建設編・2016年【業界トレンド】

建設需要が伸びて大手企業の業績は好調だが、人件費や資材費などのコスト増は悩みの種

建設会社の代表格は、連結売上高が1兆円以上を超える「大手ゼネコン(スーパーゼネコン)」で、大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店の5社が該当する。それに続くのが、長谷工コーポレーション、戸田建設といった連結売上高2000億円~1兆円規模の「準大手ゼネコン」だ。これらの企業は、設計・研究開発から施工までの幅広い分野を総合的に請け負うため、ゼネラル(=総合)・コントラクター(=請負業者)、通称「ゼネコン」と呼ばれている。さらに、五洋建設など海洋土木工事に強い「マリコン」(マリン・コンストラクター、つまり海洋専門の建設業者を指す)、NIPPOなど道路舗装に強い企業、基礎工事や建設設計など特定部門だけを担当する企業などもある。元請業者から工事の一部を請け負う建設業者は、ゼネコンに対してサブコン(サブ・コントラクター)とも呼ばれる。

国土交通省の「平成27年度建設投資見通し」によれば、2015年度(平成27年度)における日本国内の建設投資額は、対前年度比5.5パーセント減の48兆4600億円となる見込み。1992年度(84兆円)と比べると、市場規模は6割以下になった。財政再建のための公共事業費大幅削減と不景気による民間建設需要の低迷により、建設業界は長年にわたって縮小傾向が続いている。ただし2011年以降、民間の建設投資は拡大中。収益改善などを背景に企業の設備投資は増えているし、14年の消費増税駆け込み需要反動減が落ち着いたことで住宅投資も伸びた。また、東日本大震災の復興需要、東京オリンピックに関連した都心部の再開発なども追い風だ。その結果、大手ゼネコンの業績は好調(下記データ参照)で、過去最高益をたたき出した企業も多い。一方、15年度の政府投資が対前年比14.2パーセント減となったことで、公共事業への依存度が強い地方の中小建設事業者にとっては厳しい経営環境が続くだろう。

近年、建設業界はいくつかの大きな課題を抱えている。まずは「基礎ぐい工事問題」(横浜市のマンションを建設した際に虚偽のデータに基づいてくい打ち工事が行われ、後に発覚して大問題になったもの)への対応だ。国土交通省は15年12月、再発防止策などを公表。その中にはコストの増加要因となり得る対策が含まれており、建設会社の業績に影響を与えそうだ。また、震災復興事業、オリンピック関連事業などが重なって建設資材の需要が高まり、資材価格は上がる一方。また、人手不足から人件費も高騰している。そして、第1次ベビーブーム時に生まれた「団塊の世代」が定年を迎え、高度な知識・経験を持つ技術者・技能労働者が減っているのも悩みの種である。

こうした中、各社は研究開発に力を入れ競争力アップを目指している。一般社団法人日本建設業連合会が建設会社64社を対象に行った調査によると、短期テーマ(2年以内)に関する研究開発費と中長期テーマに関する研究開発費の比率は、12年時点で71対29だった。ところが、15年には66対34と中長期テーマの割合が高まっている。これは、東京オリンピック後を見据えてじっくりと研究力を高めようとする姿勢の表れだろう。

特に大手ゼネコンでは、好決算を背景に研究開発部門への投資が活発だ。例えば前田建設工業は、茨城県に技術研究所「Maeda Innovation Center」を新設して大型実験施設を導入。「オープンイノベーション」(自社だけでなく、他の企業や研究機関などを巻き込んで革新を起こすこと)を推進するため、施設の一部を外部に開放する計画を打ち出した。また、竹中工務店が車で踏んでも枯れにくい路面緑化システムを開発したり、大林組が耐火性の高い木造の建築部材を開発して14階建てまでの木造ビル建築を可能にしたりするなど、多くの新技術・システムが開発、投入されている。

大手ゼネコンの決算は好調

大林組
売上高……1兆7778億円(対前年比0.2パーセント増)
営業利益……1064億円(対前年比119.8パーセント増)

鹿島建設
売上高……1兆7427億円(対前年比2.9パーセント増)
営業利益……1111億円(対前年比777.0パーセント増)

清水建設
売上高……1兆6649億円(対前年比6.2パーセント増)
営業利益……947億円(対前年比89.2パーセント増)

大成建設
売上高……1兆5459億円(対前年比1.7パーセント減)
営業利益……1175億円(対前年比66.8パーセント増)

竹中工務店
売上高……1兆2843億円(対前年比11.6パーセント増)
営業利益……598億円(対前年比115.9パーセント増)

※各社の決算資料などを基に作成。どの企業の業績も好調で、営業利益を大きく伸ばしている。

このニュースだけは要チェック <ベンチャー企業が建設業界に参入する動きもある>

・電動バイクで知られるベンチャー企業・テラモーターズが、ドローンを活用した土木向け測量事業を始めると発表。建設現場の測量作業を自動化することで、時間とコストを削減できるという。同社のように、ドローンなどの新技術を武器に建設業界に参入する企業は今後増えていきそうだ。(2016年3月16日)

・大林組が定款(ていかん。企業を運営するために定める基本的なルールのこと)の一部を変更すると発表。事業目的に「宇宙開発」「燃料の製造・販売」などを加える。同社は「宇宙エレベーター」や次世代エネルギーを新領域事業と位置づけており、定款変更はその一環と言える。(2016年5月12日)

この業界とも深いつながりが <建設業界でもITの積極活用が進む>

IT(情報システム系)
ITを活用し、低コストで効率の良い新工法を導入する動きが盛んに

鉄鋼
大規模なビルや橋などを建設する際には、大量の鉄鋼が使われる

マンションデベロッパー
マンションを作るためには、建設会社の協力が欠かせない

この業界の指南役

日本総合研究所 未来デザイン・ラボ シニアマネジャー 田中靖記氏

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大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修修了。同大学院工学研究科客員研究員。専門は、未来洞察、中長期事業戦略策定、シナリオプランニング、海外市場進出戦略策定など。主に社会インフラ関連業界を担当。また、インド・ASEAN市場の開拓案件を数多く手がけている。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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