映画編

海外市場の開拓、臨場感の高い新施設、「ライブビューイング」拡大などが収益増のカギ

映画業界は、資金を集めたり映画を作ったりする「企画・製作」、映画の宣伝や映画館の確保などを行う「配給」、映画館を運営する「興行」の3段階に大別される。東宝・松竹・東映といった大手映画会社は、企画・製作から興行までの流れをすべて網羅。これに対し、主に企画・製作に携わるテレビ局、配給を手がける独立系配給会社、興行を担当するシネコン(シネマコンプレックスの略。同じ施設内に複数のスクリーンを持つ映画館のこと)運営会社のように、いずれかの段階だけを扱う企業もある。

 

一般社団法人日本映画製作者連盟によれば、2013年の邦画・洋画を合わせた興行収入は1942億円で、前年(1952億円)とほぼ同水準だった。また、2000年前後から急激に伸びていたスクリーン数も、3300前後で頭打ちになっている(下表参照)。以前の「シネコン増加で映画館に人が戻る→興行収入の拡大」という流れは止まり、映画業界は成熟期に入ったと言えるだろう。そのため、継続的な業績拡大を目指すには、既存のビジネスモデルだけでは不十分。各社は製作・興行などの局面で、新たな取り組みを進めている。

 

製作面では「海外展開」がカギだ。日本の映画作品を海外に紹介するだけでなく、企画段階から海外市場を視野に入れた作品が増えてきている。例えば松竹は、海外で根強いファン層を持つ「忍者」をテーマにしたアクション映画『ニンジャ・ザ・モンスター(仮題)』を製作。海外の映画祭に出品するなどして、グローバルな上映拡大を目指している。外国人ファンを意識した取り組みは、今後も加速しそうだ。また、海外向け作品はギャラの高い有名俳優を起用する必要がないため、低予算で製作しやすい点もメリットだと言える。一方、日活は14年6月、日本テレビと共同でタイの大手映像制作会社カンタナ・グループと合弁会社を設立。海外企業と提携して現地向け作品を生み出そうとする狙いがあると見られる。こうした動きも、今後は増えていくかもしれない。

 

シネコンの側も、さまざまな手を打っている。まずは、「4DX」と呼ばれる体感型の上映設備に注目。これは、3D(三次元)映像に加え、シートが動く、館内に風、水しぶき、香り、霧などを発生させるといった手法で臨場感を高める仕組みのこと。愛知県名古屋市、福岡県北九州市、広島県福山市、東京都大田区などの映画館で導入され、従来の映画館よりリアルな体験ができる点が受けている。設備投資は必要だが、付加価値が高く、通常より高い価格でチケットを販売できるため、導入するシネコンはさらに現れそうだ。

 

また、スポーツイベントなど、映画以外のコンテンツを放映するケースも増えている。特に拡大しているのが、音楽ライブを映画館で生中継する「ライブビューイング」の市場。現在、各映画館ではフィルムでの上映を取りやめ、光回線を通じて映像データを受け取る仕組みに切り替えている。そのため、ライブの動画をリアルタイムで流せる環境が整いつつあるのだ。さらに、映画館なら大画面・高音質な環境を生かして、迫力のあるライブ映像を楽しむことが可能。そこで、「チケットが取れなかった」「ライブ会場が遠い」「ライブ会場に足を運ぶのはためらってしまう…」という層を取り込むことに成功している。こうした「非映画コンテンツ」が増えれば、ヒット作の有無に左右されない収益モデルが確立できるとあって、各シネコンが注力している。

 

1スクリーンあたりの興行収入は減少傾向に

2001年
興行収入……2002億円(邦画781億円、洋画1220億円)
スクリーン数……2585
1スクリーンあたり興行収入……7740万円
2003年
興行収入……2033億円(邦画671億円、洋画1361億円)
スクリーン数……2681
1スクリーンあたり興行収入……7580万円
2005年
興行収入……1982億円(邦画818億円、洋画1164億円)
スクリーン数……2926
1スクリーンあたり興行収入……6770万円
2007年
興行収入……1984億円(邦画946億円、洋画1038億円)
スクリーン数……3221
1スクリーンあたり興行収入……6160万円
2009年
興行収入……2060億円(邦画1173億円、洋画887億円)
スクリーン数……3396
1スクリーンあたり興行収入……6070万円
2011年
興行収入……1812億円(邦画995億円、洋画817億円)
スクリーン数……3339
1スクリーンあたり興行収入……5430万円
2013年
興行収入……1942億円(邦画1177億円、洋画766億円)
スクリーン数……3318
1スクリーンあたり興行収入……5850万円

※一般社団法人日本映画製作者連盟が公表しているデータをもとに作成。なお、邦画の興行収入が洋画を上回る「邦高洋低」の傾向は、『崖の上のポニョ』などが大ヒットした2008年前後から顕著になっている。

このニュースだけは要チェック <流通系企業のシネコン買収に注目>

ローソンが、シネコン運営会社のユナイテッド・エンターテインメント・ホールディングスを買収すると発表。ローソンが手がけているエンタテインメント事業との相乗効果を狙っていると見られる。13年7月、シネコンの「ワーナー・マイカル」がイオンに買収されたのに続く、流通系企業によるシネコン買収の動き。(2014年8月6日)

アニメ映画の制作を手がけるスタジオジブリが、制作部門をいったん解体する方針だと報道された。同社は、映画の国内歴代興行収入ランキング1位の『千と千尋の神隠し』をはじめ、『ハウルの動く城』(同5位)、『もののけ姫』(同6位)といったヒット作を生み出しており、今後の動向が注目されている。(2014年8月4日)

この業界とも深いつながりが <テレビ局などと「製作委員会方式」で製作>

テレビ
ドラマの映画化で協力。テレビ局が「製作委員会」の中心となることも多い

出版
小説やマンガの映画化や、映画のノベライズなどで協力する機会もある

スーパー
流通系企業がシネコンを買収し、集客の目玉にするケースが目立っている

 

この業界の指南役

日本総合研究所 副主任研究員 高津輝章氏

gyoukai_vol226_高津さん

一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程修了。事業戦略策定支援、事業性・市場性評価、グループ経営改革支援、財務機能強化支援などのコンサルティングを中心に活動。公認会計士。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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