見えないところでフォローしてくださっていたわけで。「そんなことしたら失敗するから、やめておきな」って言うのは簡単ですけれど、「面白いヤツだな」ってチャンレジさせてくださったことが、今の僕をつくっていると思っていて。

―「面白いヤツだな」って、まさに小塚みたいですね。

そうですね。小塚って本当にデリカシーのない男ですけれど(笑)、ちょっと気の強い波平みたいな部下に対して、やる気もあるし、面白そうだから「やってみな」って言える。彼女が失敗しても「おまえ、面白いな」って言える人なんですよね。

―劇中で、小塚は波平に投げ飛ばされて(!)腰を痛めますが、そんな状況すら「最高だな」と言えてしまう。西島さんもかなりハードな撮影を経験されていますが、何でも面白がれてしまうところがあるのでしょうか。

僕はただ単にハードな撮影が好きなだけですけれど(笑)。もしかしたら、小塚も波平と同じように若いころは不器用で、職場に溶け込めなかった経験があって、だからこそ自分と似たものを波平に感じて、彼女の情熱を見抜いて、目をかけていたのかもしれないですね。

―園長さんが小塚の過去を波平に語るシーンがありますが、西島さんは小塚の過去をどうイメージしながら演じられたのですか?

小塚はちょっとちゃらんぽらんで(笑)いつも楽しそうにしていますけれど、過去にはおそらくいろいろなことがあったんだろうなと。せりふにもありますが、放浪の果てにたまたまこの遊園地にたどり着いて、きっと園長との出会いでたくさんのことを学んで、今があるんだと思うんです。

―そうですね。

小塚はそれを若い世代の波平に教えて、きっと波平はまた新人が入ったときにそのことを教えていくことになるんでしょうね。そういうところは、僕自身も先輩の役者さんたちに言われて心に残っていることがあるので、次の世代の人たちに直接伝える機会はなかなかないですが、何かしらの形で伝えたり、若い俳優たちが自由に伸び伸びとできる環境をつくったりできたらなと思います。

―若い世代の方とご一緒されることは、いかがですか?

今の若い俳優の人たちは、好きでやっている人ばかりで、スキルや経験を上げることに本当に貪欲だし、一生懸命な人が多い。僕としては同じ志を持つ同士という感覚です。上の世代の先輩方とご一緒させていただくのも楽しいですが、下の世代の人たちと仕事をするのもすごく楽しいですね。

西島秀俊さんインタビュー写真

新人のころに考えていたこと

―新入社員の波平には「自分が希望した企画の仕事で早く認められたい」という焦りがあって、空回りします。西島さんはご自分の新人時代のこと、覚えていらっしゃいますか?

そもそも就職という観点から考えたら、僕なんて「こうしたら、うまくいく」というのが本当にわからない道に飛び込んでいるわけで。俳優なんて、普通に考えたら「どうやったって無理だろう」という職業だと思うんですよ。

―そうかもしれないですね。

だから、俳優として食べていけるなんて思ってもいなかったし、うまくいくはずないんだけど、それでもやりたい、という思いでした。だから、一つ仕事を頂けると本当にうれしくて。全然うまくいかないけれど、一生懸命やって。そういうことをずっとやってきた気がします。

―西島さんも全然うまくいかないことがあったんですか?

俳優を目指す人は、皆そういう思いがあると思います。僕の場合、仕事があまりない時代も長かったし、不器用な人間で遠回りしながらやってきたので。まだまだ全然うまくいかないし、もっともっと勉強したいことがたくさんあります。

―仕事がない時期は、気持ちをどう保っていたのですか?

僕は映画が好きでこの世界に入ったので、仕事が空いていた時期はとにかく映画館に行っていましたね。アクションのお仕事を頂いたときに体が動けるように訓練しておこうとか、やることはたくさんありますから。

―昨年の映画『ラストレシピ』では料理学校の先生に付いてお料理を習われたと聞いています。俳優さんは本当に訓練したり勉強したり、やることが多いですね。最近も『散り椿』で、時代劇の斬新な殺陣に挑戦されていましたし。

そうですね。今も時間が空いたら、そうやって訓練したり学んだりしていることがあるので、そこはどんな状況でも変わらないですね。あとは、やっぱり好きなことだから。夢で食べていけるというのもあると思います。

―先ほど、ハードな現場がお好きというお話がありましたが。

そうですね。ハードな現場を楽しんで、キツイ思いをしながら、素晴らしいカットを重ねて出来上がった作品を、観客の皆さんに楽しんでいただけたらいいなという気持ちで、いつも撮影現場にいます。

人と一緒にやることで、変わっていくのが面白い

―映画『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』は、熊本にある実在の遊園地「グリーンランド」が舞台になっています。西島さんが演じられた小塚役にも、実在のモデルがいるそうですね。

ものすごい二枚目のエネルギッシュな方でした。情熱を持ったアイデアマンで、周りの人たちをぐいぐい引っ張っていくような。映画ではちょっと違うキャラクターに作っていてすみませんというお話をしました(笑)。

―劇中の小塚は、ぐいぐい引っ張るというよりは、誰よりも楽しんでいることで周りを感化するタイプですね。無邪気な笑顔が印象的ですが、どんな過程でそうなったのですか?

僕はもうちょっとぶっきらぼうに、デリカシーのない上司を演じたつもりだったのですが、腕の立つ共演者の皆さんがそれぞれに強烈なキャラクターを作ってくださったので(笑)、みんなでわーっとやっているうちに、気づいたら楽しくなっていたのかもしれないですね。

―柄本明さん演じる園長さんをはじめ、遊園地のスタッフの皆さんがおおらかで楽しいです。

そうですね。自分でも完成した作品を見て、「あれ、こんなに笑っていたんだ」と思いました。僕が最初に考えていた以上に、喜びを持って楽しんで仕事をしているキャラクターになったなと思います。

―そうやって人と混ざることで膨らんでいくというのは、どんな仕事にも言える面白さかなと思うんです。

そうですね。皆さん、上手な方で、強烈な個性の役を作られるので、実際に現場で合わせてみると、「このシーン、こんな感じでしたっけ?」ってなるんですよ(笑)。
そうやって自分の中では想像もしていなかったことが起こるというのが、やっていていちばん 一番楽しいところですね。

―そもそも撮影に入る時は、どのぐらい準備して臨まれるんですか?

準備としてやれることはやって臨むのですが、「こうやろう」とガチガチにプランを固めてしまうと、現場で起こることに反応できないじゃないですか。

―そうですね。

台本を読んで頭の中に入れていったことと、現場で実際に起こることは次元の違う話なので、どちらかというと現場で起こることを信じてやるべきだと思っています。

―それ、就職の面接にも言えそうです。

そうかもしれないですね。リサーチももちろん大事ですが、いろいろなことをわかりすぎていると、飛び込めなくなるところもあるでしょうから。準備できることはして、あとは現場で起こることを楽しめるといいのかなと思いますね。

―役を作っていかれる際に、何か特にしていらっしゃることはあるんですか? 

僕は作品に入ると、いろいろなスタッフに意見を聞いたり、お願いをしたりするようにしています。「何でもいいので、物語を感じさせるものがありますか? 」とスタッフの皆さんにお願いするんです。例えば、小塚がしている時計も、何か物語があるといいなと思うんですよ。

―小塚の人生が感じられる何かということですか?

そうです。実際、映画の中で時計について触れられなくてもいいんですけれど、もしかしたらお父さんが早く亡くなっていて、お父さんの形見かもしれないし、園長先生からもらったものなのかもしれないし。あとは今回、「変なペンが欲しい」とお願いしました。

―変なペンですか?

映画の中で、無駄に光るペンを持っているんですよ(笑)。小塚の楽しい感じが、どこかに出るといいなぁと。僕はそういうものや周りの方の助言に助けられてきたし、そういうことを頼りに一生懸命やっていると、映画を見た誰かが気づいてくれたりするんです。

―そうやって皆で一緒に作っていく西島さんの姿勢は、スタッフの方もうれしいでしょうね。

いや、迷惑かもしれないですけどね(笑)。周りの皆さんにお願いして、皆で作っていくので、衣装はこうなって、持ち道具はこうなって…という中で自然と役も作られていくので、特に意識して切り替えなくても新しい作品に入れます。

―西島さんがずっと面白そうにやっていらっしゃる原動力は何なのでしょう。

人を演じるっていうことは結局、人間って一体何なんだろう、人と人とのかかわりはどういうもので、今後どうなっていくんだろう……どうしても人間について考えざるを得ないんですよね。

―時代によっても変わっていきますしね。

そうですね。人の在り方や関係性はどんどん変化していくし、映画ってそういう時代性をものすごく反映していますから。時代の変化と一緒に、僕らが考えていることも常に変化しているから、そこは飽きることがないですね。

―演じることを通して、そこを探っていくのでしょうか。生きていく手段の一つが、お芝居というか。

そうですね。こうして映画を作る、演じるとなると、どうしても実際のリアルな今の世の中を考えざるを得ないですから。演技の話をしていても、今は時代の空気がこうなってきているよねとか、人と人とのつながり方はこういうふうに変化しているよねという話にどうしてもなっていきますね、不思議と。

―今回の小塚みたいな無邪気な笑顔の役、久しぶりだったように思います。最近はシリアスな役が多いですよね。

『オズランド』を見た方から「こんなに笑っている西島さん、見たことないです」と言われたりするので、自分では意識していなかったけれど、新鮮なチャレンジをさせてくださった作品なんだなと、すごく感謝しています。そうやって振り幅の広い役を頂けるのは、本当にありがたいことですし、これからもいろいろな役に挑戦していきたいですね。

西島秀俊さんインタビュー写真

オズランドPR画像『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』
地方の遊園地に配属され、やる気急降下の新入社員・波平(波瑠)。しかし、“魔法使い”と呼ばれる笑顔のカリスマ社員・小塚(西島秀俊)をはじめ、個性あふれる同僚たちに囲まれながら、いつしか彼女は働く喜びに目覚めていく。
映画にもなった『海猿』などで知られる小森陽一の原作『オズの世界』(集英社文庫刊)を映画『SP THE MOTION PICTURE 野望篇/革命篇』の波多野貴文監督が映像化。原作のモデルとなった熊本県の遊園地「グリーンランド」で撮影が行われた。
監督:波多野貴文 出演:波瑠、西島秀俊ほか
原作:小森陽一『オズの世界』(集英社文庫刊)
(c)小森陽一/集英社 (c)2018 映画「オズランド」製作委員会
配給:HIGH BROW CINEMA、ファントム・フィルム
10月26日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
公式サイト:https://ozland.jp/

取材・文/多賀谷浩子
撮影/黒澤義教
メイク/亀田 雅(The VOICE)
スタイリスト/TAKAFUMI KAWASAKI(MILD)

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