化学編

付加価値の低い「川上」からの脱却を目指す。シェールガス関連のニュースは要チェック

化学業界は、原油や天然ガスを精製してエチレン・ナフサ・ベンゼンといった基礎製品を生み出す「川上」、基礎製品を原料としてポリエチレンやポリスチレンなどのプラスチック、合成繊維や合成ゴムなどの中間製品などを作る「川中」、中間製品から最終製品を生み出す「川下」という3段階に大別される。経済産業省が発表した「平成25年工業統計表(産業編)」によれば、2013年における化学業界の「従業者10人以上事業所の製造品出荷額」は27兆1987億円(対前年比5.2パーセント増)。これは、製造業全体の9.5パーセントを占めており、化学業界は日本にとって基幹産業の一つといえる。

 

「川上」に該当するのは、三菱ケミカルホールディングス(14年度売上高3兆6563億円)、住友化学(同2兆3767億円)、旭化成(同1兆9864億円)、三井化学(同1兆5501億円)など。これらの企業は、「川中」や「川下」の製品も手がけているため、総合化学メーカーと呼ばれることもある。また、「川中」のメーカーの代表格としては、半導体に使われる「シリコンウェハー」などを生産する信越化学工業、化学繊維メーカーの東レや帝人、合成ゴムが主力のJSRなどが挙げられる。そして「川下」には、化粧品やトイレタリー、写真用フィルム、ガラス、電子部品、自動車タイヤなど、幅広い分野のメーカーがある。

 

このところ厳しい状況におかれているのが、「川上」に位置するメーカーだ。エチレンなどの基礎製品は、どの企業が作っても、品質面でさほどの差は出ない。そのため、より大規模なプラントを作り、生産効率を高めてコストを下げることが勝ち残りへの近道だ。ところがここ数年、中国や中東で巨大プラントが次々に完成。相対的に規模の小さい日本企業は劣勢に立たされている。さらに、大需要地(=中国)や原料生産国(=中東)から遠く、輸送コスト面でも不利だ。そこで各社は、日本国内の需要に合わせ、「川上」の事業を再編・縮小しようとしている。例えば、15年5月、住友化学が千葉のエチレンプラントの操業を停止。また、旭化成と三菱ケミカルホールディングスは16年4月に新会社「三菱化学旭化成エチレン」を設立し、岡山県水島地区にある旭化成のエチレンプラントを廃棄して三菱のプラントに集約する予定だ。

 

一方、「川中」や「川下」の事業を強化し、高付加価値な製品の開発に注力する動きが活発。特に、太陽電池、リチウムイオン電池、高度な水処理に使われるイオン交換樹脂などのハイテク素材分野では、日本メーカーが大きな存在感を発揮している。また、近年ではヘルスケア分野での取り組み強化も盛んだ。医療機器などで用いられる化学素材を提供するほか、医薬品の原材料や、医薬品や化粧品の最終製品を手がけるケースが増えている。こうした流れを受け、事業拡大を狙った企業買収も多い(下記ニュース参照)。今後も、総合化学メーカーの多くは、「川上から川中・川下へ」というシフトを進めていくのではないか。

 

地中深くの頁岩層(けつがんそう。別名シェール層)から採掘される「シェールガス」にも注目しておきたい。シェールガスの供給が本格化してエチレンの価格が安くなれば、化学各社の経営にはプラスだ。しかし、シェールガスが盛んに産出されている米国で、原材料費やエネルギー費の下落を背景に、現地の化学メーカーが力を増して強力なライバルと化す危険性もあるのだ。シェールガスの生産量や日本への輸入量の推移、米国企業の動きといった関連ニュースに注目しておきたい。

 

化学業界志望者が知っておきたいキーワード

エチレン
C2H4の化学式で表される物質で、さまざまな化学製品の基礎となる存在。日本では、原油を精製してできたナフサからエチレンを作る場合がほとんどだが、米国では天然ガス中のエタンからエチレンを作るケースが増えている。
エチレンプラント
その名の通りエチレンを生産するプラント(生産設備)のことで、石油コンビナートの中核的な施設とされる。また、エチレンを精製する過程でプロピレン、ブタンなども得られるため、周囲には中間製品などの生産工場が併設されることが多い。
イオン交換樹脂
イオン成分の交換を行うことができる樹脂。水溶液の処理などに用いると、ほかの手段に比べて高精度なイオン成分の分離が可能になる。飲料水の精製や、食品・医薬品の製造などに使われている。
触媒
特定の化学反応を早める物質で、自身は反応の前後でも変化しない。化学製品を効率よく生産するためにさまざまな触媒が開発され、化学プラントなどでも用いられている。

このニュースだけは要チェック <川中、川下を目指し事業買収を行うケースが増加>

・積水化学工業が、リチウムイオン電池の開発・製造・販売を行うエナックス(東京都)の株式を取得して買収。両社は10年から大容量フィルム型リチウムイオン電池を共同開発してきたが、買収によって開発をさらに継続的、かつ安定的なものにする狙いとみられる。(2015年6月23日)

 

・三井化学が、睡眠時無呼吸症候群向けのマウスピースなどを製造・販売する医療機器メーカーであるレスパイヤ・メディカル(米国)を買収。今後の成長が期待されるヘルスケア分野で売り上げを高めることで、新たな収益源確保を目指している。(2015年3月19日)

この業界とも深いつながりが<ヘルスケア分野との関係が強化されるか?>

建設
プラント建設には、エンジニアリング会社やゼネコンとの協力が不可欠

病院・診療所
化学メーカーの中には、医療機器や医薬品分野に進出するところも

石油
原油や天然ガスといった原料がなければ、化学製品は作れない

 

この業界の指南役

日本総合研究所 主任研究員 吉田賢哉氏

yoshida_sama

東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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