インターネット音楽配信編・2015年【業界トレンド】

スマートフォン普及が影響して市場が低迷。しかし、将来的にはCDの市場を奪う可能性も

インターネットを経由して楽曲を販売する「インターネット音楽配信業界」では、ここ数年、厳しい状況が続いている。一般社団法人日本レコード協会によれば、2014年における有料音楽配信の市場規模は437億円で、09年(910億円)の半分以下にまで縮小した。音楽ソフト(CD、カセット、音楽ビデオなど)の生産実績も、09年の3165億円から14年は2542億円へと下がっているが、インターネット音楽配信業界の落ち込みぶりはさらに際立つ格好だ。ただし、14年は対前年比4.9パーセント増と、縮小に歯止めがかかっている。

低迷の背景にあるのが、スマートフォンの普及である。日本のインターネット音楽配信業界は、従来型の携帯電話(フィーチャーフォン。いわゆる「ガラケー」のこと)での利用を前提に組み立てられていた。09年まで音楽配信市場が順調に拡大していたのも、「着うた」(楽曲を短く編集したものを、携帯電話の着信音にしたもの)などの売り上げ増が支えていたと言えるだろう。ところが、07年にiPhoneが発売されて以降、スマートフォンが急速に普及。その結果、かつての音楽配信の仕組みがうまく機能しなくなった。

YouTubeやニコニコ動画といった動画サイトも、この業界を圧迫している。スマートフォンを使えば、動画サイトを視聴し、無料で音楽を楽しむことが可能。そのため、有料の音楽サービスを使う必要を感じない人が増えているのだ。また、従来は音楽を好んで聴いていた若い世代が、スマートフォンやソーシャルゲームなどにお金や時間を費やし、音楽に使う分が減っているという事情も見逃せない。

しかし、今後はインターネット音楽配信の分野が再び成長する可能性もあるだろう。世界規模で見れば、CD販売からインターネット音楽配信への移行が着実に進んでいるからだ。国際レコード産業連盟(IFPI)によると、14年の世界のCD・レコードの市場は68.2億ドルだったのに対し、インターネット音楽配信の市場は68.5億ドル。インターネット音楽配信の市場規模が、初めてCD・レコードを抜いた。日本でも、アップルの「iTunes Store」(キーワード参照)に代表されるインターネット音楽配信サービスが利用者を増やしており、いずれはCDの売り上げを奪うかもしれない。

今後注目したいのが、「定額・聴き放題」を打ち出したサービスだ。すでに欧米では、「Spotify(スポティファイ)」や「ビーツ・ミュージック」などのサービスが拡大中。日本においても、「レコチョクBest」(レコチョク社が13年3月に開始)や「スマホでUSEN」(USEN社が13年12月に開始)などが、月額定額で音楽が聴き放題となる仕組みを導入している。なお、これらのサービスでは、「自分が聴きたい曲を1曲ずつ選べる」「ラジオのように、お勧め曲をまとめて聴ける」という2タイプの楽しみ方が用意されていることが多い。ユーザーは、自分の好みに応じてサービスを選ぶことが可能だ。

今後、定額・聴き放題サービスの競争は激しくなるだろう。いずれは、いくつかの有力サービスに集約されていく可能性が高いため、今後の動向をチェックしておこう。また、スマートフォンなどを通じた音楽配信とアーティスト情報の提供サービスを連携させるなど、音楽業界全般を盛り上げる取り組みにも注目したい。

インターネット音楽配信業界志望者が知っておきたいキーワード

iTunes Store
米アップル社が提供している、音楽などのコンテンツを配信するサービス。世界各国で大きなシェアを誇る。ただし、2014年は定額・聴き放題サービスの普及に押され、売り上げを落としたとも伝えられている。
ストリーミング
ダウンロード後に再生するのではなく、データを受信しながら同時に再生を行う方式。楽曲をダウンロードする場合は曲ごとに販売金額が設定されるのが一般的だが、最近ではストリーミングを用いて定額で聴き放題となるサービスが増えてきている。
サブスクリプション(subscription)
定期購読、予約金などの意味を持つ英単語。一般には、定額を支払って決められた期間の使用権を購入すること。月額定額で音楽が聴き放題となるサービスは、「サブスクリプション型音楽ストリーミングサービス」と呼ばれることもある。
ビットレート
単位時間当たりのデータ転送量。音楽を配信する際、ビットレートの値が大きいほど、一般に音質が良くなる。例えば、通常128kbps(キロビットパーセコンド。1秒に何千ビットのデータを送れるか表した単位)よりも192kbpsの方が高音質。ただし、ビットレートが高い分、データ転送量も大きくなるため、音楽再生に遅れなどが発生しやすくなったり、高額のデータ通信料が発生したりする場合もある。

このニュースだけは要チェック <定額制サービスの動向に注目しよう>

・ソニーが、自社で運営していた月額定額制音楽配信サービス「Music Unlimited」を終了。一方、世界最大級の音楽配信サービスであるSpotifyと提携して新サービス「PlayStation Music」を立ち上げ、ゲーム機やスマートフォンなどで音楽を楽しめる仕組みを提供すると発表している。(2015年3月30日)

・パイオニアとレコチョクが提携し、自動車向けの定額制音楽ストリーミングサービスを開始すると発表。パイオニア製のカーナビに、気分や好みに合わせて自動選曲する新機能を搭載する。ドライブに最適化された音楽体験を提供し、差別化を図る取り組みだ。(2015年5月8日)

この業界とも深いつながりが<スマホ業界の動向がビジネスに大きな影響>

携帯電話キャリア
携帯端末向けネットワークの高速化が、ストリーミングサービスの普及を後押し

テレビ
ドラマやアニメなどの主題歌をダウンロード販売するなど、緊密な関係がある

出版
デジタル書籍と音楽をセット販売するなど、協力関係が深まる可能性がある

この業界の指南役

日本総合研究所 主任研究員 吉田賢哉氏

yoshida_sama

東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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