空運(旅客)編

市場は震災後の落ち込みから回復傾向。パイロット不足と燃料費高騰が懸念材料

航空会社は、全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)といった「メガ・キャリア」(大規模航空事業者)と、ピーチ・アビエーションやジェットスター・ジャパンなどの「LCC」(Low-Cost Carrierの略。格安航空会社)の2種類に大別できる。メガ・キャリアは、充実した設備・機内エンタテインメントなどの高付加価値サービスが最大の売り。幅広い路線網を持ち、利便性が高い点も武器だ。一方、LCCは機内食や荷物の持ち込みを有料にするなど、徹底的なサービス効率化によって低コストを実現。これまで飛行機を使わなかった層の取り込みに成功している。国土交通省によると、国内線におけるLCCのシェアは6パーセント程度。欧州では、座席シェアベースで4分1以上がLCCによって占められており、国内でもさらにシェアを伸ばす可能性があるだろう。

 

航空会社の旅客需要は、景気の動向や疫病の流行といった外部環境の変化に影響を受けやすい。東日本大震災(2011年)の直後も、旅客数が大きく落ち込んだ。しかし、13年の国内定期航空輸送の旅客数は対前年比7.2パーセント増、国際航空輸送の旅客数は対前年比6.2パーセント増と大幅アップ。震災前の水準を上回り、回復傾向を見せている(下表参照)。

 

需要の伸びに一役買っているのが、羽田空港(東京国際空港)の発着枠拡大である。10年10月時点における羽田空港の発着枠は、年間30.3万回だった。しかし、再拡張工事によって「D滑走路」が新設され、発着枠は段階的に拡大。13年度中に44.7万回となる予定だ。また、従来はゼロだった国際線枠も13年度中には9万回にまで拡大され、アジア長距離路線や欧米路線などのビジネス路線も発着できるようになった。首都圏の旅客需要は他の地域に比べると大きく、羽田空港の利便性が高まることで旅客数増加が見込めると期待されている。

 

日本人旅客数は順調に増えているが、外国人の取り込みも重要だ。13年、訪日外国人客数が初めて1000万人を突破した。原発事故の影響が薄れた一方、円安の進行によって旅行客が訪れやすい条件がそろったことが背景にあるとみられている。とりわけ、日本旅行ブームが起きている台湾と香港、ビザの緩和が行われたタイなどでは、訪日観光客が急増中だ。今後も、政府や旅行会社などと協力しながら、日本の魅力をアピールする取り組みが求められるだろう。

 

好材料が多い業界だが、不安もある。その一つが、パイロット不足が懸念される「2030年問題」だ。国内の航空会社では、パイロットの年齢構成が40代に偏っていると言われる。そのため、彼らが一斉に定年を迎える時期に、深刻な人員不足が起きると予測されているのだ。さらに、アジア地域を中心として航空需要は伸びる一方。世界規模で、パイロットの争奪戦が激しくなっている。その象徴が、ピーチ・アビエーションの減便(ニュース記事参照)。パイロットの確保は、国内航空各社にとって大きな課題となりそうだ。

 

燃料費の負担も、各社にとって頭の痛い問題だ。円安などで燃料価格が高騰。さらに、燃費のよい新世代ジェット旅客機「ボーイング787」が、トラブル続きで一時使用停止に追い込まれたことがコスト増につながった。「燃油サーチャージ」(運賃とは別に請求される燃料費のこと)によって顧客に相応の負担を求めてはいるが、完全な転嫁はできていない状態である。燃料価格の推移や、燃費のよい航空機の開発・採用に関するニュースについては、ぜひ注目しておきたい。

 

押さえておこう <旅客数は震災前の水準を回復>

2007年
国内旅客数……9554万人
国際旅客数……1776万人
2008年
国内旅客数……9289万人
国際旅客数……1643万人
2009年
国内旅客数……8395万人
国際旅客数……1539万人
2010年
国内旅客数……8437万人
国際旅客数……1457万人
2011年
国内旅客数……7759万人
国際旅客数……1216万人
2012年
国内旅客数……8494万人
国際旅客数……1400万人
2013年
国内旅客数……9105万人
国際旅客数……1486万人

※国土交通省「航空輸送統計調査」より。リーマン・ショック(08年)、東日本大震災(11年)の後に旅客数が激減したことがわかる。

このニュースだけは要チェック <パイロット不足はLCCにとって深刻な問題>

・ピーチ・アビエーションが、14年5月~10月にかけて最大で2088便を減便すると発表。病欠などでパイロットが不足し、新規採用もうまくいかなかったことが原因とされる。ほかのLCCでもパイロット不足の傾向があると言われており、各社の対応が注目されている。(2014年4月24日)

・全日本空輸が新型機の購入を発表。ボーイング社の機体に加え、エアバス社の小型機であるA320neo、A321neoも購入している。日本では長らくボーイング社の機体のみが利用されてきたが、LCCを中心に、国内各社でエアバス社の機体も採用されつつある。(2014年3月27日)

この業界とも深いつながりが <旅行・ホテル業界と連携して海外市場を拡大>

旅行・ホテル
協力しながら国内・海外市場を開拓。航空会社がホテルを経営するケースもある

重工メーカー
国内重工メーカーが開発した新型機は、航空会社にとっても注目の的だ

総合商社
航空機のうち3分の1程度が、総合商社によるリースと言われる

 

この業界の指南役

日本総合研究所 副主任研究員 粟田 輝氏

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慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。専門は経営・事業戦略、各種戦略策定・実行支援や事業性評価。幅広い業界・規模の企業を対象としている。最近では、今後さらなる発展が期待されるブラジル市場に注目し活動中。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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