景気に関係なく、人気企業はいつでも狭き門。大手志向ならば「無名の大手」を狙っては?
リーマン・ショックを乗り越え、日本経済はようやく回復基調に戻りつつあります。新卒採用数も増えつつある今、「自分たちが就活するころには人気企業にも入社しやすくなっているのではないか?」なんて声を、大学1・2年生から聞くことがあります。しかし、その考えは大きな間違いです。人気企業は、好不況にかかわらず、「いつだって狭き門」なのですから。
日経新聞に掲載されていた人気企業ランキング100社の新卒採用数を独自で調査したところ、就職氷河期の中でもドン底と言われた2002年で約1万3000人、直近で最も採用数が多かった2009年で約2万6000人でした。これだけ見ると、「1万人以上も増えているじゃないか!」と思われるかもしれません。
しかし一方で、大学卒業者の人数は年間約55万人にも上ります。たとえ好景気であっても、人気企業ランキング100社に入れる人は全体の5パーセント以下にすぎません。ちなみに、東京大学や京都大学、大阪大学といった「旧帝大」と、早稲田大学、慶應義塾大学の1学年の学生数は合わせて約4万人。つまり、数だけで考えると、人気企業100位までの企業に入るのは、旧帝大クラスに入学するよりも難しいのです。
そもそも、新卒採用数が「増えた」「減った」と一喜一憂するのはやめた方がいいですね。最近、企業の新卒採用計画が発表され、増加傾向にあることを喜ぶ声がありますが、この数字には高卒や短大卒、専門学校卒の採用数も含まれていますし、一般職・総合職もごちゃまぜ。「自分に当てはまる採用数」が増えているとは限りません。それに、従業員数1000人以上の大規模企業の平均採用数を見ると、1991~95年のバブル期平均で11万7000人、2001~05年の氷河期で10万6000人、そして2006~10年で13万5200人(グラフ参照)と、実は大きな変化はありません。いつの世も、一定水準を採用しており、景気が良くなったからと言って大幅に採用数を増やすというものではないのです。
それでも「どうしても大手がいい!」というならば、ぜひ「無名の大手」に注目してみてください。従業員数1000人以上の東証1部上場企業でも、人気企業ランキング100位に入っていない企業は山ほどあります。人気企業に比べて知名度が低いがゆえに、例えば2013年は、人気企業のほとんどが応募を締め切った5月の時点でもまだ募集をかけている大手企業が何社も見受けられました。
早めにそういう企業に目を向けて企業研究を行い、いいと思えた企業に早めに応募すれば、志望者がまだ少ない時期に先んじて応募することができるので「うちのことをよく調べているね!」と喜んでくれるケースも多いでしょう。でも、出遅れると「人気企業に落ちた人たち」がこういう隠れた大手に気づき始めるので、早めに動いておくことがお勧めですよ。
取材・文/伊藤理子 撮影/鈴木慶子