小池徹平さんのターニング・ポイントは?「30歳を超えて、ようやくやりたいことができるようになってきました」

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プロフィール 小池徹平(こいけ・てっぺい)1986年、大阪府生まれ。2001年に「JUNON スーパーボーイ・コンテストでグランプリを受賞。その後、ウエンツ瑛士と共に音楽ユニット「WaT」を結成し、2016年まで活動。音楽活動はもちろん、ドラマ・映画と幅広く活躍する。2013年に宮本亜門演出の舞台『メリリー・ウィー・ロール・アロング~それでも僕らは前へ進む~』でミュージカル初出演。その後、『1789―バスティーユの恋人たち-』『キンキーブーツ』(共に2016年初演)で菊田一夫演劇賞を受賞。ミュージカル俳優としての地位を確立する。昨年は映像分野でも映画『覚悟はいいかそこの女子。』『食べる女』に出演し、ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』の“怪演”も話題になった。

15歳で芸能界デビューのきっかけをつかんだ小池徹平さん。当時はかわいいイメージが強かった小池さんですが、30代に入った今、ミュージカル俳優としての評価も高く、映像の分野でも大人の俳優として、ますます活躍の場を広げています。昨年10月クールのドラマ『大恋愛』も記憶に新しい今、これまでの道のりを振り返ってもらいました。

求められるイメージと、自分自身が違う時期もありました

-昨年のドラマ『大恋愛』も話題でしたね。

ありがたいですね。その影響もあるんですけど、最近、「こんな人だと思わなかった」みたいな感想を頂くことも多いんですよ。

-というと?

爽やかで、キラキラしているイメージを持っていただくことが多かったみたいで。確かに今までそういうお仕事も多かったのですが、僕自身は自分をそういう人とは思ってはいなくて。

-アイドル的なかわいいイメージがあったかもしれません。

そうなんですよね。写真撮影でも「キラキラした感じで」とか「ジャンプしてください」とか言われることも多かったですし。それはそれで求めてくださる方がいたわけだから、ありがたいなと思いながら。

-例えば、今、就活中の学生さんと同じぐらいの10代後半から20代前半はどんな感じでしたか?

求められるイメージと自分自身が違っていたから、納得しながらお仕事している部分と、納得できない部分を抱えながらやっていたところの両方ありましたね。

-ちょうど「WaT」で活動していらっしゃった時ですか。

そうです。例えば、僕自身はもっとリアルな歌詞で音楽をやりたいなと思っても、難しかったりして。自分の中で、イメージを覆したいと思っている時期もありましたね。ただ、スタッフの人たちは、大人の目線から、僕らの持ち味を引き出そうとしてくれていたと思うんです。自分の良さとか、特に若いうちはわからないですし。こうやりたいというのも、単に自分のわがままかもしれないし。

-そういう状況をご自分の中で、どう受け止めていらっしゃいました?

「どうしたら、今のこの経験を将来に生かせるかな」ということを冷静に考えるようにしていました。いろいろな人から「人生設計を明確にしていけ」と言われましたけど、若いうちは、まだわからないじゃないですか。

-そうですね。

ただ、わからないなりに、自分の中で大まかに「今年の夏までにこれができるようになる」「今、これを頑張っているから、来年はこれに出られるようになりたい」とかビジョンを作り出すようにはしていました。

-手応えはありました?

まあ思うようにいったことはないんですけど(笑)。自分がどこまでできるかもわかっていなかったですし。でも、わからないながらも、そういうことをやるようになったのが20代でしたね。

仕事を覚えてから、その先が難しい

小池徹平さんインタビュー画像

-その後、20代を振り返られて、いかがですか?

20代後半は、仕事がうまくいかない時もありました。暇な時期もありましたし。でも、そういう時だからこそ、勉強したり、自分を磨いたり、できることがあるなと。だから、すごくポジティブになりましたよ。

-時間ができたら、何かを身につけようと?

そうですね。うまくいく時期ばかりではないし、誰だっていい時もあれば悪い時もあるから。就活中の皆さんと同じ年齢のころは、とにかく前を向いて、すごく頑張っていましたけど、その後、20代後半が大変でした。

-仕事が見えてきて、壁にぶつかるという感じでしょうか。

就活で、どこの会社に入ろうかなとか悩んでいる時期は、まだ楽しめる時期だと思うんですよ。本当の壁はそこからかなと。

-一度、レールに乗ると、軌道修正も勇気がいりますしね。

そうですね。このまま乗っていていいのかなと思う方もいるだろうし。そうやって別の悩みが出てくるので。そこから先を、どう伸ばしていけるかが大事なんだと思います。

悩みの時期を抜け出した大きな転機とは?

-そういう悩みの時期を乗り越える転機として、ミュージカルに出演されたことは大きかったですか?

本当に大きいです。2013年に宮本亜門さんの演出で、初めてミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング~それでも僕らは前へ進む』をやらせていただいて。ミュージカルというものに出会って、自分がやりたいこと、今やりたいことがすべてそこに詰まっていたんですよ。

-歌もお芝居もあって?

そうです。本当に大変でしたけど、本当に面白くて。WaTで音楽をやってきたから、歌は大丈夫だろうと思い込んでいたんですが、ミュージカルの歌唱は全然違うので。

-違い、といいますと?

ミュージカルの歌は、映画やドラマでいうセリフみたいなものですから。いかにお客さんにわかりやすく物語を届けられるか。そこが難しかったですね。すごく難しいナンバーもあったんです。メロディーがあってないような、ラップのようなラップじゃないような…。今思えば、よくやったなと思いますけど、逆に無知で良かったですね。もう僕、勢いしかなかったですから(笑)。

-芸能界に入られる方には、いろいろな動機がありますけれど、小池さんは音楽だけでなく、お芝居の熱も高かったのではないでしょうか。2005年の映画初出演作『誰がために』でも難役をやっておられます。

ずっと好きなんですよね。30歳を超えて、ようやく自分が普通にいられて、普通に芝居ができる環境になってきたなと。やりたいことができるようになってきたなという気がしているんですよ。

-真っすぐにお芝居ができて。

そうですね。昔からのこだわりなんですけど、自分の中で演じる役の細かい設定を作るのが好きで。この役は右利きがいいか左利きがいいか、ならば腕時計をどっちに着けようかなとか。本当に細かいですよね。

-役者さんで同じことをおっしゃっている方がいました。見ている人に必ずしもわからなくてもいいから、そういうことが自分が役を演じる上での支えになるのだと。

そうです、そうです。だから、続編ができる時、「この役は時計をどっちの手に着けていましたっけ?」ってなりますね。クセや笑い方や声のトーン、そういうのを自分の中で決めるというのを、わかってもらえなくてもいいから、ずっとやってきました。

『キンキーブーツ』再演に向けた思い

ミュージカル『キンキーブーツ」初演時の舞台画像
撮影:引地信彦

-続編といえば、4月には舞台『キンキーブーツ』の再演があります。昨年のFNS歌謡祭で2年ぶりにミュージカルの楽曲を歌ったら、チャーリー役が自分の中に残っているのを感じたそうですね。

舞台は公演も長いし、同じ芝居を何度もやるから、やっぱり残っていますよね。再演って月日がたっているので、同じ脚本を読んでも、感じ方が違ったりするじゃないですか。その間、いろいろな経験を重ねているから。

-そうですね。

環境も変化しますし、2~3年前に感じてやった芝居とは絶対に違うと思うんです。それが再演の良さだと思うんですよ。こうすれば良かったという初演の反省も含めて、今の年齢だから感じることが再演の舞台には活かせると思うので。

-再演に臨む上での課題は?

まず、歌ですね。高いキーの曲が続くので、いかに体力づくりをしても、最善のコンディションを保つのが難しいんです。この2~3年に身につけた技術で、理想の歌い方ができたらなと。技術が上がると、力を入れた歌い方をして余計な体力を使わずに済むので。力を抜いて歌うほど歌はきれいに流れるし、感情も込めやすいから。

-演じられるチャーリー役については、いかがですか?

昔の感覚を追い掛けて、過去の自分をなぞるのではなく、初演で皆さんが楽しんでくださったチャーリーは大事にしつつ、今だから感じられる、より自分の中に落とし込んだチャーリーにしたいですね。彼が置かれた環境や、家族との関係、その中での精神状態にもう少しリアリティーを追求できればなと思います。

-初演が大評判でしたが、カンパニー(キャスト・スタッフ)の皆さんの関係性がいいのが伝わってきたんですね。仕事は人間関係とよく言いますが、稽古も含め、数カ月間、一緒に作品を作り上げていく中で、小池さんが大事にされているのはどんなことですか?

一緒にお酒を飲みに行く機会を大事にしています。一気に打ち解けますから。稽古場だと、「今日の稽古はどうだったね」とか、なかなか話せないじゃないですか。「じゃ、飲みに行くか」って言って、「この場面、こうだったね」というのも第二の稽古場かなと思っています。

もがく時期も大事だと思います

-こうしてうかがうと、若い時にこうなりたいと思っていらっしゃったことが、実現していますね。

そうですね。30歳を超えて、より緻密な計画を立てられるようになりましたね。やりたいことが明確に見えてきたんだと思います。それこそ、WaTの解散(2016年)も、僕にとっては大きなターニング・ポイントだったと思うんですよ。

-というと?

自分一人になって、二人で背負ってきたものを1回下ろして、ちょっと身軽になって。アーティスト活動を置いておいて、自分にできることを考えていったら、どんどんやりたいことが出てきて。あ、自由だなと思って。

-強いですね。

いや、もう、やるしかないじゃないですか。やるのなら、やりたいことをやって楽しむしかないなと思うんです。せっかく、まだ30代前半なんだし。

-「まだ30代」ですか?

はい。あと5年何かをトレーニングしたら、40歳までにできるようになると思うんです。35歳で気づくより、30代前半で気づけたしって、どんどんポジティブに考えています。

-「もう30歳」じゃないんですね。心構えが変わります。

あと、普段からきついトレーニングをするようにしているんです。すると、本番よりきついトレーニングをしているから、本番でもっと余裕を持てるんです。「いざ本番!」といっぱいいっぱいで出て行くより、「これ練習でやったし、いつも通りでいこう!」っていう方がいいと思うので。

-今後の展望をうかがえますか?

ミュージカルを続けたいですね。今、自分に足りないスキルをアップさせていて、あと5年かかるかなという感じです。歌のトレーニングなんですけど。作品との出会いで、どんな技術が身につくかわからないじゃないですか。タップの演目に出演して、急にタップができるようになる人もいるし。

-そうですね。

舞台をやると、自分の持っていない技術を持っている人にたくさん会えるので。映像だけやっていたら、出会えなかった人たちですよね。そういう出会いの中で、もっとやりたいことも増えるかもしれないし。でも、今は目の前にやりたいことが明確にあるので、まずはそこですね。同時にできないので、僕(笑)。

-やりたいことをやっていると、おのずと広がりますね。

そう思いますね。この先、ジャズも歌えるようにしておきたいし、それこそ、“ザ・ミュージカル”みたいなナンバーも歌えるようになれたらと思います。先々を想定しながら、技術を磨いていきたいです。

-就活生の皆さんにひと言お願いできますか。

僕自身、20代はもがいた時期もありましたけど、そもそも、頑張らないとチャンスは来ないと思うんです。やめちゃったら、もう終わりじゃないですか。これは僕の考えですけど、ずっと楽な道を行くより、ちょっと荒れた道を苦しんで、結果をつかんだ方が強くなる気がしていて。だから、もがく時期も大事なんじゃないかと思っています。

ミュージカル「キンキーブーツ」メインビジュアル『キンキーブーツ』
2016年に日本で初演され、大好評を博したブロードウェイ・ミュージカル『キンキーブーツ』。再演を待ち望む声に応え、今年4~5月に再演される。舞台はイギリスの田舎町ノーサンプトン。経営不振に陥った老舗の靴工場の跡取り息子チャーリー(小池徹平)が、ドラァグクイーンのローラ(三浦春馬)と出会い、差別や偏見を捨て、ドラァグクイーン専門のブーツ工場として再生していく。シンディ・ローパーが書き下ろした楽曲とともに、エネルギーに満ちた舞台の幕が開く――。演出・振付:ジェリー・ミッチェル
音楽・作詞:シンディ・ローパー
出演:小池徹平、三浦春馬、ソニン、玉置成実、勝矢、ひのあらた ほか
東京公演:4月16日(火)~5月12日(日)東急シアターオーブ、大阪公演:5月19日(日)~5月28日(火)オリックス劇場
※大阪公演のチケット一般発売日は、1月19日(土)より
公式サイト:http://www.kinkyboots.jp/

取材・文/多賀谷浩子
撮影/鈴木慶子
メイク/加藤ゆい(fringe)
スタイリスト/松下洋介


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