理系学生は研究や実験などが忙しく、就活にあまり時間を割けないという人が多いようです。一方で、理系学生は企業からの評価が高く、就職に有利との声も聞かれます。
そこで、理系学生の就職動向や進路、就活における選択肢、そして理系学生がつまずきがちなポイントなどについて、リクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザー、田村梨香さんに詳しくうかがいました。
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理系学生の就活状況とは?
理系学生は売り手市場との声が聞かれますが、実際はどうなのでしょうか?
2023年卒大学生の10月1日時点での就職内定率は93.8%。その内訳は、文系学生92.9%に対し、理系学生は96.0%となっています。
さかのぼって6月1日時点の就職内定率を見ると、文系68.9%、理系82.5%となっています。これらのデータから、理系学生の方が内定獲得時期も早く、かつ内定率も高いということがわかります。(就職みらい研究所「就職プロセス調査(2023年卒)」)
さらに、理系学生だけを切り出し専攻ごとに「進路確定時期」を見てみると、専攻ごとにバラつきがあることがわかります。
就職志望者のうち、6月12日時点で進路が確定している割合(大学生)
※背景を灰色で表記している数値は集計対象数が50に満たないため、参考値です
参照:就職みらい研究所「【2023年卒】理系の学科系統別活動状況」
6月12日時点での理系学生の進路確定率を見ると、いずれも全体平均よりは高いものの、機械・電気・電子系、情報工学系の確定率が70%を超えているのに対し、生物・農学・水産系の学生は65.4%となっています。
現在、半導体業界、IT業界が伸びており、企業の採用ニーズも旺盛。知識をストレートに生かせる機械・電気・電子系、情報工学系の学生は、この2業界で内定を得るチャンスが多いと言えるでしょう。
一方で、生物・農学・水産系はマーケットが成熟している上、専攻が生かせる職種が限られています。進路確定率においてやや出遅れる場合もあるようですが、一通り専攻が生かせる業界に応募した後に、理系学生のニーズが高く、業界としての注目度も高い半導体業界、IT業界に目を向け、就職を決めるケースが増えています。
理系学生は「学校で研究してきたことを仕事でも生かさないと」という意識が強いですが、研究内容をそのまま生かせなくても、研究や実験で培った学業に対する姿勢や、研究プロセスに関する知識やノウハウは、ほかの分野でも十分に生かすことができます。専攻とは異なるキャリアも、ぜひ視野に入れてほしいと思います。
企業が理系学生に求めていること、期待していることとは?
理系学生が持っている技術に関する専門知識はもちろん、ビジネスに生かせるスキルを持ち合わせていると評価する企業は多いようです。
理系学生は研究や実験などを通して、問題や課題を正しく思考できるロジカルシンキングや、物事を感情ではなく数値的な正確さや論理で考える力、PDCA(※)を繰り返しながら、より精度の高い結論を導き出す力などが備わっていると期待されています。
また、履修する講義の数も多い上に、朝から晩まで研究室にこもって実験を繰り返すという学生も少なくありません。学業を通じて、物事を構造的に捉える力やタスク処理能力、目標に向かって努力し続ける力、成果が出るまで研究に向き合い続ける継続力など、社会でそのまま生かせるスキルが身についていると評価する企業もあります。そのため、文系職種であっても「ぜひ理系学生にも応募してほしい」と歓迎する企業が多いのです。
(※)…Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセス
大学院か、就職か…理系学生は進路をどう判断すればいい?
一方で、理系学生は文系学生に比べて、二者択一を迫られる場面が多いのが特徴。代表的なのが、次の3つの選択です。それぞれの考え方と決断の仕方をご紹介します。
大学院に進学か、学部卒で就職するか
今、手掛けている研究が好きで、将来研究職に就きたいと考えているならば、大学院に進んで研究を極めるのがいいと思います。実際、研究職においては、大学院生の方が企業から評価を受けやすいです。
しかし、今の研究にそこまで思い入れがあるわけではない、研究職にこだわりがないという場合は、大学院進学よりも就職を選ぶのも一案です。
研究が忙しくて就活の時間が取れず「なんとなく大学院」を選ぶ人もいますが、大学院に進学しても1年目ですぐ就活が始まります。学部生との差別化のため、大学院での実績をアピールしようとしても、企業にはその点が伝わりにくい場合もあります。
大学院進学が就活に不利になるということはありませんが、明確な目的がないのであれば、とりわけ有利に働くこともありません。今の研究に対する自身の思いや熱量を、今一度考えてみましょう。
学校推薦応募か、自由応募か
明確にやりたいことが定まっていて、それが学校推薦の募集内容と合っているならば、学校推薦応募を選ぶのはいい選択だと思います。研究室の先輩も多数就職するケースが多く、先輩を参考に仕事内容や会社の雰囲気が事前につかめたり、入社後に何かと相談できたりするメリットもありそうです。
ただ「研究が忙しくて就活する時間がないから」という理由で安易に学校推薦を選ぶのはお勧めできません。本当にその仕事がしたいのか、自分の思いと向き合わずに決めてしまうと、入社後に「こんなはずじゃなかった」とギャップを覚えることになりかねません。
少しでも迷いがあるならば、まずは自己分析をして、自分はどんな仕事がしたいのか、どんな働き方を求めているのかを洗い出し、その推薦に本当に応募していいのか確認した方がいいと思います。
自己分析はいろいろな方法があります。例えば、これまでの人生を振り返り、モチベーショングラフを作って、どんなときにやりがいを感じたのか書き出してみる方法や「Will」「Can」「Culture」「Must」の4つの観点で「仕事選び・企業選びの軸」を洗い出す方法、「リクナビ診断」などの適性検査からつかむ方法などがあります。自分に合ったやり方で、自己分析してみるといいでしょう。
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関連記事:「【例文あり】「コロナ禍でガクチカのネタがない」ときの考え方」
関連記事:「【自己分析のやり方】手軽にできる6つの方法や目的・志望動機の作り方まで」
「Will」「Can」「Culture」「Must」による自己分析の方法はこちら。
関連記事:「専攻を生かす?待遇重視?理系学生の職業選びのポイント」
専攻を生かした就職か、専攻とは異なる分野への就職か
前述したように、理系学生は「学校で研究してきたことを仕事でも生かさないと」という意識が強いですが、就職後もずっとその研究テーマにかかわり続けたいのかどうか、一度冷静に考えてみることをお勧めします。
今行っている研究は楽しいのか、これからも継続的にやりたいと思っているのかを考えてみて、本当に好きでずっとやりたいのであれば専攻を生かせるキャリアを考えた方がいいと思います。しかし、自分の思いに向き合った結果、「嫌いではないけれど、ずっとやらなくてもいいかも」とか「正直もう飽きたかも」という気持ちに気づいたならば、無理にそれを仕事にする必要はありません。
繰り返しになりますが、研究や実験で培った学業に対する姿勢や、研究プロセスに関する知識やノウハウは、ほかの分野でも十分に生かすことができます。違う分野に目を向けてみれば、もっと自分の志向に合った仕事に出会えるかもしれません。
「せっかくこの分野の研究をしてきたんだから、生かさないともったいない」と言う人もいますが、仕事人生はこれから40年、50年と続きます。目先の感情で決めてしまうのではなく、ぜひあらためて自己分析を行い、自分に合った業界・仕事を洗い出してみてほしいですね。
理系学生が就活でつまずきがちなポイント
理系学生ならではの就活の悩みや、多くの学生がつまずくポイントがあります。就活をスムーズに進めるためにも、早めに準備しておくといいでしょう。
研究が忙しくてうまくスケジューリングができない
理系学生は研究で忙しいため、「就活に割ける時間が少なく、会社説明会やES(エントリーシート)作成の時間、面接などをどうスケジューリングすればいいのかわからない」という声を多く聞きます。
お勧めしたいのは、事前に就活スケジュールをある程度組んでおくこと。所属研究室の教授などに、研究が忙しくなる時期をあらかじめ確認しておき、その時期から逆算して行動計画を立てるといいでしょう。「この時期に何社に応募する」などと数値目標を決めておくと、より計画的に行動しやすくなります。
※ 理系学生の専用の就活スケジュールは「リクナビ」でも確認できます。
専攻以外の分野になかなか視野を広げられない
ここまで、専攻以外の分野にも視野を広げる大切さをお伝えしてきましたが、「そうはいっても研究が忙しく、ほかの業界を見る暇がない」という理由で視野を広げられない学生も少なくありません。
しかし、自身の専攻に沿った業界・職種にばかり応募した結果、内定が得られなかった場合、そこから視野を広げて応募業界を変えるのは、体力的にも精神的にもしんどいものです。忙しくても早い段階で、「ほかの可能性」も考えておきましょう。
お勧めしているのは、3つのパターンの可能性を考えることです。
【パターンB】専攻とは異なる業界だが、経験が応用できそうな理系職種に応募する
【パターンC】専攻を生かせる業界だが、営業など文系職種に応募する
この3パターンで、それぞれ応募する企業群をイメージしておけば、パターンAが厳しくなったらパターンBやCにも応募してみる、などと効率的に行動することができます。
もしくは、3つ同時並行で就活を始めてみるのも一つの方法です。就活を進める中で「意外にBやCもありだな」と気づくことができ、視野が広がるかもしれません。
気づいたら就活シーズンも終盤に差し掛かっていた
理系学生の中には、「夢中になって研究に取り組んできた結果、気がついたら就活も後半戦に入っていた…」という人も見受けられます。
就活で一番時間がかかるのは、自己分析とES作成です。特に自己分析は、すべての就活のベースになるものなので、せめて自己分析だけは早い段階で取り組んでおいてほしいですね。自己分析で自分の軸を決めておけば、たとえ出遅れたと感じても、すぐに行動に移せるので、比較的短期間でキャッチアップが可能です。
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取材・文/伊藤理子