ドラッグストア編・2014年【業界トレンド】

食料品・PBに注力して利便性を高める動きが活発。ネット販売解禁の影響にも注目を

日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)がまとめた「2012年度日本のドラッグストア実態調査」によると、12年度におけるドラッグストアの市場規模は5兆9408億円。同調査が始まって以来、市場規模は12年連続で拡大を遂げている。00年度(2兆6628億円)に比べると市場規模は2倍以上となり、順調に成長が続いている業界だと言えるだろう。ただし、08年度の伸び率は5.4パーセント増、09年度は4.0パーセント増、10年度は3.4パーセント増、11年度は3.1パーセント増だったのに対し、12年度は2.4パーセント増にとどまり、成長は鈍化している。

ドラッグストアが扱う医薬品は、医療機関などで使われたり薬局で処方されたりする「医療用医薬品」ではなく、市販薬、OTC薬(Over The Counterの略。カウンター越しに販売される薬という意味)とも呼ばれる「一般用医薬品」が中心。これは、下表のように「第一類医薬品」「第二類医薬品」「第三類医薬品」の3つに分けられる。

09年6月に薬事法が改正されたことで、登録販売員がいれば第二類医薬品と第三類医薬品の販売が可能となった。人材をそろえるハードルが下がったため、コンビニや家電量販店といった他業種が活発に参入を行っている。さらに13年1月には、ネット通販2社が一般用医薬品のネット販売を求めていた裁判で通販企業側の訴えが認められ、一般用医薬品のインターネット販売が事実上解禁された。これを受けてネット専業のドラッグストアが勢力を伸ばしているし、大手ネットスーパー、総合ECサイトも医薬品の取り扱いをスタート。そこでドラッグストア側も、自社でネット販売を始めるなど対応を進めている。

店舗の利便性を高め、来店客を伸ばそうとする取り組みも活発だ。各社は医薬品や化粧品、日用雑貨といった主力商品のほかに、食料品分野などを強化することで売り上げアップを図ろうとしている。例えばサンドラッグは、弁当・総菜・コーヒーなども提供する新型店舗「サンドラッグCVS」を展開。ドラッグストアがコンビニ型の店舗を手がける事例として注目しておきたい。また、プライベートブランド(PB)商品を重視している企業もある。PB「M’s one」を展開するツルハホールディングスは、その代表格。多彩なPB商品を生み出しており、総売り上げに占める割合も高い。業界最大手のマツモトキヨシも、PB「MKカスタマー」に機能性食品や美容食品を数多く追加して売り上げアップを目指している。PB商品は利益率が比較的高く、他社との差別化も期待できることから、力を入れる企業は今後も増えそうだ。

こうして食料品・PBに力を入れることで、ドラッグストアの品ぞろえは、コンビニのそれに近づいている。一方、一時盛んだった「ドラッグストアがコンビニと協力して共同店舗を開設」という動きは、現在ではややトーンダウン。今後は、ドラッグストアとコンビニが直接の競合となる傾向が強まるかもしれない。

薬学部が4年制から6年制に変わったことも、ドラッグストア業界にとって大きなトピックスだ。修学年数が2年間伸びたことが影響し、09年には1万1301人だった薬剤師国家試験合格者は、10年に1455人へと激減。その結果、薬剤師が「売り手市場」となっているのだ。各社は給与水準の引き上げなどで対応しているが、しばらくは薬剤師を確保することが難しい状況が続きそうだ。

押さえておこう <一般用医薬品は、リスクの大きさごとに3種類に分かれる>

第一類医薬品
特にリスクが高い医薬品。一般用医薬品としての使用経験が少ないなど、安全性上特に注意を要する成分を含むもの。薬剤師のみが販売できる。
第二類医薬品
リスクが比較的高い医薬品。まれに入院相当以上の健康被害が生じる危険性がある成分を含むもの。薬剤師だけでなく、登録販売員も販売できる。
第三類医薬品
リスクが比較的低い医薬品。日常生活に支障を来す程度ではないが、身体の変調・不調が起こるおそれがある成分を含むもの。薬剤師だけでなく、登録販売員も販売できる。

※第一類から第三類まですべての一般用医薬品がネットで販売できるようになったが、療用医薬品から一般用医薬品に転用されたばかりの「スイッチ直後品目」については、市販後3年間はネット販売が禁止されている(14年2月時点)。ただし、法改正などが行われる可能性もあるため、今後の成り行きに注意が必要だ。

このニュースだけは要チェック <M&Aで規模を拡大する動きは今後も起こりうる>

・ツルハホールディングスが、広島県を地盤とするドラッグストアのハーティウォンツを買収すると発表。これにより、同社の売上高はマツモトキヨシホールディングス、サンドラッグに次ぐ業界3位となる。規模拡大による経営の効率化、購買力アップ、経営基盤の強化などが狙いとみられる。(2013年11月21日)

・アマゾンジャパンが、傘下の大手ECサイト「Amazon.co.jp」で一般用医薬品の販売を開始した。イオンネットスーパー、ビックカメラなども医薬品のネット販売を手がけており、既存のドラッグストアにどの程度の影響を与えるのか注目されている。(2013年9月24日)

この業界とも深いつながりが <コンビニとのライバル関係が強くなるか?>

コンビニ
共同で店舗を開発する事例もある一方、顧客を奪い合うケースも増えている

医薬品メーカー
OTC薬を開発・製造する医薬品メーカーとは、緊密なつながりがある

スーパー
イオン傘下のハピコムのように、スーパーと資本関係のあるドラッグストアもある

この業界の指南役

日本総合研究所 副主任研究員 高津輝章氏

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一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程修了。事業戦略策定支援、事業性・市場性評価、グループ経営改革支援、財務機能強化支援などのコンサルティングを中心に活動。公認会計士。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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