『仮面ライダー』で注目を集めた甲斐翔真さん 「嫌だと思っていたことの中に、自分の好きなことが隠れていた」

甲斐翔真さんインタビューカット

プロフィール 甲斐 翔真(かい・しょうま)1997年、東京都生まれ。2016年『仮面ライダーエグゼイド』でドラマデビュー。その後のドラマ出演作に『花にけだもの』『覚悟はいいかそこの女子。』『ゼロ 一攫千金ゲーム』『電影少女-VIDEO GIRL MAI 2019-』(18)、『いつか、眠りにつく日』(19)など。映画では『仮面ライダー』シリーズをはじめ、『写真甲子園0.5秒の夏』(17)、『覚悟はいいかそこの女子。』(18)、『君は月夜に光り輝く』(19)などに出演。2020年1月から上演される『デスノート THE MUSICAL』が初舞台にして初ミュージカル、初主演となる。

『仮面ライダーエグゼイド』のパラド役で子どもたちの憧れの的になった甲斐翔真さん。2020年1月上演の『デスノートTHE MUSICAL』(https://horipro-stage.jp/stage/deathnote2020/)では、初のミュージカルで主演を務めます。「芸能界に入るとは思ってもみなかった」と言う甲斐さんが見いだした、演じることの楽しさとは――?

オーディションは答えがないから、難しい

―来年1月から上演される『デスノート THE MUSICAL』の主人公・夜神月(やがみ・らいと)役が決まりましたね。

事務所の方からオーディションがあると聞いて、ぜひ挑戦したいと思いました。こんな大作、一度も舞台を踏んだことがない自分が受かるわけないと思いながら。

―たくさんの方が受けられたそうですが。

後から2416人の中から選ばれたと聞いて、プレッシャーを感じました。2415人の方の思いを無駄にしないようにしないといけないから。「自分よりヤバイ奴がいたんだな」と思ってもらえるように、夜神月として存在できるように取り組みたいと思います。

『デスノート THE MUSICAL』PR画像
▲『デスノート THE MUSICAL』で甲斐さんが演じる八神月(以下、ライト)。

―オーディションのこと、覚えていますか?

ほとんど覚えていないです。緊張しすぎて汗だくで(笑)。これで人生が変わってしまうと思うとミスできないし、そう考えるほど緊張してしまい…。自分の出せる力は出し尽くしたつもりですけど、帰り道は「これは落ちたな」と思っていました(笑)。

―オーディションはよく受けられるんですか?

受けるのですが、そのたびに緊張します。作品ごとに扱う題材が違うので、まったく慣れなくて。自分はこういう人ですっていうことを伝えたいと思うんですけど、答えがないから、実感もなくて難しいです。落ちたと思ったら、受かっていたりして。

―自分がいいと思うことを信じて臨むしかないですね。

だから、自分が「いいと思うこと」の幅を広くすることが大事だと思っています。作品の一場面を演じてみることも多いですが、「これだけがいい」と思い込んでいたら、表現の幅が狭くなってしまうから。いろいろなものを観て、触れて、感性の幅を広げて、いろいろな方向性に切り替えられるようにすれば、より審査する方の心に存在感を残せるのかなと。

―存在感、ですね。

オーディションって存在感が大事ってよく言われるじゃないですか。選考する方も大勢に会うから、話の内容より、雰囲気や印象が残ったりすると思うんです。ドアを開けた瞬間の表情とか姿勢とか、細かいことを言えば髪型とか。どう印象づけるかも大事なんだろうなと思います。

―なんだか就活の面接と似ています。

あ、そうですね。それなら企業に合った立ち居振る舞いも大事なんですかね。オーディションも、好青年の役ならきちんとした感じで行くとか、闇を抱えた役なら、ちょっとアンニュイに行くとか。アンニュイって…(笑)。フラットに冷静な感じで行くとか。

―甲斐さんが注目されるきっかけになった『仮面ライダーエグゼイド』のパラドは敵役ですから、オーディションではアンニュイに…。

いえ、とにかく必死でした(笑)。がちがちで「甲斐翔真です!」って自己紹介して。「じゃあ、変身やって」と言われて、「変身⁉どうやるの?」って思いました(笑)。

―変身するんですね…。

そうなんですよ。今考えると、うまくできるかよりも、何かをやらせたときの姿勢を見ていらっしゃったのかな?と思うんですけど。オーディションとか面接とか、人と人が会って、自分の人生が変わるっていうのは面白いし、怖いですよね。

―オーディションの緊張対策はありますか?

自信を持つために、課題曲や台詞を、すり減るぐらいまで練習することですね。「台詞を覚えたから、もうこれぐらいでいいかな」と思って行くと、審査する監督やプロデューサーの圧にやられて、すべて自分のプランが台無しになったりするんです。

―わかるような気がします。

すでに台詞を覚えていても、さらに何回もやっていくと、台詞が体に染み込んで、いかなる状況でもおのずと口から出てきたり、そこに付随する考えがぱっと出てきたりするんですよね。そこが、一番強い境地なんじゃないかと思っています。

芸能界に入るとは、思ってもみませんでした

―もともとスカウトがきっかけだそうですね。

はい、言いたくないぐらいベタな原宿スカウトです(笑)。芸能界は、観る側としか考えたことがなかったので、まさか自分がテレビの画面に映る日が来るなんて。『仮面ライダー』の時は特に思いましたね。「オレ、変身してるじゃん!」って(笑)。

―スカウトされて、「高校3年生まで待ってほしい」とお伝えになったそうですね。

そもそもサッカー推薦で高校に入っていたので、やめられないというのもあったし、自分でもここでやめたら中途半端だし、せっかく高校に行ったのに何かを失う気がして。2年は長いので結構大きな決断でしたけど、高校もサッカーも引退試合までやり遂げたいと決めました。

―サッカーを全うしたい気持ちはありつつ、芸能界の仕事にもご興味が?

せっかく声をかけていただいたし、前向きに考えていました。部活もやっていたから、3カ月に1回とかですけど、お芝居のレッスンにも通って。でも、高1で初めてレッスンに行った時は超恥ずかしくて顔を真っ赤にしながら、「絶対こんなの嫌だ」って思っていました(笑)。

―初めての撮影現場は?

『写真甲子園』という映画でした。そこで初めて、台詞を覚えてカメラの前に立ったのですが、緊張してしまって、面白いなんてとても思えなかったです。現地のボランティアの方150人ぐらいを前に、写真の発表をするシーンがあって、ガチガチで、もう嫌だって(笑)。そんな3週間でした。

―では、この仕事をやっていこうと思われたのは?

完成した『写真甲子園』を観たら、「あ、映画になっている!」と。自分がスクリーンの中でお芝居しているって面白いかもしれないって思えたんです。それを一番決定的にしたのが『仮面ライダー』でしたね。

―どんなところですか?

撮影しながら、リアルタイムで反応が返ってくるので。僕のキャラクターに憧れてくれる子どもたちが本当にかわいくて、この子たちに夢を与えるためにやりたいなと思うようになりました。それまでは部活の延長線上でなんとなくやっていたんですけど、徐々にいろいろなお仕事をさせていただくうちに、仕事という意識で、見てくれる人たちにもっと喜んでもらうためにはと考えるようになって。

―いろいろな作品を経験しながら、ですね。

大人から「こうした方がいいよ」と言われるだけでは、そう思えなかったと思います。自分が経験して感じたことが、一番説得力があるじゃないですか。誰にどう言われても、結局は自分次第、自分が好きか嫌いかだなと思いました。この仕事が好きだと気づけて、よかったなと思います。

―具体的に何が好きだと思われたんですか?

人前で何かをするっていうことですね。わりと苦手だったんですよ。小学校から高校ぐらいまでは、授業中に教科書を読まされるのも苦手で、顔が真っ赤になっていたんです。

―それが大丈夫になったのは?

『仮面ライダー』の時に舞台あいさつをたくさんやったんです。カメラの前でお芝居することもすごく勉強になったけれど、ライダーはイベントが多いので、人前で話すことにだんだん慣れていくんですね。自分の考えや思ったことを伝えるって意外と難しいじゃないですか。一番糧になったかもしれないです。

―仕事の中で、変わっていけるってすごいことですね。

変わるしかない状況にあったのかもしれないです。もう、やるしかないから。そういう状況が一番成長できるじゃないですか。英語を身につけたいと思ったら、単身アメリカに行けば、もうやるしかないですよね。それぐらいの状況下に僕はいきなり置かれたから、人前に出るこの仕事が好きになれたんだと思います。

―やってみないとわからないことは、多そうです。

日々の鍛錬の中、嫌なこと、苦手なことをやるっていうことがすごく大事なんだなと思います。嫌なことをいかにやるか。普通は逃げるじゃないですか。だけど、やってみると、嫌なことの中に自分の好きなことが隠れていたりするんですよね。

―最初は嫌だと思っていたけれど、実は…?

入り口が嫌で、勝手に拒絶していただけで、奥に広げてみたら、「おお、めっちゃいいじゃん」って思ったりするから。意外とやってみるものですよね。

甲斐翔真さんインタビューカット

―厳しい環境に置かれても「やるしかない」と前に進める強さは、長年サッカーに打ち込んでこられたことも影響していますか?

あるかもしれないですね。勝ち負けがつくものは、特にそうかもしれないです。負けたときは、忘れるのではなくて、それを糧に頑張ります。褒められるより、違うって言われた方が燃えるタイプです(笑)。褒められると、次はどうしたらいいか、わからないじゃないですか。それなら、ずっと課題があって、少しずつ上っていける方がいいなと思うんです。最終的に1万回違うって言われても、1万1回目は行けるかもしれないじゃないですか。

―どこかの歌で聞いたことがあるような…。

なんかそうなっちゃいましたけど(笑)、1万1回目のために、1万回の失敗があると思えば、失敗も怖くないし、それを喜べるようになるというのが最近の僕のトレンドです。

―就活生の皆さんも、まさにそういう状況だと思います。

僕は就活したことないから、わからないですけど、企業vs自分だから、超アウェイだし、いい結果が出ないと、結構くらっちゃいますよね、きっと。僕もちょうど22歳なんですけど、大学生活ってやりたいことを探して、経験値を高める意味で、すごくいい場なんだろうなと。うらやましいなと思いますけど、僕は僕でこういう道を選んだから、頑張ろうと思います。

現場で学んだことをもう一度整理したい

―『デスノート THE MUSICAL』の話に戻りますが、人間の危ういところが描かれた作品ですね。

題材としては割と重めで、生と死、正義と悪…重いものが詰め込まれていますよね。妹に「お兄ちゃんは私のヒーローだから」って言われながら、ライト自身は“死のノート”(デスノート)に犯罪者の名前を書いて、それが徐々にエスカレートしていく。でも彼自身に悪という認識はないんですよね。エルたちも正義でライトを捕まえようとしているし。

―そこが、一つの鍵ですね。

法と正義のあり方、本当の正義はどこにあるのかっていうところですよね。愛って本当に紙一重だなと思います。ライトはすごく正義を愛していて、最初は悪を裁こうとしていたのに、徐々にライト自身が悪に染まってしまって…。この世の中の出来事って結局、愛であふれていて、表裏一体なんだなと思います。

甲斐翔真さんインタビューカット

―初めてのミュージカルだそうですね。

発声がまったく別なんですよね。これまでプライベートで歌うときは、音で歌ってきたけれど、ミュージカルは意味が先に来るんだなと。気持ちが高揚したから、台詞が音になっていく。感情が爆発するから高音になったり、考え事をするときは静かに歌ったり、まずは気持ちありきなんですよね。まず役であることが大前提だから、来年1月までしっかりレッスンしたいです。

―来月からお稽古が始まるそうですが。

これまで映画やドラマの現場を経験させていただいて、現場で学ぶことが本当に多くて、今年で演技を始めてちょうど3年なんです。今回、初めて舞台に挑戦するので、これまで学ばせてもらった知識を自分の中でメソッドとして組み立てて、ちゃんと落とし込んでからやりたいなと思っています。

―来年の1月まで、身につけることが多そうです。

とにかく今は吸収したいです。根本から学び直せるこの時期がとても重要だと思うので。お稽古に入る前に歌のレッスンを始めていて、俳優という職業に向ける視線も一つ変わってきているので、1月にどうやって夜神月として舞台に立っているか、僕自身も楽しみですね。とにかくハングリーに、お客さんのために自分のために、息長くこの業界でやっていけるように実力をつけたいと思います。

『デスノート THE MUSICAL』PR画像『デスノート THE MUSICAL』
大ヒット・コミック『DEATH NOTE』が2015年にミュージカル化。日本を代表する演出家・栗山民也や世界的に活躍する作曲家フランク・ワイルドホーンらが結集し、浦井健治、吉田鋼太郎ら豪華キャストで上演され、大成功を収めた。2017年に再演された本作が、来年1月からキャストを一新して上演される。
演出:栗山民也
作曲:フランク・ワイルドホーン
出演:村井良太/甲斐翔真(ダブルキャスト)、髙橋颯、𠮷柳咲良、西田ひらり、パク・へナ、横田栄司、今井清隆 ほか
東京公演:1月20日(月)~2月9日(日)東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
静岡公演:2月22日(土)~23日(日)清水マリナート
大阪公演:2月29日(土)~3月1日(日)梅田芸術劇場
福岡公演:3月6日(金)~8日(日) 博多座
チケット一般発売日は10月19日(土)より
公式サイト:https://horipro-stage.jp/stage/deathnote2020/
「Road to デスノートTHE MUSICAL 2020 PV」はこちら:https://youtu.be/nxS5sIkTb8o

(c)大場つぐみ・小畑健/集英社

取材・文/多賀谷浩子
撮影/中川文作
メイク/Emiy
スタイリスト/秋山貴紀

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