海運編

海運不況を経て経営の「スリム化」が進む。資源分野の取り込みが成長のカギ

かつては「構造不況業界」と揶揄(やゆ)されていた海運業界だが、中国・ブラジルといった新興国の経済が伸びた2003年ごろから、右肩上がりの傾向が続いていた。世界の海運運賃の総合指数である「バルチック海運指数」(キーワード参照)は、03年途中に2000を突破。08年5月には過去最高の11793を記録するほどの活況だった。ところが、08年9月にリーマン・ショックが起きると、海運需要は大幅に縮小。同年12月、バルチック海運指数は663にまで低下した。その後、新興国の需要が回復したことで市場は上昇に転じたが、各社がリーマン・ショック前に大量発注していた新造船が、12年から13年にかけて竣工。船腹のだぶつきが起こって需要と供給のバランスが崩れ、バルチック海運指数は再び下落傾向となっている。

 

日本を代表する海運会社としては、日本郵船、商船三井、川崎汽船が挙げられる。11年度の決算は、新造船の竣工による供給過多と、世界的な海運運賃の下落によって3社とも赤字だった。しかし、各社は燃費の悪い老朽船を廃船にして効率化を図ったり、船の巡航速度を落として燃料消費を適正化するなどの取り組みを実施。さらに、海外の海運会社とアライアンス(キーワード参照)を組むことによって、コスト削減に成功しつつある。その結果、12年度決算は、3社ともおおむね改善がなされた。ただし、13年に入っても新造船の大量竣工は続いている。そのため各社は、引き続き航路・配船の合理化を進め、経営のスリム化によって収益の確保を目指している。

 

今後、各社の業績を左右しそうなのが、原油、鉄鉱石、LNG(Liquefied Natural Gasの略。液化天然ガスのこと)といった資源分野だ。海上輸送は時間がかかるが、大量の物資を安価に運ぶことができる点が特徴。そのため、以前から資源輸送は大きな事業の柱だった。しかし、最近では単に資源を運ぶだけではなく、上流の資源開発に投資して、その輸送を請け負うというケースが増えている(ニュース記事参照)。

 

環境に優しい「グリーン物流」にも注目したい。05年に発効した京都議定書では、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量削減目標が定められている。船による輸送は、航空機やトラックを使った場合に比べて温暖化ガスの排出量が少ないため、今後は船舶へのモーダルシフト(輸送手段の転換を図ること)が進むとみられているのだ。また、さらなる省エネを実現する新型船舶の開発も進みそう。例えば商船三井は、三井造船、三井造船昭島研究所、日本海事協会とともに、新型帆装装置「Power Assist Sail」に関する共同研究を実施。風を補助推進力に使うことで、二酸化炭素の削減を可能にする船舶の投入を目指している。

 

業界志望者なら、大手3社の経営方針の違いも調べておきたい。日本郵船は、成長するアジアを重要市場と位置づけ、安定的な運賃が見込める自動車・資源分野の事業拡大に注力。また、日本貨物航空をグループ傘下に擁している点を生かし、顧客に対して総合物流サービス(キーワード参照)を提供して存在感を高めている。商船三井は、海洋開発に取り組むなど、物流にとらわれずに事業領域を拡大して経営強化に努めている。また、ITを活用して海運需要の分析を高度化し、適正な供給計画を立てる取り組みにも熱心だ。そして川崎汽船は、LNGや石油などのエネルギー分野、新興国の自動車分野の増強を進めながら、海洋開発・資源開発事業への投資も増やす方針。特に海洋開発は、ブラジルを中心に拡大を狙っている。

 

押さえておこう <海運業界志望者が知っておきたいキーワード>

バルチック海運指数
ロンドンのバルチック海運取引所が発表している、外航不定期船(外航ばら積み船)の運賃指数。BDI(Baltic Dry Index)と略されることもある。1985年1月4日の指数を1000として算出されている。
アライアンス
企業連合のこと。海運業界の場合、1隻の船を複数の企業で共同運行してコスト削減を図っている。日本郵船は「グランド・アライアンス(GA)」、商船三井は「ザ・ニュー・ワールド・アライアンス(TNWA)」、川崎汽船は「CKYHアライアンス」に属している。
総合物流サービス
海運業だけでなく、倉庫での在庫管理や空輸・陸送などの多様な運送を、ワンストップで手がけること。ITを活用し、顧客企業にとって必要なものを必要な時間、必要な場所に届ける「ジャストインタイムデリバリー」のニーズが高まっている。
サブスタンダード船
サブスタンダードとは、「sub(=以下)+standard(=基準)」。つまり、船の構造や設備などの面で、国際条約などで定められた基準を満たしていない船のこと。海難事故などを起こしやすいことから、早期の廃船・解体が求められている。

要チェックニュース! <資源開発への取り組みはホットな話題>

・日本郵船は、伊藤忠商事とともにブラジル沖で建設した「浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備(FPSO)」が稼働を開始したと発表。日本郵船は20年間にわたって、船による原油などの輸送と、プラントの操業を手がける。(2013年6月12日)

・川崎汽船は、国際石油開発帝石、およびフランスの石油メジャーであるTOTALとの間で、新造LNG船1隻ずつを提供する契約を結んだと発表。これら2隻の船は、16年末に生産が開始されるLNGの輸送に投入される予定だ。(2013年6月5日)

つながりの深い業界 <ITシステムの強化が進んでいる>

総合商社
資源の輸送事業や、海洋資源の開発プロジェクトで協力するケースが多い

IT(情報システム系)
「総合物流サービス」を実現するため、各社がITを積極的に導入している

空運(貨物)
日本郵船が日本貨物航空を子会社化するなど、空運との協力体制が強固に

 

この業界の指南役

日本総合研究所 副主任研究員 千葉岳洋氏
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一橋大学社会学部社会問題・政策課程卒業。専門は、国際会計、経営管理・グループ経営改革、グローバルマーケティング、グローバルサプライチェーンマネジメント。製造業を中心として、グローバルを共通テーマに、マーケティング・会計・業務改革などを幅広く手がける。米国公認会計士。

 

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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