ドラッグストア編・2017年【業界トレンド】

市場規模は順調に拡大中。競争に勝ち抜くため、大手は他社買収と販売品目拡大に注力

ドラッグストアとは、一般用医薬品(下記キーワード参照)や化粧品、健康食品などを販売する店舗のこと。ウエルシアホールディングス、ツルハホールディングス、マツモトキヨシホールディングス、サンドラッグ、コスモス薬局などが代表格だ。日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)によると、2016年度におけるドラッグストア業界の市場規模は、前年度より5.9パーセント増の6兆4916億円。同協会が調査を始めてから、16年連続で過去最高を更新した。また、2006年度(4兆6774億円)に比べると市場規模は4割近く伸びており、とても好調な業界と言えるだろう。

その原因としては、2つのポイントが挙げられるだろう。まず1つ目は、外国人観光客の存在だ。訪日外国人数は、2013年に1036万人、2014年に1341万人、2015年に1974万人、2016年に2404万人と右肩上がりに増加。一方、日本の一般用医薬品や化粧品、お菓子、美容グッズは、アジアを中心とした外国人消費者から「比較的安価なのに質が良い」と高く評価されている。加えて、2014年10月に食料品・飲料品・医薬品・化粧品などが免税対象品目に追加されたことが追い風となり、ドラッグストアで日本の商品をまとめ買い(いわゆる「爆買い」)するケースが増えた。今後も、訪日外国人需要の取り込みは各社にとって大きなテーマとなるだろう。そして、2つ目のポイントは「調剤薬局事業」だ。ドラッグストアの中には、調剤薬局(一般用医薬品だけを扱うドラッグストアとは異なり、「医療用医薬品」も扱える)を併設するところが増加。その売り上げ増が、各社の業績アップに大きく貢献している。

2016年度における業界全体の総店舗数は1万8874店舗で、前年度より2.1パーセント増。店舗数も売上高と同様に増加傾向だ。その結果、業界内での競争も激しさを増している。そこで大手企業を中心に、他社の買収などによって規模を拡大する動きが盛んだ。例えば、ウエルシアホールディングスは2015年以降、複数の薬局チェーンを買収。この結果、ドラッグストア業界で22年間にわたり売上高首位だったマツモトキヨシホールディングスを抜き去った。他社も買収・事業提携の動きを加速しており、今後も業界再編には注目が必要だ(下記ニュース参照)。

販売品目の積極拡大を目指す企業が増えているのは、最近のトレンドの一つ。食品を取り扱うドラッグストアは以前から多く、菓子類、飲料・酒類、冷凍食品などを手がける店舗も少なくなかったが、さらに最近では野菜や肉といった生鮮食品の取り扱いを行うところが増加。食品のラインナップを充実させることで消費者の来店頻度を高め、さまざまな商品の「まとめ買い・ついで買い」を狙う動きが加速中だ。その結果、ドラッグストアはコンビニエンスストアやスーパーマーケットと同様に幅広い商品を扱うこととなり、両者との競合関係が強まっている。一方、ドラッグストアがコンビニエンスストアと提携して共同店舗を出す試みも、以前と同様にある。

薬剤師の確保は、各社にとって重要な課題だ。ドラッグストアで一般用医薬品を販売するためには、薬剤師、もしくは「登録販売者」(下記キーワード参照)の資格を持った人材が必要。大手ドラッグストアは事業拡大のために店舗数増加を目指しているため、それに連れて薬剤師へのニーズが高まっている。また、各社が現在注力している調剤薬局の事業でも薬剤師の確保が欠かせないため、現在は薬剤師の奪い合いが生じている状況だ。薬剤師の待遇引き上げや、社内での人材育成を目指す取り組みがさらに活発になっていくだろう。

プライベートブランド(PB。ドラッグストアなどの小売業が自ら企画した商品のこと)も大切なテーマ。多くの企業では、PB商品など高い利益率を得られるアイテムの拡充に力をいれている。例えば、マツモトキヨシホールディングスは「MK CUSTOMER」というブランドで、PBの医薬品、化粧品、日用品、食品を販売。ツルハホールディングスでも、「M’s one」という名称で多数のPBを手掛けている。

ドラッグストア業界志望者が知っておきたいキーワード

一般用医薬品
ドラッグストアなどで、処方箋なしで市販されている医薬品のこと。これに対し、病院や調剤薬局などで処方箋に基づき供給される医薬品が「医療用医薬品」である。
第一類・第二類・第三類医薬品
一般用医薬品は、リスクなどによって「第一類」「第二類」「第三類」の3つに分類される。このうち第二類・第三類医薬品は、消費者が店舗で商品を手に取って確認可能な場所に陳列可能。一方、第一類医薬品は薬効や副作用のリスクが比較的大きいため、消費者が直接手に取れないところに陳列され、薬剤師によって販売される。
登録販売者
ドラッグストアなどで第二類・第三類医薬品を販売できる専門家。薬剤師は大学の薬学部に6年間通わなければ受験資格が得られないが、登録販売者は誰でも資格試験を受けられる。政府は、薬剤師が不在でも第二類・第三類医薬品を販売できるよう規制緩和を行っており、登録販売者制度の導入はその一環と言える。
薬剤師試験合格者数
2006年、薬剤師養成の教育期間が従来の4年から6年に延長された。この影響で2009年度と2010年度の薬学部卒業生数は激減し、薬剤師合格者数も大幅に減って人材不足に拍車をかけた。2011年度以降の合格者数は従来と同水準に回復したが、それでも人材ニーズの拡大に追いつけていない。

このニュースだけは要チェック<大手による他社買収の動きは続きそうだ>

・ウエルシアホールディングスが、青森県を中心にドラッグストアと調剤薬局を展開する丸大サクラヰ薬局を買収すると発表。2017年9月には買収を完了した。丸大サクラヰ薬局を核とし、東北地方での出店を加速するのが狙い。(2017年4月18日)

・ツルハホールディングスが、静岡県でドラッグストアと調剤薬局を展開する杏林堂薬局と、その親会社の杏林堂グループ・ホールディングスを買収すると発表。これにより、ツルハホールディングスの売上高は、ウエルシアホールディングスを抜いて業界首位になるとみられる。(2017年9月7日)

この業界とも深いつながりが<コンビニとの競争がさらに激化>

コンビニエンスストア
食品や日用品を幅広く販売する業態は、コンビニエンスストアと真正面からぶつかる

スーパーマーケット
地域密着の小型スーパーマーケットとは、コンビニエンスストアと同様に競合となる

家電量販店
医薬品を販売する家電量販店が増え、来店客や薬剤師の奪い合いが発生

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー
吉田賢哉氏

ph_trend_vol184_01

東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

就活をはじめる以前に、本当はいろんな不安や悩みがありますよね。
「面倒くさい、自信がない、就職したくない。」
大丈夫。みんなが最初からうまく動き出せているわけではありません。

ここでは、タテマエではなくホンネを語ります。
マジメ系じゃないけどみんなが気になる就活ネタ。
聞きたくても聞けない、ホントは知りたいのに誰も教えてくれないこと。
なかなか就活を始める気になれないモヤモヤの正体。
そんなテーマを取り上げて、ぶっちゃけて一緒に考えていきましょう。

みなさんが少しでも明るく一歩を踏み出す気持ちになれることが、
私たちの願いです。