教育サービス編・2014年【業界トレンド】

少子化で学習塾・予備校市場は縮小傾向。地域や年齢層などの拡大で生徒確保を目指す

矢野経済研究所の「教育産業市場に関する調査結果2013」によると、2012年度における教育産業の市場規模は、対前年度比1.7パーセント増の2兆4626億円。東日本大震災などの影響で冷え込んでいた市場だったが、4年ぶりにプラスに転じた。好調ぶりが目立ったのが、英会話・語学学校市場。市場規模は2965億円で、対前年度比3.3パーセント増だった。企業のグローバル化、小学校の英語必修化などが追い風となっており、この分野はしばらくの間好調が続くのではないかと見込まれる。また、企業向け研修サービス市場も、対前年度比3.3パーセント増の4670億円と拡大。景気回復により、企業が人材育成への投資を増やしている状況が見て取れる。これに対し、eラーニング市場(対前年度比3.9パーセント減)、資格取得学校市場(対前年度比2.3パーセント減)などは不調だった。

市場全体の3分の1強(9380億円)を占めるのが、学習塾・予備校市場。主要プレーヤーとしては、ナガセ(東進ハイスクールや四谷大塚などを運営)、学校法人高宮学園(代々木ゼミナール、SAPIXなど)、学校法人河合塾グループ(河合塾など)、学校法人駿河台学園(駿台予備校など)の、いわゆる「4大予備校」を中心とするグループが挙げられる。また、栄光(栄光ゼミナールなど)、市進ホールディングス(市進学院など)、日本公文教育研究会なども大きな存在感を放つ。12年度は、学習指導要領が改訂されて「脱・ゆとり」が進められ、学習量が増えたために授業が難化。そのため、個別指導塾などのニーズが伸びて対前年度比1.5パーセント増となった。ただし、少子化の影響は深刻。1980年代初頭には1200万人近かった小学生は、2013年には600万人台にまで減少している。今後も子どもの人数は減り続けると見られており、中長期的に見れば市場は緩やかに縮小するだろう。

こうした中、学習塾・予備校はさまざまな工夫をして生き残りを図っている。1つ目の工夫は「地域の拡大」だ。従来の教育サービス業界では、地域によって教科書が異なったり教育内容に差があったりしたため、地域ごとに有力企業が乱立する傾向にあった。しかし、ここ数年では経営基盤拡大のため、全国展開を目指すケースが目立っている。静岡からスタートし、北海道・東北・関東・九州といった地域にも拠点を広げている秀英予備校は、その一例だ。また、海外に8000カ所以上の教室を開設している日本公文教育研究会のように、海外展開に乗り出す企業もある。

2つ目の工夫は「年齢層の拡大」。これまで各社は、得意とする対象年齢に絞って事業を展開する傾向が強かった。しかし、近年では幅広い年代向けのサービスを提供しようとする動きが活発化している。例えば、学校法人高宮学園は大学受験向けサービスを得意とする代々木ゼミナールを運営しているが、09年にSAPIX中学部・SAPIX高校部を、10年にSAPIX小学部を傘下に収めた。小学生のうちから、1人の生徒を囲い込んでしまおうという狙いだ。

そして3つ目の工夫が、「サービス内容の高度化」である。ひと昔前は、教室で大勢の生徒を対象に一斉授業を行う学習塾・予備校が多かった。しかし、近年では個別指導塾(キーワード参照)、インターネット予備校(キーワード参照)など、多彩な学習スタイルが選べるようになっている。また、医学部や難関校受験など特定分野に的を絞った予備校や、通信教育と対面指導を融合させた新サービスが登場しているのも、注目すべき傾向と言えよう。

押さえておこう <教育サービス業界志望者が知っておきたいキーワード>

個別指導塾
1人の教師が、1人または少数の生徒を受け持ち、指導するスタイルの塾。生徒一人ひとりの事情に応じて、きめ細やかな対応ができる。明光ネットワークジャパンが展開する「明光義塾」、リソー教育が展開する「TOMAS」などが代表格。
インターネット予備校
ブロードバンド経由で映像授業を配信するなど、インターネットを活用した予備校のこと。授業料が比較的安価、教室に通う必要がない、理解できなかった部分を繰り返し学習できるなどのメリットがある一方、学習意欲を高めにくいなどのデメリットもある。
タブレット端末による指導
タブレット端末を授業に活用する学習塾・予備校が増加。紙の教材に比べ、映像や音声を扱える点が強みとされる。また、タブレット端末を使った自習用教材や、学校向けの副教材などを開発する企業も増えている。
学習指導要領
文部科学省が定める教育課程の基準。定期的に見直しが図られるため、教育関係者は変更内容を踏まえて新たな教材や指導内容などを検討しなければならない。幼稚園では09年、小学校では11年、中学校では12年から、新学習指導要領に切り替えられている。

このニュースだけは要チェック <サービス分野を広げる動きに注目>

・市進ホールディングスと学研塾ホールディングスが共同出資した新会社が、2歳児から小6生までを対象とした教育託児施設「クランテテ三田」を開設。市進が得意とする受験指導ノウハウと、学研の強みである幼児教育手法を組み合わせ、幼児教育・学童保育・進学指導など幅広いサービスを提供するのが特徴だ。(2013年11月17日)

・ベネッセコーポレーションが通信講座「進研ゼミ」の受講生を対象に、東京個別指導学院の教室で学習カウンセリングや進路指導などを行う「進研ゼミ個別サポート教室」を開始。通信教育と対面指導を融合させた新サービスとして、今後にぜひ注目しておきたい。(2014年3月6日)

この業界とも深いつながりが <IT、ネット系企業と協力する機会が増加>

出版社
教育系出版社が教育サービスを手がける一方、予備校が出版事業に乗り出すことも

IT(情報システム系)
タブレット端末を活用した教材が増えているため、IT系企業と協力する機会が増加

ゲームソフト
教育コンテンツを、ゲーム機用ソフトや携帯端末向けアプリとして展開するケースも

この業界の指南役

日本総合研究所 主任研究員 吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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