誰もが知っている人気企業や大企業に新卒で入社したのに、3年以内に早期退職する人がいます。人気企業、大企業を志望する就活生からしたら「なんてもったいない…」と言いたくなりますが、本人は「こんなはずじゃなかったのに…」という残念な気持ちで、退職という大きな決断に踏み切っています。
そんな先輩たちがホンネで語る、リアルな就活失敗体験談にじっくり耳を傾けてみませんか。
【CASE1】は、憧れの大手食品メーカーに入社したものの、3年で退職したAさんの就活失敗体験談です。
体験談の後には、企業の採用に精通している、株式会社人材研究所の曽和利光さんから、参考になるアドバイスも頂きました。これからの就活に役立つヒントが満載です。
譲れない部分が満たされない働き方に、どうしても耐えられなかったAさん(28歳)
志望理由は好きなもの×強みを生かせる働き方、のはずが・・・
僕は都内の私立大学の文系学部を出て、新卒で大手食品メーカーB社に入社しました。
就活を始める時、最初にいろいろと考えたのですが、まずは好きなものを扱いたいと思いました。
その時真っ先に浮かんだのが、当時のアルバイトで接点のあったB社の商品でした。また、正直に言うと就職活動の時は「やっぱり、せっかくなら大手企業」という思いが強かったのです。
自分の中で、もう一つ、実現したい軸として「英語を使って、海外の人と働ける仕事に就きたい」というものがありました。英語力には自信があったんです。B社は国内食品メーカーの中でも特に海外売り上げが高かったので、英語を使って働けるチャンスが多いと判断しました。
ちなみに、英語を使うという点で外資系企業も検討したのですが、性格的にも、いわゆる実力主義の環境でバリバリやるほどの自信はなかったので、志望しませんでした。
最終的に、「1. 大好きな商品を扱っている」「2. 海外売り上げ比率が高いから英語力を生かして働けそう」という条件を満たした「大手」であるB社を第1志望として就活に励み、無事内定を獲得しました。
退職理由は、自分が譲れない点が満たされないこと
しかし、いざ入ってみて、大変なことに気づきます。B社では「若手のうちに海外事業に携われる可能性はかなり低い」ということがわかったのです。
パリッとしたスーツに身を包み、グローバルにビジネスをしている自分をイメージしていましたが、最初の配属先は関東近郊でスーパーやお酒の量販店の営業でした。
店舗の倉庫整理を手伝って汗まみれになったしわしわのスーツで、郊外の田園風景の中を営業車で走っている自分が、入社前にイメージしていた自分の姿と違いすぎて、次第に落ち込みが深くなっていきました。客先に到着しても、車から降りられないことも何度あったかわかりません。結局、入社後3年間、1度も英語を使う機会はありませんでした。
面接では、英語力が強みだということ、海外事業に携わりたいと確かに伝えていたはず。だから配属を聞いて、自分の強みが評価されていないのでは?と寂しくなりました。でも後になってわかったのですが、海外事業は主に子会社が担っていて、B社からそこに行くには管理職以上が出向する形で、ということだそうです。「若いうちから海外の人と働けるかどうか」について、直接社員の方に聞いてはいませんでした。今思えば完全にリサーチ不足です。
この時あらためて、自分にとっていかに「英語を使って海外の人と働く」ことが大事かに気づきました。
同時期に、もう一つの大きな問題に突き当たりました。それは「希望の配属とならなかった場合にどうするか、まるで考えていなかった」ということです。
就活の時には、面接の場があまりにいい感じだったので、希望通りに配属してもらえると信じて疑いませんでした。今考えると赤面モノです。実際にはそんなこと、あり得ませんよね。ちょっと考えればわかることですが、当時は考えもしなかった。妙な自信があったんです。就活時にもっと会社全体を調べて、どこに配属されても頑張れるくらい会社を好きになっていれば良かった。または自分が譲れない点を自覚し、それを確実に満たすことができる会社を選ぶべきでした。僕はどちらでもなかった。
何度か上司にも相談しましたが、やはり英語を使ったり海外業務に携わったりできる可能性は限りなく低いことを悟り、丸3年勤務して退職しました。退職後は、自分を見つめ直したくて世界一周に出て多様な人に触れてリフレッシュしました。今は次のステージに向かっています。
もし、もう一度大学生に戻って就活するなら、どうする?
もしもう一度就活するとしたら、活動を始める前に次の3つを徹底的にします。
- 自分にとって譲れないことを明確にする
- それがかなう環境のある仕事・企業を探す。
- 新卒一括採用(職種採用ではない)の場合には、もし配属が希望通りにならなくても頑張れるか、自問自答しておく。
自分もそうだったのですが、多くの大学生は「自分にとって譲れないもの」について考える時間が足りないと感じています。でも、そこがわからないままでは、将来仕事につまずいたとき、きっと後悔すると思います。就活の前に真剣にこのテーマを考えるプロセスを、手抜きしないことをお勧めします。
また、目指す会社が「自分にとって譲れないもの」を満たすことができるかは、とことんリサーチしてください。長期インターンシップなどに参加して社内をじっくり把握するのが理想ですが、OB・OG訪問や面接時の質問など、あらゆる機会を捉えてくださいね。
そして配属の問題。日本の企業はほとんどが「新卒一括採用」ですから、担当する仕事は入社してみないとわかりません。配属に希望が通らなくても、目の前の仕事に一生懸命になれるくらい、その会社が好きかどうかを、真剣に考えるようにすれば良いと思います。
曽和さんからのアドバイス:希望した配属部署でなくても頑張れるか?時間軸をどう捉えているか?
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『悪人の作った会社はなぜ伸びるのか? 人事のプロによる逆説のマネジメント』(星海社新書)など著書多数。
自分のモチベーションのタイプを知っておくことが大事
Aさん自身も「もう一度就活できるなら…」のところで言っているように、就職のときには、
- 自己分析して譲れない部分を明確にしておく
- やりたい仕事がある場合、ほんとにその仕事に従事できる可能性がどれくらいあるのか、調べておく
という2点はとても大事ですが、それに加えて、自分に問うておきたいことがあります。
それは
- 配属部署にかかわらず、自分が所属している組織への忠誠心・連帯感が強いタイプかどうかについても自問自答しておく
ということです。これは、非常に重要です。
「やりたい仕事がしたい(やりたい仕事に就ける)」という、いわゆるジョブ型の採用(職種別採用)は、日本の大手企業ではなかなかありません。いわゆるメンバーシップ型の採用(「こんな人たちと仕事がしたい」)がほとんどです。
ですから、どんな仕事を担当することになってもモチベーションをあげていくには、自分のモチベーションの持ち方が、組織型か職場型のタイプである必要があります。
いきなり“モチベーションのタイプ”、というお話をしましたが、これは簡単に言うと、どういうところにやりがいを強く感じるか、という話です。
モチベーションのタイプには4つあるとされています。
- 組織型…会社への帰属意識が強く、組織が秩序立ち、強くなること、その中で地位を築くことなどにやりがいを感じる。
- 職場型…日常的に人と人をつなぐ部分が充実していること、チームの協働、周囲からの評価などに強いやりがいを感じる。
- 生活型…生活の安定や向上の実現、家族からの期待や応援に応えることなどが強いやりがいになっている。
- 仕事型…仕事そのものや、その仕事で得られる報酬に、やりがいや意義を強く感じる。
このモチベーションのタイプは、時代背景や景気に左右される面もありますし、キャリアのステージや世代によっても変化することがありますので不変要素ではありませんが、就活のときの自己分析には、役に立つ枠組みの一つだと思っています。
さて、Aさんに話を戻します。
この4つに分けて考えたとき、どこに配属されるかわからない大企業の場合は、モチベーションのタイプが1や2の人には、比較的適応しやすいと思いますが、Aさんはおそらく4の要素が強いタイプ(仕事型)のようですね。「やりたい仕事」が明確で、その仕事をしている自分の姿もかなり具体的にイメージしていたため、入社後のギャップが大きく、それが埋められなかったのだと思います。
その企業の社員育成スピードが、自分のイメージと合っているか
さらに、Aさんは「若いうちにそれができる」ということも重視しています。ここも企業を選ぶ上で、大事なチェックポイントです。
一般的に、企業は大手になればなるほど、“生き急いでいる人”にはつらいと感じる部分が多いと思います。大手企業ほど、社員はゆっくりじっくり育てて、いろいろな力を身につけて経営幹部を育成していくというジェネラリスト育成が方針の会社が多いので、「若いうちから、すぐに、やりたい仕事をして活躍したい」人には合いません。
これから就活をする人は、こういった視点も参考にしながら、企業選びを進めていただきたいと思います。
・入社3年以内に人気企業を退職した、ほかの先輩たちの体験談が読みたい人はこちらから
・『【CASE2】地方テレビ局を2年で退職したBさんの就活失敗体験談』が読みたい人はこちらから
・『【CASE3】大手保険会社を2年で退職したCさんの就活失敗体験談』が読みたい人はこちらから
大企業に向いているかどうか、いわゆる「大手適性」について、曽和さんにお話しいただいているコンテンツがあります。あわせて参考にしてください。
大企業志望でうまくいかない就活生のために「採用のプロ」が教える“巻き返し術”
取材・文╱佐々木ゴウ 就職ジャーナル編集部
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