「就活ではGPAも評価対象になるらしい」などと耳にしたことがある人もいるかもしれません。そもそもGPAってどのようなものなのでしょうか?また、実際のところ、GPAや大学の成績を採用選考において企業はどの程度参考にしているのでしょうか?人事のリアルボイスを紹介するとともに、「採用のプロ」曽和利光さんに解説していただきました。
目次
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GPAとは?制度と算出方法を解説
GPA制度とは
GPA制度とは、授業科目ごとに5段階程度で評価された成績に対して段階ごとに「Grade Point(GP)」と呼ばれるポイントを付与し、単位当たりの平均「Grade Point Average(GPA)」を算出して、その一定水準を卒業などの要件とする制度です。主に欧米の大学で広く採用されている成績評価制度で、日本でも2000年代から導入する大学が増えていきました。
GPAの一般的な算出方法とは
GPAの一般的な算出方法は、以下になります。
- 授業科目ごとの成績を素点に応じて、5段階程度(A、B、C、D、Eなど)で評価
- それぞれの段階に対して「4.0」「3.0」「2.0」「1.0」「0.0」のようにGPを付与(表1)
- 以下の「式1」に当てはめてGPAを算出
【表1】GPの付与例
【式1】GPAの算出方法
なお、成績評価の段階の数や素点の刻み方、また、段階に応じて付与されるGPの値は大学によって異なります。
また、大学によっては、A、B、C、Dなどの段階評価を行う前の素点からGPを算出する方法を採っているところもあります。
人事500人アンケート実施!選考でGPAや成績を参考にしている?
では、実際にGPAや成績は就活の場でどのくらい参考にされているものなのでしょうか?新卒採用を担当している人事担当者500人にアンケートを行い、「採用選考の際に、GPAや成績を参考にしているかどうか」聞いてみました。
「参考にすることがある」と答えた人事の声
・GPAで採用・不採用が決まることはないが、どの程度学業に真剣に取り組んできたかを判断する材料になっている(ソフトウェア業界)
・学力、人間性、業務に対する向き・不向きなど、あらゆる面を総合的に見る中で、一つの指標として見ている(専門商社業界)
・学校でどのような学び方をしたのかなど、個人の学びに対する姿勢を知ることができるので参考にしている(インターネット業界)
・ある程度の学力があれば、業務を理解する期間も比較的短く、あらゆることに忍耐強く取り組めると考えている(SI業界)
「参考にすることはない」と答えた人事の声
・大学によってGPAの基準が違うため(電機業界)
・成績よりも、むしろ素直さや優しさが要求される仕事だから(介護・福祉業界)
・GPAでの評価と仕事の出来にそこまで相関関係を見いだしていないため(ホテル業界)
・仕事で覚える内容は、必ずしも学校で学ぶこととは一致しないから(ソフトウェア業界)
・成績を重視しないわけではないが、人物そのものを見極めたいという採用方針なので、大きくは重視しない(陸運業界)
「どちらとも言えない」と答えた人事の声
・GPAは大学によって算出基準がまちまちのように感じられるので、あくまで参考程度。それよりも、面接を通してわかる人となりに重きを置いて判断している(ガス業界)
・GPAよりも、筆記試験と面接で評価しているため(公務員業界)
・接客業なので、基本はコミュニケーション能力を重視するが、学業への取り組み姿勢が仕事への取り組みに反映されるケースが散見されるので、参考程度に見ている(通信業界)
・どちらの学生に内定を出すかなかなか決まらないとき、参考にすることがある(専門商社業界)
【採用のプロが語る】GPAよりも「履修履歴」を見る企業が増加傾向にある!?
続いて、人事として新卒採用を20年担当し、現在はさまざまな企業の人事・採用コンサルティングを手掛ける採用のプロ・曽和利光さんの見解をご紹介します。
採用選考でGPAを評価することがトレンドとは言えない
現状、GPAの数値や成績をとりわけ重視して選考の通過者を決めたり、内定を出したりする企業は「少ない」と思っています。
近年、学業に力を入れている学生の割合が増えてきているため、企業としてもその頑張り方や学業というある種「やらなければならないこと」に対してどんな努力をする人なのかということを知りたいという意向が強まっていることは確かです。
ただ、その判断材料としてGPAが適切かというと、学生の能力を推し量るに足るだけの高い精度を持てていないため、どの企業もさほど重視していないのが現状です。
というのは、大学によって成績評価の段階の数も、素点の刻み方も、付与されるGPの値も異なりますし、そもそもの素点の付け方にも教員によってばらつきがあるからです。日本の大学のGPAの精度を高めるには相当な時間が必要であるため、現状では重視し得ないというのが、多くの人事の見解ではないでしょうか。
企業の関心が高い「履修履歴」ってどういうもの?
GPAや成績をさほど重視しないという声もある一方で、学業への取り組み方を知るため、今、企業は学生の「履修履歴」に目を向け始めています。
「履修履歴」とは、履修した科目の履歴のこと。日本経済団体連合会の「採用選考に関する指針」の中でも「履修履歴の活用検討の推奨」を唱えていますが、この履修履歴を基に、面接の中で「学問上、どのようなことに興味を持っているのか」「学ぶ上でどのような基準で行動してきたのか」「どのような物事の理解の仕方をするのか」など、学生の知的な興味や志向、価値観を知ろうとする企業は増えつつあります。
「履修履歴」に注目する理由は、やるべきことへの臨み方・姿勢が見たいから
企業が履修履歴に注目している理由は、学業と仕事には「やるべきこと」という共通点があるからです。というのは、これまで企業はアルバイトやサークル活動などの課外活動に注目してきましたが、これらのエピソードからは、「やりたいこと」に対する姿勢や取り組み方はわかっても、「やるべきこと」に対する臨み方や姿勢はなかなか知ることができません。特に入社直後に就く仕事というのは「やるべきこと」である場合も多いため、そこにどのように向き合うことができる人なのかをなんとか知ることはできないか、というのが人事の課題でした。そんな中、登録された履修履歴を活用して面接を行う仕組みがつくられたことで、履修履歴に注目する企業が出てきたわけです。
したがって、企業が注目するのは、あくまで、「やるべきこと」への取り組み方や、知的な興味や志向、価値観であり、成績の良し悪しや知識量ではありません。また、学業を頑張ってきた人が有利になるというわけでもなく、課外活動への取り組み方や、学業と課外活動のバランスの取り方なども含めてより多面的にその人を判断したい、というのが企業の真意なのです。
GPAや成績に自信がなくても大丈夫!今からできる準備とは
最後に、「GPAや成績が低いからどうしよう…」と気にしている学生に対して、曽和さんから準備方法を教えていただきました。
成績の良し悪しにかかわらず、履修理由や成績の背景を伝えることが大事
企業には、履修科目の評価、すなわち成績の情報も伝わりますが、先述した通り、企業が知りたいのは「『やるべきこと』にどのように取り組む人か」ということであり、成績の良し悪しではありません。唯一、成績という「結果」が面接での評価に影響するとすれば、学生時代に頑張ったこととして「学業」をアピールしているにもかかわらず提出された成績が良くない、といった矛盾が生じている場合くらいです。
したがって、成績やGPAに自信がないからといって、ほかに頑張っていることを横に置いて無理をして成績を上げようとする必要はありません。それよりも大事で、かつ、今から準備しておきたいのは、「なぜこの科目を履修したのか」「なぜこの成績なのか」を説明できるようになっておくことです。
例えば、「学業以外に頑張りたいことがあったので、学業には必要単位を最小限の労力で取得することを目標に取り組んだ」という説明でも構いません。企業によっては、「目的に対して最短距離でアプローチできる人」と好評価を受けることもあるでしょう。一方で、「愚直な人が欲しいから要領の良さをアピールされてもちょっと…」と評価する企業もあるかもしれませんが、これは、課外活動への取り組み方に対する評価と同じで、その人の姿勢や行動がプラスに評価されるかマイナスに評価されるかは、企業ごとの採用基準によって異なります。決して本人に問題があるわけではありません。
このことを念頭に置いて、成績やGPAという「結果」を過敏に気にするのではなく、学業への取り組み方や履修の背景を率直に伝えましょう。
【調査概要】
調査期間:2018年12月4日~12月6日
調査サンプル:過去1年以内に新卒採用に携わったことがある人事担当者500人
調査協力:楽天インサイト株式会社
取材・文/浅田夕香
撮影/刑部友康
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