メガバンク編・2014年【業界トレンド】

グローバル化を目指し海外金融機関への資本参加が活発化。非金利収入の拡大にも積極的

メガバンクとは、預金・貸出金の残高がきわめて大きな銀行のこと。日本では、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループが「3メガバンクグループ」と呼ばれている。

リーマン・ショック直後に大きな赤字を出したメガバンク3社だが、ここ数年の業績は好調。2014年3月期の連結純利益は、三菱UFJフィナンシャル・グループが9848億円(対前年度比15.5パーセント増)、三井住友フィナンシャルグループが8353億円(対前年度比5.2パーセント増)、みずほフィナンシャルグループが6884億円(対前年度比22.8パーセント増)。いずれも過去最高益を更新した。いわゆる「アベノミクス」以降の株価上昇により、保有株式の評価損益が改善したこと。そして、融資先の業績悪化に備えて積み立てていた「引当金」の戻入益が発生したことが、業績改善の背景にある。

しかし、必ずしも楽観ばかりできる状況ではない。国内企業は大手を中心に十分な手元資金を有しているところが多く、設備投資額も期待ほど伸びていない。そのため、国内向け融資は厳しい状況が続いているからだ。また、預金者が受け取る「預金金利」と、企業などに貸し付ける際の「貸出金利」の差である「利ざや」は縮小傾向が続いており、国内市場だけでは利益を伸ばしづらい。そこで各社は、海外収益の比率を高めることで利益拡大を目指している。

リーマン・ショックによって、欧米の金融機関は手ひどいダメージを受けた。それに比べ、邦銀の傷は比較的浅かったと言える。そのため、グローバル市場における邦銀の存在感は、以前より大きくなった。海外での大型融資案件にメガバンクが参加するケースも増えている。その結果、各グループの全体収益に占める海外収益の割合は3~4割にまで上昇。また、海外事業を強化するため、現地銀行に資本参加する事例も目立つ(下記リスト参照)。今後も、海外金融機関への出資・業務提携の動きに注目しておこう。一方、欧米の大手銀行もリーマン・ショックの後遺症から立ち直って収益力を回復してきており、海外での競争は今後も厳しくなりそうだ。

一方、国内では、融資以外の「非金利収入」を高めることで利益拡大を目指している。1つ目の取り組みは、投資信託の販売によって手数料収入を増やそうとする動き。2000年代以降、金融自由化が進められ、銀行窓口でも投資信託などの商品が販売できるようになった。銀行で扱える商品には限りがあるが、メガバンクは顧客とふれあう機会が多いため営業力が高い。そこで、これまで投資に縁が薄かった層を中心に販売額を伸ばしている。特に、14年から開始された少額投資非課税制度(NISA)は、銀行にとっても収益拡大のチャンスと言えるだろう。

非金利収入に関する2つ目の取り組みは、「事業再生ファンド」への出資だ。これは、経営が悪化した企業に対し、銀行や商社などの企業連合が共同で支援する組織。銀行にとっては融資による金利収入だけでなく、再生成功後の株式売却益といった利益が期待できる。13年11月、メガバンク3社が、日本政策投資銀行などと共同で運営している事業再生ファンドの「ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)」に追加出資すると発表。企業の経営に参加して事業再生を目指すビジネスは、今後、さらに拡大しそうだ。

押さえておこう <メガバンクの海外展開は活発化している>

タイ大手銀行の買収
三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の三菱東京UFJ銀行が、13年12月に約5000億円を投じ、タイのアユタヤ銀行を買収。邦銀がアジアの大手銀行を傘下に収めるのは初めてのことで、今後に注目が集まっている。
インドネシア中堅銀行への追加出資
三井住友フィナンシャルグループ傘下の三井住友銀行が、14年3月、インドネシアの中堅銀行であるバンク・タブンガン・ペンシウナン・ナショナル(BTPN)に追加出資。既存保有分と合わせて、持ち分は40パーセントとなった。
ベトナム国営銀行への出資
みずほフィナンシャルグループ傘下のみずほコーポレート銀行(現:みずほ銀行)は、11年9月 、ベトナムの大手国営商業銀行であるベトコンバンクの株式を約15パーセント取得。ほかにも、アジアでの買収・出資のチャンスをうかがっていると言われる。

このニュースだけは要チェック <自己資本規制に関するニュースに注視を>

・G20(主要20カ国・地域)が日本のメガバンク3社を含む世界上位30銀行を対象に、第二資本を積み立てさせる資本規制の検討に入ったと報道。すでに各メガバンクがクリアしている「バーゼル3」(金融機関の健全性を維持するため新たに定められた自己資本規制)とは別の規制で、さらなる資本の積み増しが求められる可能性もある。(2014年6月18日)

・メガバンク3社が労使交渉の結果、0.5パーセントの「ベースアップ」(ベア。全従業員の給与の基本給部分を引き上げること)実施を決定。ベアの実施は、バブル崩壊後の1995年以来となる。メガバンクの業績が好転したことを裏付けるニュース。(2014年3月27日)

この業界とも深いつながりが <証券会社や生保・損保との連携がさらに活発に>

証券
「銀証連携」はさらに進みそう。メガバンクのグループに属する証券会社もある

生保・損保
銀行窓口で保険商品を販売するなど、多くの生保が銀行との提携を行っている

地方銀行
地域顧客の取り込みで競合。メガバンク主導で地銀の合従連衡が進む可能性も

この業界の指南役

日本総合研究所 副主任研究員 高津輝章氏

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一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程修了。事業戦略策定支援、事業性・市場性評価、グループ経営改革支援、財務機能強化支援などのコンサルティングを中心に活動。公認会計士。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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