経営強化を目指し、業界再編が活発。消費者ニーズの二極化に対応する動きも盛んだ
スーパーは、幅広い商品を扱う総合スーパー(GMS/General Merchandise Store)と、食品などの分野に特化した専門スーパーに大別される。現在の業界では、総合スーパーのイオンリテールやダイエー、食品スーパーのマックスバリュなどを傘下に収めるイオングループと、総合スーパーのイトーヨーカ堂やヨークベニマル、食品スーパーのヨークマートなどを抱えるセブン&アイ・ホールディングスが「2強」と呼ばれている。
日本チェーンストア協会の「チェーンストア販売概況」によると、2014年における会員企業の総販売額は13兆208億円。前年(12兆7224億円)より2.3パーセント増となった。ただし、既存店ベースで見ると、対前年比0.6パーセント減と決して伸びていない。また、ピーク時の1997年(16兆8636億円)に比べ、市場は約25パーセントも縮小している。
スーパーの主な販売品目は、食料品、衣料品と、日用品・医薬品・化粧品・家具・家電製品などの「住関品」に大別できる。このうち、食料品の分野は好調。97年に8兆687億円だった販売額は、2014年に8兆2265億円へと増えた。一方、ユニクロやしまむらといった衣料品専門チェーンに押され、1997年に4兆6171億円だった衣料品の販売額は2014年に1兆2214億円と落ち込んでいる。下に示したとおり、食料品の販売比率が上がっているのに対し、衣料品の比率は下がる一方だ。スーパーに求められる役割が変わっているため、各社には品ぞろえ・店舗作りなどの面で対応が不可欠となっている。
日本では人口減少が予想されており、市場規模は今後も縮小する見込み。コンビニやドラッグストアとの競争も激しさを増すだろう。こうした中、各社は事業規模を拡大し、経営の効率化や購買力(バイイングパワー)強化などを行って生き残りを目指している。14年に注目を集めたのは、イオンによる食品スーパー事業の再編(下記ニュース記事参照)。商品の共同調達によるコスト引き下げや、PB(プライベートブランド。小売業者が企画し、メーカーに生産を依頼した独自ブランドを指す)商品の共同開発を通じて競争力を高めるのが狙いだ。
これに対し、ユニーを傘下に持つユニーグループ・ホールディングスとコンビニチェーンのファミリーマートは、16年9月の経営統合に向けて交渉を始めたと発表。また、セブン&アイ・ホールディングスも岡山県を地盤とする天満屋ストアに出資するなど、地方部における地盤を築きつつある、さらに、スーパー業以外の小売業事業者との連携も加速している。大阪に地盤のあるイズミヤは、阪急百貨店などを展開するエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングの完全子会社となった。今後も、生き残りのため、スケールメリットを意識した再編が増えていきそうだ。
「高級スーパー」にも注目しておきたい。14年10月、コンビニチェーンのローソンが、高級食品スーパーの成城石井を買収した(下記ニュース記事参照)。関西圏では、高級スーパーの阪急オアシスが店舗数を増やし、中部地方ではヤマナカが食品スーパーの一部を高級スーパーへと業態転換している。各社は安価なPB商品を開発する一方で、富裕層向けの高級スーパーも整備。多様化するニーズの取り込みに腐心している。
衣料品の販売比率が下がり、食料品は上がっている
1997年における各分野の販売比率
食料品……48パーセント
衣料品……21パーセント
住関品……21パーセント
その他……10パーセント
2002年
食料品……56パーセント
衣料品……15パーセント
住関品……21パーセント
その他……8パーセント
2007年
食料品……61パーセント
衣料品……12パーセント
住関品……20パーセント
その他……7パーセント
2012年
食料品……62パーセント
衣料品……11パーセント
住関品……21パーセント
その他……6パーセント
2014年
食料品……64パーセント
衣料品……9パーセント
住関品……21パーセント
その他……6パーセント
※日本チェーンストア協会のデータより。スーパーでは、衣料品の販売比率が下がり、食料品の比率が高まっていることがよくわかる。
このニュースだけは要チェック <業界再編の動きは引き続き活発だ>
・イオンが資本参加しているマルエツとカスミ、そしてイオンの完全子会社であるマックスバリュ関東が共同持株会社を設立し、経営統合。拡大により、経営基盤を強化するのが狙い。2020年には売上高1兆円(現在における3社合計の約1.5倍)、1000店舗(現在の約2倍)体制を目指す。(2015年3月2日)
・ローソンが成城石井を買収すると発表。成城石井は、首都圏・中部・近畿地方の都市部に約120店舗を展開している高級スーパーで、富裕層需要を取り込んで好業績が続いている。消費者が「低価格志向」と「高級志向」に二極化する現状に対応した動きといえるだろう。(2014年9月30日)
この業界とも深いつながりが <総合商社と資本関係を持つスーパーは多い>
総合商社
大手スーパーは、総合商社と資本面で提携関係にあるケースが多い
アパレル
大手アパレルチェーンが、衣料品部門の売り上げを奪いつつある
ドラッグストア
スーパー内のテナントとして協力するかたわら、日用品部門では競合
この業界の指南役
日本総合研究所 マネージャー 田中靖記氏
大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修修了。大阪市立大学工学研究科客員研究員。専門は、未来洞察・新規事業・マーケティング・海外市場進出戦略策定。鉄道・住宅・エネルギーなど、主に社会インフラ関連業界を担当。2015年度より未来・デザインラボ所属。
取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか