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Vol.291 介護サービス編

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人手不足をロボット活用などで補う動きが活発に。医療との連携強化にも注目しよう

介護サービスとは、高齢者や障害者など介護を必要とする人に対し、日常生活上の手助けを行うもの。主な分野としては、訪問介護(ホームヘルパーなどが介護を必要としている人の自宅を訪れ、食事や入浴などの支援をすること)や通所介護(介護を必要としている人が施設に通い、食事や入浴などのサービスを受けること。デイサービスと呼ばれることもある)などの「居宅サービス」、認知症対応型デイサービスなどの「地域密着型サービス」、特別養護老人ホームなどの「施設サービス」に大別される。厚生労働省によれば、2000年度における介護保険の総費用が3.6兆円だったのに対し、05年度は6.4兆円、14年度は10.0兆円へと増加。市場は右肩上がりに拡大しており、25年度には21兆円程度になるという試算もある。

 

介護業界の大手企業としては、ニチイ学館(14年度における介護部門の売上高1450億円)、ベネッセコーポレーション(14年度におけるシニア・介護事業の売上高872億円)などがある。ほかには、デイサービス分野で強みを発揮するツクイ(14年度売上高614億円)、有料老人ホーム分野のメッセージ(13年度売上高789億円)、介護用品分野のパラマウントベッドホールディングス(13年度売上高752億円)やフランスベッドホールディングス(13年度売上高519億円)といった企業も知名度が高い。なお、介護業界は参入へのハードルがさほど高くないため、中小規模の企業が比較的多い。

 

市場拡大の背景にあるのは、急激な高齢化だ。内閣府の『平成27年版高齢社会白書』によると、00年時点における日本の高齢者割合(総人口に占める65歳以上の割合)は17.4パーセント。ところが、14年には26.0パーセントへと増えた。国立社会保障・人口問題研究所は35年の高齢者割合を33.4パーセントと予測しており、今後も介護へのニーズは高まっていくと予測される。ただし、多くの事業者が参入したことで競争は激化する傾向。また、政府は財政赤字を減らすため、3年に1度行われる「介護報酬改定」を通じて介護サービスの価格抑制を目指している。そこで各企業には、介護サービスの質を維持しながら、業務の効率化などによってコスト削減を目指す取り組みが不可欠だ。

 

市場規模の急激な拡大は、慢性的な人手不足をもたらしている。厚生労働省は、25年における介護業界の人材需要が253.0万人に達する一方、人材供給は215.2万人にとどまると予測。つまり、40万人近い人手不足が発生する見込みだ。こうした需給ギャップを埋めるため、各社は介護スタッフの待遇改善を進めている。また、「外国人技能実習制度」(キーワード参照)を活用して介護従事者を確保する動きも活発化するかもしれない。

 

ロボットを活用する取り組みにも注目したい。例えば、大学発ベンチャーのサイバーダイン社は、介護者が身に着けることで腰の負担を減らすことができる「ロボットスーツ」(キーワード参照)を開発。また大和ハウス工業では、高齢者がペットのようにかわいがることで、癒やしや認知症予防などの効果が得られる「メンタルコミットロボット『パロ』」を発売した。こうしたロボットが普及すれば、介護従事者の負担を軽くすることにもつながるだろう。

 

厚生労働省は、団塊の世代(キーワード参照)が75歳以上となる25年をメドに、「地域包括ケアシステム」(キーワード参照)の構築を進めるとしている。これに伴い、医療と連携する機会はさらに増えそうだ。また、高齢者の安否確認や見守り、高齢者の自宅に食事を届ける配食サービス、家事や買い物の支援サービスなどの「保険外サービス」(キーワード参照)も需要が高まりそうだ。

 

介護サービス業界志望者が知っておきたいキーワード

外国人技能実習制度
発展途上国から外国人を受け入れて技術・知識を学んでもらい、帰国後、その国の発展に役立ってもらうための仕組み。外国人スタッフを受け入れることで、介護現場での人手不足を緩和できるのではと期待されている。
ロボットスーツ
重いものを軽々と持ち上げられたりするなど、身体に装着することで人の動きを支援する装置のこと。パワードスーツ、パワーアシストスーツなどとも呼ばれる。介護業界では、要介護者の抱き上げなどに向け開発が進行中。
団塊の世代
第2次世界大戦終了後の1947~49年にかけて生まれた世代を指す。この時期、日本では毎年の出生数が260万人を超えており、空前のベビーブームだった。2022年以降、この世代が後期高齢者(75歳以上)となり、介護市場の急拡大が予測されている。
地域包括ケアシステム
重い要介護状態になった高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らせるよう、地域ぐるみで支える仕組みのこと。住まい・医療・介護・予防・生活支援という5つのサービスを、一体的に受けられる体制づくりを目指す。
保険外サービス
食事や入浴の介助といったサービスは、国による介護保険の対象となっている。一方、高齢者の安否確認や配食などのサービスは保険の対象外だ。これらは高齢者の生活の質を高めてくれるし、事業者にとっては売り上げ拡大につながるため、力を注ぐ企業が増えている。

このニュースだけは要チェック<見守りサービスと提携する試みに注目>

・ツクイがセキュリティ企業のセコムと提携し、高齢者向けの24時間見守りサービスをスタート。ツクイのデイサービス・訪問介護事業と、セコムの高齢者向け見守り・救急時対応サービスとを合わせた仕組みだ。当初は東北4県でサービスを提供し、順次全国に展開していく予定。(2015年10月1日)

 

・損保ジャパン日本興亜ホールディングスが、居酒屋チェーンなどを運営するワタミの完全子会社であったワタミの介護を買収。損保ジャパン日本興亜ホールディングスはメッセージの買収も発表しており、介護業界ではニチイ学館に次ぐ2位となる見込み。(2015年12月1日)
 

この業界とも深いつながりが <介護ロボットの開発は業界全体の関心事>

工作機械・産業用ロボット
介護ロボットの実用化が進めば、介護従事者の人手不足解決にも役立ちそう

病院・診療所
高齢者に対し、介護サービスと医療サービスを同時に提供する機会が増える

外食
外食チェーンや食品メーカーと協力し、配食サービスに進出する企業もある

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー
吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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