生保・損保編

国内市場は堅調も、ネット業者との競争激化で先行きに不安。海外展開と新商品開発がカギに

社団法人生命保険協会によれば、同協会加入43社の2012年度における総保険料収入は37兆1405億円。対前年度比で2.3パーセント増だった。ここ数年、保険料収入は堅調に増加している。ただし、人口減などで市場の先行きには不安もありそうだ。なお、主な生命保険会社としては、かんぽ生命保険、日本生命保険、明治安田生命保険、第一生命保険、住友生命保険などがある。また、アメリカンファミリー生命保険、メットライフアリコ生命保険といった外資系企業も存在感を高めている。

 

一方、社団法人日本損害保険協会によると、同協会加入26社の12年度における総正味収入保険料(損保会社が保険契約者から受け取った保険料から、保険契約者に払い戻した解約返戻金、積立型保険の貯蓄部分の保険料を引き、さらに他社とやりとりした再保険料を足し引きした額のこと)は7兆3718億円。対前年度比で3.6パーセント増だった。こちらも、新車の販売台数が増えて自動車保険の新規契約が増えたこと、復興需要で火災保険分野が伸びたことで好調が続いている。損保業界は、10年に起きた業界再編により、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、東京海上ホールディングス、NKSJホールディングスという「3メガ」体制となっている。

 

13年、生命保険業界では2つの大きな変化が起きた。1つ目は、12年ぶりとなる「標準利率」の引き下げだ。これは、生命保険会社が契約者に約束する運用利回り(予定利率)の基準となるもの。運用利回りが低下すると保険会社は責任準備金(保険金支払いのために積み立てるお金)を余計に積み増す必要があるため、標準利率の低下は保険料の引き上げにつながることが多い。今回の標準利率引き下げ時にも、貯蓄型の保険商品を中心に保険料が引き上げられた。しかし、シェア拡大のために主力商品などで保険料を引き下げる生保が現れるなど、企業によって対応は分かれている。

 

もう1つの大変化は、「逆ざや」の解消である。これは、予定利率で見込んでいる運用収益が、実際の運用収益でまかなえなくなる現象を指す。バブル崩壊以前には年5~6パーセントの高い予定利率を設定した保険契約が結ばれていたが、低金利時代の今、生保がこれほどの高利回りで資金を運用することは難しい。その差額が、長らく保険会社の収益を圧迫してきたのだ。しかし、13年度上半期決算において、国内主要生保9社全体の運用実績が「逆ざや」を解消。構造的課題が解消されたことを契機に、各社は新たな収益源の確保に動き出している。その一つが海外展開だ。下記ニュースでも紹介しているように、生保各社はアジアを中心とした海外市場の開拓に力を注いでいる。

 

一方、低価格を売りに躍進するネット専業生保との争いは、新たな局面に差し掛かっている。とりわけ、第一生命が14年度中に立ち上げを予定している、割安商品を扱う子会社に注目だ。同社は、大手航空会社が格安航空会社(LCC)を運営することになぞらえ、生保でも同様の構図が求められていると訴えている。今後は大手生保でも、販売員による手厚いフォロー体制がある既存の保険商品以外に、ネット販売中心の格安保険商品を手がけるケースが増えるかもしれない。一方、ネット専業生保も銀行と提携して新規客開拓の販路を得るなど、シェア拡大に努力している。

 

損保業界も、国内市場の停滞とネット系損保の台頭による競争激化という構造は同じだ。そのため、海外展開や新商品開発が生き残りのカギを握りそう。例えば、株主代表訴訟などで会社役員の責任が追及された際に利用できる「役員賠償責任保険」など、新たな商品が生み出され、注目を集めている。損保業界では、収入保険料の約7割を自動車・自動車損害賠償責任(自賠責)・火災保険契約が占めており、これらに代わる収益源の確保は各社にとって大きな焦点だ。

 

押さえておこう <アジア新興国の一人あたり保険料はまだまだ低い>

日本
生命保険の一人あたり保険料……4271米ドル
生命保険以外の一人あたり保険料……1057米ドル
マレーシア
生命保険の一人あたり保険料……323米ドル
生命保険以外の一人あたり保険料……180米ドル
タイ
生命保険の一人あたり保険料……159米ドル
生命保険以外の一人あたり保険料……111米ドル
中国
生命保険の一人あたり保険料……104米ドル
生命保険以外の一人あたり保険料……77米ドル
インドネシア
生命保険の一人あたり保険料……45米ドル
生命保険以外の一人あたり保険料……19米ドル
インド
生命保険の一人あたり保険料……44米ドル
生命保険以外の一人あたり保険料……11米ドル

※スイス再保険会社の「World insurance in 2012」より。アジア新興国の一人あたり保険料は日本に比べると低く、今後、市場開拓の余地が大いにあると言えそうだ。

このニュースだけは要チェック <各社の海外展開に注目しよう>

・住友生命保険が、インドネシアの大手銀行バンク・ネガラ・インドネシアの生命保険子会社であるBNI生命への出資が完了したと発表した。第一生命保険も、14年5月、米中堅生保のプロテクティブ生命を買収することで合意したと発表。M&Aによって海外展開への足がかりを築こうとする企業は今後も増えそうだ。(2014年5月12日)

・金融庁が標準利率の算定方式を15年度から見直す方向だと報道された。金利の変動にあわせ、従来よりも機動的な利率変更が実施される見通しとなっている。金利上昇局面において標準利率が引き上げられれば、新規契約者にとっては保険加入時の負担が軽減されるという利点がある一方で、企業間の競争がますます激化していくだろう。(2013年11月2日)

この業界とも深いつながりが <銀行との協力関係がさらに深化か?>

メガバンク
資本関係、銀行窓口での保険販売など、さらに関係が深まりそう

IT(情報システム系)
オンラインシステムの構築などでパートナーシップを組む

証券
資産運用に加え、退職世代の金融資産をターゲットに協力関係を築く

 

この業界の指南役

日本総合研究所 マネージャー 田中靖記氏

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大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修修了。専門は、新規事業、マーケティング、海外市場進出戦略策定。鉄道・住宅・エネルギーなど、社会インフラ関連業界を担当。環インド洋諸国におけるコンサルティング・調査案件を中心に手がける。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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