専門商社編・2013年【業界トレンド】

グローバル化への対応が急ピッチで進行。「川上・川下」への進出も盛んだ

「ラーメンからミサイルまで」、あるいは「ナノテクから宇宙衛星まで」などと表現されるように、幅広い業界で事業を展開するのが総合商社。これに対し、鉄鋼、紙・パルプ、化学、半導体、機械・工具、医薬品、食品、携帯電話端末といった特定の業界に絞り込み、専門性を生かしているのが専門商社だ。

専門商社の代表格には、医療系大手の専門商社であるメディパルホールディングス(2013年3月期連結売上高2兆8110億円)、鉄鋼系大手のメタルワン(同2兆3057億円)などがある。総合商社大手の三菱商事(同20兆2072億円)と比べると事業規模は小さいが、単一業界での売り上げであることを考え合わせればかなりの金額。専門商社の各業界における存在感は、かなり大きい。ただし、業界を絞り込んでいるために、上流にあるメーカーや手がける分野の市況に影響を受けやすい傾向にある。なお、鉄鋼や紙・パルプのように顧客と長年にわたって取引を行っている業界では、市場シェアの変動は起こりづらく、比較的安定していると言えるだろう。一方、半導体や電子部品のように技術革新が早い業界では、シェアの変動が起こりやすい。

近年の総合商社は、事業投資による利益獲得に力を入れている。これに対し、専門商社は商取引(トレーディング)で得られる「口銭」(こうせん 。仲介手数料のこと)が収益の柱だ。だが、近年ではメーカーが商社を通さず「直接取引」を進めるケースもあり、商社の経営基盤を揺るがしつつある。そこで各社は、トレーディング以外の収益基盤を模索中。例えば、メーカーとの経営統合や商品の共同開発、海外企業との提携による生産事業への進出などにより、生産部門を保有して「川上」への進出を図るケースが増加中だ。逆に、小売企業を買収して「川下」を手がける取り組みも活発化している。

国際化への取り組みも盛んだ。これまでの専門商社は、国内における卸業の比重が比較的大きかった。しかし、各専門商社にとってつながりの深いメーカーが海外展開を進めており、これに対応できるグローバル人材を育成しようと、語学研修や海外派遣制度などを取り入れる企業が増えている。また、進出を目指す地域は拡大する一方。北米、欧州、BRICsだけでなく、ベトナム、インドネシアといった東南アジアでビジネス拡大を目指す企業も少なくない。

専門商社を志望するなら、輸出入にまつわる環境の変化はぜひチェックしておきたい。08年のリーマン・ショックや11年の東日本大震災などが原因で、日本の輸出入額は減少(下表参照)。専門商社の業績にも大きな影響を及ぼした。しかし、13年に入ってからは円安による輸出拡大が見込まれている。また、今後はTPP加入が輸出入の拡大につながる可能性があり、大きな期待要因。ぜひ、関連ニュースをチェックしておきたい。

押さえておこう <日本の輸出入額は、08年以降低迷が続いている>

2007年
輸出額……83.9兆円
輸入額……73.1兆円
輸出額-輸入額……10.8兆円
2008年
輸出額……81.0兆円
輸入額……79.0兆円
輸出額-輸入額……2.1兆円
2009年
輸出額……54.2兆円
輸入額……51.5兆円
輸出額-輸入額……2.7兆円
2010年
輸出額……67.4兆円
輸入額……60.8兆円
輸出額-輸入額……6.6兆円
2011年
輸出額……65.5兆円
輸入額……68.1兆円
輸出額-輸入額……-2.6兆円
2012年
輸出額……63.7兆円
輸入額……70.7兆円
輸出額-輸入額……-6.9兆円

※財務省「貿易統計」より。それぞれ四捨五入しているため計算が一致しない場合がある。東日本大震災以降の原発停止で石油、液化天然ガスなどの輸入量が増えたこともあり、11年以降は輸入超過となっている。

このニュースだけは要チェック <各企業が海外展開に積極的>

・メディパルホールディングスが総合商社の三菱商事とともに、中国北京市の医薬品卸の株式を取得したと発表した。中国で医薬品卸事業の基盤を強化し、日本国内で培ったノウハウを生かしながら、成長著しい中国でヘルスケア事業を拡大するのが目的。(2013年7月26日)

・鉄鋼系大手専門商社のJFE商事が、ベトナムで2拠点目となる鋼材加工センターを設立すると発表。現在、ベトナムでは電機メーカーなどの日系企業が進出を進めており、こうした製造業向けの鉄鋼板加工ニーズに対応するのが狙いだ。(2013年7月12日)

この業界とも深いつながりが <各業界のメーカーとは切っても切れない間柄>

総合商社
専門商社が総合商社と協力して事業展開する機会は意外と多い

医薬品メーカー
開発段階の医薬品に対して投資を行うケースもある

IT(情報システム)
IT系企業と協力し、システムとハードウェアをセットで販売することも

この業界の指南役

日本総合研究所 副主任研究員 山浦康史氏

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慶應義塾大学大学院工学系研究科修士課程修了。通信・メディア・テクノロジー分野を中心としたさまざまな業界における経営戦略・計画策定、事業性評価、新規事業展開支援、R&D戦略策定支援などのコンサルティングに従事している。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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