大手保険会社を2年で退職したCさんの就活失敗体験談|入社3年以内に人気企業を退職【CASE3】

退屈な日常と成長実感のない環境のイメージ画像。オフィスにいる女性が自分の席に座り、PCの前で頬杖をついている。

 

誰もが知っている人気企業や大企業に新卒で入社したのに、3年以内に早期退職する人がいます。人気企業、大企業を志望する就活生からしたら「なんてもったいない…」と言いたくなりますが、本人は「こんなはずじゃなかったのに…」という残念な気持ちで、退職という大きな決断に踏み切っています。

そんな先輩たちがホンネで語る、リアルな就活失敗体験談にじっくり耳を傾けてみませんか。

【CASE3】は、女性も長く働けて制度も充実、待遇も安定した大手企業に入ったものの、日々、同じことの繰り返しに耐えられなくなって退職したCさんの就活失敗体験談です。

 

体験談の後には、企業の採用に精通している、株式会社人材研究所の曽和利光さんから、参考になるアドバイスも頂きました。これからの就活に役立つヒントが満載です。

退職届のイメージ画像

 

仕事に変化も刺激もなく、成長実感がない毎日に飽き飽きしたCさん(29歳)

将来の結婚や出産を考え、長く安定して働ける「条件のいい」会社を選んだけれど

都内の私立大学の文系学部出身です。当初、大学で専攻した領域に就職を考えたのですが、教授から「この業界は給与水準も低く、就職先としてお勧めしない」と言われて、ほかを探すことにしました。でも業界や会社を選ぶ基準もわからなくて「取りあえず大手なら安心かな」と考えました。地方にいる親も安心しますし。

入社した会社は合同会社説明会でたまたま知ったのですが「女性が多く活躍している、福利厚生が充実していて長く働ける」と言われました。

将来、結婚や出産を経ても働けそうだと思ったのと、面接時に「正直、御社が第1志望かはわからない」と本音を伝えたにもかかわらず内定を出してくれたので「この会社は取り繕っていない自分を認めてくれた」と感じたのが、入社の決め手になりました。

当時の自己分析では、私は「目の前の人が笑顔になると喜びを感じる。人のための仕事にやりがいを感じる」タイプでした。「人のためになる」点で、保険業界はマッチしていると自分を納得させました。

退職した理由は退屈な日常と成長実感のない環境

退職した最大の理由は「退屈な日常」「成長実感のない環境」に耐えられなくなったからです。

仕事は、1日中、手元に来た書類の細かい間違いや誤字のチェックでした。業務内容は難易度が高いわけでもなく、慣れると本当に飽きてしまいました。仕事の中身に意義を感じられないこともつらかったです。

人事異動が少ない部署で、毎日、固定メンバーでの女子会ランチにも非常に気をつかいました。仕事だけじゃなくて、ランチの話題も毎回同じ(苦笑)。

毎日、定時退社してジムに通い帰宅して食事を作って食べて就寝して、朝も定時に起床、出勤。この決まりきった環境で定年まで働く自分を想像するのは無理でした。

大学時代はフィリピンで植林するサークル活動にやりがいを感じていたことを思い出しました。目の前の人が笑顔になれるために全力で頑張ることのやりがい、楽しさ、いつもお世話になったホームステイ先の家族との親密な交流などを思い出して「自分はいったい、ここで何をやっているのだろう。本来のアクティブな自分は、どこに行ってしまったのだろう」と思ったのです。

大手、待遇、福利厚生、勤続年数、女性の働きやすさ、などの条件は良くても、自分が心の奥で求める軸と、その会社で達成できることを見誤ったんだと思います。

 

もし、もう一度大学生に戻って就活するなら、どうする?

し今から就活をやり直せるなら、できるだけ多くのいろんな人に会って話しておきたいと思います。

友達だけでなく、所属がまったく自分と違う人のライフスタイルや多様な価値観に触れた上で自分に向き合っておきたかった。

3年生で就活が始まる時に急に準備を始めても、周りに流されるし、あまりきちんと自分と向き合えずに本番の面接を迎えてしまいそうなので、もっと早い段階から、社会人のライフスタイルやさまざまな社会人の働き方を知って、自分に合った働き方を模索します。後輩の皆さんにも、これはお勧めしたいことですね。

人気企業や大手企業なら誰にとっても安心、とは限りません。

そんな当たり前のことも、新卒の時にはわかっていなかったんだと思います。とはいえ、いくら多様な価値観に触れたり、事前に企業や業界を調べても、外からすべてを事前に知ることは不可能です。入ってみないとわからないこともあります。

ですから、悔いのない就活をすることがまず第一ですが、その上で、後輩の就活生に伝えたいことは「新卒の会社だけがすべてじゃない」ということです。もし入った会社が自分に合わないなと感じたら、転職も選択肢だと思います。最初から、それをお勧めするつもりはありませんが、どうしようもなければ次に進んだ方がいいですね。

私は現在3社目で、外資系医療機器メーカーに転職して2年目です。とっても忙しいものの、最高に楽しいです。医療機器を通じて、患者さんの命を救う仕事に従事している医師のお手伝いができることは、私にとってやりがいにあふれています。

満足度は、最初の職場が5点中1点だとすると、今の仕事は5点中4.5点です。

将来、出産などで仕事のペースを変えることもあるかもしれませんが、今は自分自身に力をつけて、周りの役に立てる価値をつくりたいと思います。

曽和さんのアドバイス:大企業ほど、分業体制が整備されている。勝ちパターンが明確な場合も多い

株式会社人材研究所 曽和利光さん写真1プロフィール 曽和利光(そわ・としみつ)
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『悪人の作った会社はなぜ伸びるのか? 人事のプロによる逆説のマネジメント』(星海社新書)など著書多数。

大企業を早期に退職するケースの、典型的な事例のひとつ

Cさんのお話は、安定した大企業を早期に退職する若手社員の、典型的な例の一つですね。

大企業の特徴の一つは分業体制が整っていることです。大企業ゆえ全体としては大きな仕事になるのですが、社員一人ひとりは、完全に分業化されたごく狭い範囲の業務に従事することになります。20代30代はまだ修業の半ば、という感じで、広い視野に立つ仕事を与えられる機会はあまり多くありません。反対に、40代以上くらいになると、登山でいえば山を登って視野が広がっていく感じで、担う仕事や責任の範囲も拡大していきます。生き急ぐ、というか「早く成長したい』「●歳までにはこうなっていたい』と考える人には、もしかしたら、大企業は合わないかもしれませんね。

また、別の特徴として、「大半の大手企業は、過去の成功体験からおおむね勝ちパターンが決まっている」という点が挙げられます。そこでは新たな挑戦やチャレンジよりも、これまで培った勝ちパターンを踏襲すること(だけ)を求められます。

ですから、「自分なりに工夫したい、新しいことをしたい』「変化に富む毎日が送りたい』という人には、物足りないと感じるかもしれません。

就活の前には、まずは「自分の価値観」と早めにきちんと向き合い、譲れないポイントを明確にすることの必要性は【CASE1】でもお伝えしましたが、加えて言えば、できる限り、早い段階でいろいろな社会人に会って話を聞き、自分にとって理想の働き方を考えてみることも、就活を成功に導く上で、大切なポイントだと思います。

 

・入社3年以内に人気企業を退職した、ほかの先輩たちの体験談が読みたい人はこちらから
・『【CASE1】大手食品メーカーを3年で退職したAさんの就活失敗体験談』が読みたい人はこちらから
・『【CASE2】地方テレビ局を2年で退職したBさんの就活失敗体験談』が読みたい人はこちらから

大企業に向いているかどうか、いわゆる「大手適性」について、曽和さんにお話しいただいているコンテンツがあります。あわせて参考にしてください。
大企業志望でうまくいかない就活生のために「採用のプロ」が教える“巻き返し術”

 

取材・文╱佐々木ゴウ、就職ジャーナル編集部

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