「独立系」のSIerとして幅広い事業分野のお客さまと向き合う
今では世の中のあらゆるところでITが使われています。ITがなければ動かないものも多い。そんな中、あらゆる領域でITを利用したシステムの企画や設計、構築を行っているのが当社の事業です。
いわゆる「SIer」(※1)の大手企業として知られていますが、私たちの大きな特色は、どの企業系列にも属さない「独立系」であること。親会社はありませんから、自分たち自身で方針を決め、行動していきます。「ITのプロフェッショナル」として、公共組織のシステムを作ったり、事業会社のビジネスを支えたり、常にお客さまと対等な立場で新しい事業づくりに貢献しています。
(※1)システムインテグレーターのこと。情報システムの企画、構築、維持を請け負う
では、実際にどんなことをしているのか。例えば、金融領域。クレジットカードは今やどこでも使える便利なカードですが、膨大な情報が飛び交います。その裏側のシステムをビジネスの黎明期(れいめいき)から支えてきたのが、私たちです。現在でも、かなりの国内シェアを持っています。
事業はクレジットカードのみならず、決済分野へと広がっていき、デビットカードやプリペイドカードのシステムも手がけます。また、金融機関以外でも、流通企業などがカード発行をすることが増えており、私たちの商機も広がっています。スマートフォンで決済ができる最近話題のシステムにもかかわっていたりします。
またエネルギー分野についても貢献しています。もともとエネルギー事業を展開するためのシステムを担っていたノウハウを生かし、新電力などエネルギー事業への新規参入企業のシステムについても担当することが増えました。
当社は、こうした大規模なシステムを多く手がけています。これほどのスケールでシステムを作れる会社はなかなかないと自負しています。大規模なプロジェクトの受注を通して、私たちはシステム構築プロジェクトをマネジメントするノウハウや、クライアントの業務の効率化をITに落としこんでいく高度な技術力を培ってきました。
さらに、私たちの目は海外にも向いています。お客さまの海外進出のお手伝いを手がけてきましたが、より現地に根ざした仕事に携わることに力を入れています。特に成長著しいASEAN諸国では、現地の大手SIerに出資し、事業を推し進めています。
例えば、タイ、インドネシアでは、当社が出資した会社に社員が出向し、経営にも携わっています。現地の出資先は、日本で培われたノウハウに強い関心を持っています。今後は、出資先の持つネットワークと、いかに相乗効果を作りだしていくかが課題です。大きな可能性を秘めているビジネスだと思います。
一方国内では、「よりコンサルタント的な動きをしていこう」という考えを持っています。
これまではどちらかというと、お客さまから「こんなものを作りたいので、一緒にお願いしたい」と持ちかけられ、始まる仕事が多かった。これからは、私たちから積極的に「こんなものを作れば、お客さまのビジネスはもっと成長します」と、提案できる会社へと変わっていかなければいけないと考えています。
そしてもうひとつ、目を向けているのが、新しいテクノロジーへの取り組みです。当社の研究開発部門では、例えばAI(人工知能)やIoT(※2)に関しては、国内のベンチャー企業などに出資して、積極的に技術を取り入れていきたいと考えています。新技術に興味のある社員を公募で募り、そういった企業に出向させ、一緒に技術を掘り起こしていく。そんな取り組みがすでに始まっています。
場合によっては、ベンチャー企業の立ち上げを出資先と一緒に担う、なんてケースも出てくるでしょう。出向した社員には、その経験を活かして、社内で新しいチャレンジをしてほしい、という考えもあります。将来に向けた、面白い取り組みに当社は期待しています。
(※2)Internet of Thingsの略。これまではネットワークに接続されていなかった「モノ」がインターネットを介して情報をやり取りする能力を備えていくこと。「モノのインターネット」と訳される。
社員教育にとても力を入れ、丁寧に社員を育てる
ITの会社というと、理系出身で、ITの知識がなければいけないのではないか、と考える人もいらっしゃるようですが、そんなことはありません。実際、新入社員の文系と理系の比率は、ちょうど半分ずつくらいです。ITについて学生時代に学んでいたかどうかは、問われません。ただ、ITに興味は持っていてほしいですね。
当社の仕事は、もちろんITが軸です。しかし、これからはいろんな発想や考え方を持っている人材が、幅広く活躍できる会社を目指していきたい。その意味で、多様な人材を受け入れたいと考えています。
一方で、特に私たちが大事にしているのは、「自分の意見がしっかり言えるか」ということ。「上から何かやりなさい」と指示ばかりされるような社風の会社ではありません。自分から「こうしたい」と声を上げてほしいと考えています。ですから、自分の考えがしっかり言えることは、当社においてのみならず、社会に出る上でとても大事になると思います。
入社後は、金融、産業、公共、ITインフラを扱う事業本部へのいずれかに配属されます。その道のプロになってもらうべく、ひとつのセクションで、しっかり育てていく、というのが基本的な当社の育成スタイルです。
上司と定期的な面談を行い、その都度、どうしていきたいのかを議論しながら、ITのプロフェッショナルとしての成長を目指していきます。リーダーとしてプロジェクトを運営するプロジェクトマネージャー、お客さまとじっくり向き合ってシステムを作るアプリケーションの技術者、特定のお客さまに限らず幅広くITインフラ提供をするITインフラの技術者などの道があります。
大規模なシステムも少なくありませんので、簡単にプロになれるような世界ではありません。まずは一つ、しっかりと自分の得意領域を作っていくことが大切です。
ただ、プロ野球の世界ではありませんが、今後は「二刀流」というのも大事になってくるのかもしれません。社内公募は、出資先の国内ベンチャー企業のみならず、事業本部間でも行われていますので、新しいチャレンジの機会も増えていくと思います。
若い社員からは、新人時代の研修が充実していた、という声がよく聞こえてきます。すぐに第一線の仕事を担う、という会社もあるようですが、私たちでは新入社員研修を経た後、最低でも3カ月、長い部署では6カ月にわたって研修が行われます。本格的に仕事が始まるのは、この研修が終わった後です。これなら文系の自分でもシステムエンジニアになれると思った、という若い社員の声もありましたね。
このように、社員教育にはとても力を入れている会社です。2016年からは、さらに教育に注力しようと、全社目標で人材育成のために時間を割く取り組みが始まりました。そもそも、IT技術がより高度化、専門化していく中で、最新技術への対応を、現場や個人だけに委ねていていいのか、という課題意識が背景にありました。そこで、社を挙げてもっと教育に投資しよう、と始まった取り組みです。
全社研修や各部での勉強会などのほか、自分自身で「こんな技術を身につけたい」と自己申告して、会社の費用負担で学びに行った、というケースも多くあります。この取り組みは、2017年以降も継続して行われる予定です。
新卒採用に加えてキャリア採用も行っていますが、ひとつユニークなことがあります。IT業界は、他業界と比較して人材の流動性が比較的高い業界です。もちろん、当社にも転職をする社員もいますが、一度、他社に移って、再びTISに戻ってくる優秀な社員も多いのです。彼らに話を聞いてみると、「(転職先と比べて)TISは仕事がとてもしやすかった」という声が少なくない。一緒に仕事をする人たちの価値観や仕事のやり方が、心地良かったということのようです。
「システムエンジニアとはこういうもの」というイメージが業界の中にはあります。しかし、これから若い人たちには、この枠に捉われない仕事をしていってほしいと、私たちは思っています。それこそ、「システムエンジニア」という呼び方が、そろそろ変わっていってもいいと思うのです。
学生の皆さんへ
就職活動では、説明会などで「人から話を聞く」インプットが多くなっていくと思います。だからこそ大事にしてほしいのは、「一対一で話をする」ということです。一対一で話をするからこそ、「自分はどんな反応をするのか」「どんなことを相手に言っているのか」気づくことができる。自分の意見や考え方が出てくる。こうしたコミュニケーションによって、相手に対する感情がわき上がってきます。「この人と働いてみたいな」「こういう人ともっと話をしたいな」…。この感覚が重要なのです。自分自身にリターンが戻ってくるような出会いを増やしていってほしいと思います。就職活動を通して出会ういろんな人とのリアルな対話を、ぜひ大事にしていってほしいと思います。
同社30年の歩み
取材・文/上阪 徹 撮影/鈴木慶子