【例文あり】「コロナ禍でガクチカのネタがない」ときの考え方

「ガクチカ」とは、「学生時代に力を入れたこと」を略した言葉。エントリーシートや面接で必ずと言っていいほど問われる定番質問ですが、コロナ禍を受け「ガクチカとしてアピールできるようなネタがない」と悩む就活生が増えています。
そこで、ガクチカを考える際のポイントやネタの考え方などについて、『就職ジャーナル』中田充則編集長が解説します。例文もありますので、考える際の参考にしてみてください。

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リクルート『就職ジャーナル』編集長 中田充則プロフィール リクルート『就職ジャーナル』編集長 中田充則(なかだ・みつのり)2002年、中四国リクルート企画(現リクルート)入社。社員10名のオンリーワン企業から30万人の大手企業まで幅広い業界業種を担当し、20年間約1000社以上の企業の採用活動を支援する。第一線で活躍する多くの社会人に触れる中で、学生のキャリア支援がどうあるべきかをテーマに大学と企業をつないだCO-OP教育プログラムなどを地域の国立大学と共同開発。2021年10月から就職ジャーナル編集長。

「ガクチカが書けない」と悩む学生が増えている

就活で「ガクチカ」について考えるとき、「エピソードが華やかで特別感があればあるほど、周りの学生と差別化ができ、自信を持って語ることができる」と捉えている学生は少なくありません。ただ、コロナ禍以降は、学生を取り巻く状況が大きく変化しています。学生生活での体験の機会が減り、授業はリモートで同級生との交流もなく、アルバイトやサークル活動などの機会も減っています。

そのため「特別な体験をしていないし、友人や先輩と協働した経験もない」などの理由から、ガクチカとして語れるものがまったくない、先輩たちの就活の経験を教えてもらっても、状況があまりに違うので参考にできない、と頭を抱える学生もいるようです。

コロナ禍でガクチカに対する「企業の目」も変化

一方で、企業も先行き不透明で先々の予測がつかない「VUCA(※)の時代」である現在において、コロナ禍という状況が加わり、持続的に成長するために大きな変化に対応する力がより求められるようになりました。

この流れを受け、新卒採用で「多様性」を重視する企業が増加しています。これまでは、求める人物像を明確に定め、ガクチカを通して自社が求める人物像と照らして採用を行ってきましたが、似たようなタイプが集まるだけでは新しいアイデアが出ず、変化に対応し切れない可能性があると危機感を覚えはじめたのです。一部の企業では、これまで採用してきた人とはあえて異なるタイプを採用したり、さまざまな性格・強み・持ち味の学生を満遍なく採用したりする傾向が見え始めています

つまり、「自社に合うかどうか」という視点だけでなく、より一人ひとりの強みや持ち味、価値観を理解しようという視点に変化しつつあるのです。このように多様性が求められる中で、学生も「求める人材像に寄せてアピールする」だけでは意味がなくなりつつあります。

なお、企業側も「ガクチカのネタがない」という学生の悩みを十分理解しています。企業によっては「ガクチカを聞く」ことをやめ、別の切り口の質問で、学生の人となりを知ろうとしているところもあります。

※Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つのキーワードの頭文字を取った言葉。変化が激しく、あらゆるものを取り巻く環境が複雑性を増し、想定外の事象が発生する将来予測が困難な状態を指す。

ガクチカに悩む就活生のイメージカット

ガクチカのネタの探し方と、書き方のポイント

そもそも企業側は学生の「特別な体験」を聞きたいわけではありません。企業がガクチカを通して知りたいのは、コロナ禍以前から変わらず「学生の人柄や持ち味、意欲や熱意、可能性」です。したがって「応募企業に合いそうなエピソード」を無理に探すのではなく、より「あなたという人物らしさが伝わるエピソード」をまとめることが重要です。

前述のとおり、企業にとって「多様性」が重要な採用テーマになっている以上、一見地味でも「あなたらしさ」が見えるガクチカの方が、企業は興味を持ちやすくなるでしょう。これまでの自分を振り返り、自分らしさを発揮できたエピソードを洗い出してみるのがポイントです。

学生がガクチカを考えるとき、「最近体験したイベント」を書き出してみる人が多いようですが、その結果、「コロナ禍で大した経験をしていないなあ…」と気づかされ、思考停止してしまう人もいるようです。

お勧めしたいのは、自分のターニングポイントから洗い出す方法です。これまでの経験を小学校時代から振り返り、モチベーショングラフを描いてみましょう。

モチベーショングラフは自己PRのポイントを見つける際によく使われますが、ガクチカにも活用できます。子どものころから現在までを振り返る中で「自分らしさ」を発見することができ、ガクチカの説得力を高めることができます。ガクチカは何も大学時代に限った話ではありません。小学校~高校時代に力を入れたことも十分「ガクチカ」になり得ます。大学時代のエピソードに自信が持てないという場合は、モチベーショングラフで大学以前のことを振り返ってみるといいでしょう。

例えば、「大学時代、研究に粘り強く取り組んだ」ことをガクチカとしてまとめる際に、「中高時代のテニス部で、上達するために毎日粘り強く練習に取り組んだ。この姿勢が研究でも生かせていると感じている」などと付け加えることができれば、より「自分らしさ」が伝わるガクチカになります。

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実際にモチベーショングラフを描いてみよう

モチベーショングラフは、自分の心の動きを縦軸に、子どものころから現在までの時間を横軸にして描きます。これまでの人生を主観的に振り返りながら、楽しかったこと、熱中したことは上に、つらかったこと、悲しかったことは下に、曲線を描いてみてください。

モチベーショングラフ例

そして、曲線の波が高いとき=モチベーションが高いときに何があったのか振り返り、「なぜモチベーション高く取り組めたのか」を考えてみましょう。

例えば、グラフの波が高いときが「高校時代にテニス部で悲願の県大会に進めた」ときであれば、なぜ毎日練習に打ち込むことができたのか、勝ち進むために工夫したり努力したりしたことは何か、優勝に至るまでの困難をどう乗り越えたのか、具体的に振り返り深掘りしてみることで「自分らしさ」が見えてきます。

下降していたモチベーションの曲線が、上昇に転じたタイミングにも注目してみましょう。そのタイミングで何があったのか振り返り、何がモチベーションアップに影響したのか洗い出すことで、自分らしいエピソードが見つかる可能性があります。

もし、自分ではぴんとこなかったら、自分をよく知る家族や、同時期を一緒に過ごした仲間に聞いてみるのも一つの方法。「すごく頑張っていたから応援していた」「勇気があるなと思っていた」など、自分では気づけなかったことを指摘してもらえるかもしれません。

モチベーショングラフを描くのは時間がかかるし面倒だと感じるかもしれませんが、自分自身と向き合う時間を持つことで、より自分らしいエピソードを見つけやすくなります。また、ターニングポイントをじっくり振り返ることで、エピソードに具体性が増しますし、面接で深掘りされてもスムーズに返せるようにもなります。

なお、「〇〇で優勝した」「△△に合格した」など華々しい成果を伝えるのもいいですが、実は「苦労して乗り越えたこと」や「あきらめなかったこと」の方が、企業の採用担当者はその学生の入社後のイメージがしやすいようです。社会人になって困難にぶつかっても、自分なりに努力して乗り越えてくれそうだ…とイメージでき、好評価につながるとの声をよく耳にします。モチベーショングラフを見ながら、そういうエピソードを振り返ってみるのもいいでしょう。

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自分なりのキーワードを盛り込もう

洗い出した「自分らしいエピソード」をガクチカにまとめる際には、見る人がイメージしやすいようキーワードを交えながら具体的に記しましょう。

最近では、書類選考の際に特定のキーワードを含むES(エントリーシート)をピックアップする機能を活用する企業も増え始めています。さらに、ガクチカを記載したESや履歴書をあらかじめ登録しておくことで、キーワード検索によって応募していない企業からもスカウトが届く就活サービスもあります。したがって、自身の強みや、自分らしさを示すキーワードを意識的に盛り込むことで、自分が活躍できそうな企業から「見つけてもらえる」可能性が高まります。

受講している授業やゼミの名前、使っている実験装置やコンピュータ・ソフトの種類などで検索する例もあるので、可能な範囲で固有名詞も入れておくといいでしょう。

【例文あり】コロナ禍のガクチカとエピソード選択のポイント

コロナ禍でのガクチカの一例をご紹介します。例文を参考にしつつ、自分らしさを盛り込んだガクチカを作成してみましょう。

●例文「自分らしいこだわりや観点から、工夫して課題解決する」

私が学生時代に力を注いだテーマは「コミュニケーションの円滑化」です。
子どものころ、家族の仕事の都合で転校が多かった私は「新しい環境に早く溶け込むためには自分から話しやすく、なじみやすい雰囲気を作ることが大切だ」と身を持って体験してきました。そのため、現在も「仲間と円滑なコミュニケーションが取れている状態」というのは、私にとって非常に優先度の高いテーマです。

しかし、コロナ禍で大学の授業は軒並みリモートになり、学生同士の交流を図る機会が大幅に減少してしまいました。3年生になり、ジェンダー論のゼミに入りましたが、リアルで会って意見交換することもままならない状況が続き、なんとなくしらけた空気が漂っていることが気になっていました。

そこで、「ゼミが始まる前に15分早くWeb会議システムに入り、みんなで雑談をすること」を提案。その場で自己紹介をし合ったり、研究テーマについて意見を言い合ったりする中で、リモートながらお互いの人となりを知ることができ、ゼミ内の結束力が高まったと感じています。最近になって登校する機会が徐々に増えてきましたが、みんなに「リモートでコミュニケーションを取っていたことが素地になり、リアルな場でも積極的な議論ができるようになった」と言われ、喜びを感じました。困難な環境下でも、「今自分にできることは何か」を考え、行動する大切さを実感できました。

<ポイント>

コロナ禍で不自由だったことをエピソードとして敢えて取り上げるのは、臨場感も伝えられるので、おすすめの方法のひとつです。そのため「コロナ前と後でどのように日常生活や学校生活が変わったのか」を振り返り、変化した点を挙げてみるとよいでしょう。思うように行動できなかったという不自由さや制約の中でも、自分らしいこだわりや観点を活かして、どう工夫し、改善しようとしたのかを具体的に伝えてみましょう。

●例文「自分の強みを、逆境で活かす」

私は中学時代から現在までずっと続けているテニスに力を入れてきました。

初めの1年はまったく上達せず、自分よりテニス経験が浅いはずの周りの同級生が大会のメンバーに抜てきされ、「なぜ自分だけこんなにできないんだろう」と悩み、あきらめかけたこともありました。しかし、仲間たちの励ましで「腐ることなく、まずは目の前の練習に没頭しよう」と決意。誰よりも早くコートに行きランニングや素振りの練習をしたり、積極的に球出し・球拾いを行ったりする中で着実に基礎力を身につけ、中学3年生の時には県大会で準優勝することができました。

その後、高校・大学とテニス部に所属し、大学入学後はトーナメント出場に力を注いでいますが、中学時代に身につけた粘り強さ、あきらめない心が私の支えとなっています。最近はコロナ禍で活動の機会も減りましたが、この状況にも折れることなく自己研さんを続けることができるのは私の強みだと思っています。

<ポイント>

大学時代のエピソードに自信が持てない場合は、中学や高校時代にさかのぼって自分の強みや持ち味をアピールしましょう。これらの強みがコロナ禍でどう生かせたのかと併せて伝えることで、より自分らしさが伝わるでしょう。

●例文「学びや知識を活用し、日常に変化を起こす」

私が学生時代に頑張ったことは、大学1年生の時から現在まで続けているアルバイトです。

〇〇駅の構内にあるコーヒーチェーンで、週4回ペースで働いています。平日は早朝のシフトに入ることが多いのですが、エキナカ店ということもありコロナ禍であっても出勤前の会社員の方々でごった返します。そんな中、常連さんの注文を覚えて早めに準備を行ったり、事前に持ち帰り用のカップや袋を準備し並べておいたりすることで、できるだけ提供時間を短縮するよう独自に工夫しています。

ただ、密な状態が続くとイライラする人が増え、ときに「早くしろ!」と怒鳴られるなど殺伐とした雰囲気になることもあります。そんなときは「行動心理学」の授業で学んだ、相手から受けた好意を返したくなる心理「好意の返報性」を取り入れ、敢えていつも以上の笑顔で接客するようにしています。先日は、イライラしていたお客さまから「いい笑顔だね。頑張って」と声を掛けてもらえました。

最近ではレジ締めや備品の発注管理、感染予防のための衛生管理など店長サポート業務も任されるようになり、店長の視点に立って店舗運営を考える大切さを学びました。コロナ禍でもお客さまに安心して通えるお店として認知してもらうため、日々の提供オペレーションの改善や衛生管理の徹底など、これからも工夫を凝らしていきたいと考えています。

<ポイント>

コロナ禍でも依然と変わらず続けられていることがあれば、それをエピソードとして選択するのも一案です。さらに、コロナ禍を受けての変化によって苦労したことに対して学びや知識を活用して乗り越えた経験を語ることで、自分らしさが伝わるでしょう。

まとめ方については、以下の記事も参考にしてみてください。

関連記事:就活で聞かれる「学生時代に最も打ち込んだこと」って、何をどう答えれば良い?

なお、「リクナビ就職エージェント」など就職エージェントを活用すれば、専任のアドバイザーが共に学生時代を振り返り、ガクチカの内容を一緒に考えてくれます。ガクチカのネタやまとめ方に自信がないという人は、就職エージェントへの相談も検討してみましょう。

編集・文/伊藤理子 撮影/刑部友康


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