石油編・2013年【業界トレンド】

コスト削減と海外進出で、各社は状況の打開を目指す。業界再編にも注目が必要

石油業界は「川上」と「川下」に大別できる。「川上」とは原油や天然ガスの開発・生産を行う企業で、国際石油開発帝石(インペックス)などが該当する。また、総合商社などは石油開発事業に出資して資源権益を確保しており、「川上」の一角に食い込んでいると言えるだろう。一方の「川下」は、製油・元売り・販売などを担当。JX日鉱日石エネルギー、昭和シェル石油、出光興産、コスモ石油などが代表格だ。

2000年代 半ば過ぎまで、国内の石油需要(ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、灯油、軽油、重油の合計)は年間2億キロリットル以上で推移。ピーク時の99年には、2億4597億キロリットルに達した。しかし、「脱石油政策」によって石油火力発電から原子力・天然ガス火力発電などへの切り替えが行われ、地球温暖化対策のために省エネが進められたことで、2000年以降は石油需要が減少。09年には2億キロリットルの大台を割り込んだ。2012年は1億9982万キロリットル で前年よりわずかに増えたが、今後は人口減少も逆風となってさらに石油需要は減ると見込まれている。資源エネルギー庁では、30年にかけて現在より約6000万キロリットル、30パーセント程度の減少を予測しており、石油業界はこれまで以上の環境変化に直面することになる。

「シェールガス革命」(キーワード参照)も、石油業界に直接・間接的に影響を与えている。採掘が盛んな米国では、15年ごろから大型プラントの稼働が相次いで開始される予定だ。これによってエチレンなどの化学原料が豊富に供給され、石油需要はさらに小さくなることが予想される。また、シェールガスと同時に生産されるプロパンが米国から欧州市場に流入し、その余波で、欧州で余剰となった石油製品がアジアに流入しているのも悩みの種だ。

こうした状況を打開するため、石油各社は攻守両面から対応しようとしている。守りの戦略として代表的なものは、製油所の閉鎖・転用によるコスト削減だ。JX日鉱日石エネルギーは室蘭製油所での原油処理を14年3月末で停止し、石油化学工場として活用する方針を発表。出光興産も、徳山製油所の14年3月停止を発表した。昭和シェル石油、コスモ石油などでも製油所の閉鎖を実施している。09年に施行された「エネルギー供給構造高度化法」に対応し、供給能力を適正化する必要もあるため、今後も施設のスリム化が進みそうだ。

攻めの戦略としては、「他業種への参入」と「海外展開の加速」が挙げられる。他業種参入としては、石油と同様に代表的なエネルギー源であるガス事業への取り組みが加速。JX日鉱日石エネルギーと東燃ゼネラル石油は従来からガス事業を展開しているし、出光興産も天然ガス事業に乗り出す方針を表明している。また、海外展開プロジェクトとして注目されるのが、化学会社や海外企業と協力して製油所・石油化学コンプレックスを建設する出光興産の「ニソンプロジェクト」(ニュース記事参照)。このような海外展開の成否が、石油各社の業績を今まで以上に左右するようになるだろう。

業界再編についても引きつづきチェックが必要だ。10年4月、新日本石油と新日鉱ホールディングスが経営統合してJXホールディングスが誕生。12年1月にはエクソンモービルが東燃ゼネラルへの出資比率引き下げを実施した。今後も、経営の効率化を目指して合併、再編が行われる可能性は十分にあるだろう。

押さえておこう <石油業界志望者が知っておきたいキーワード>

WTI原油
WTIとはWest Texas Intermediateの略で、米テキサス州の沿岸部で産出される原油のこと。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)での価格は、世界の原油価格の有力な指標として広く認知されている。
可採埋蔵量
地下に埋まっている原油のうち。経済的・技術的に生産可能なもの。採掘技術の進化、新しい油田の発見、原油価格高騰による採算性向上などで増加することがある。現在、世界全体で見た可採年数(可採埋蔵量を年間生産量で割ったもの)は60年程度と言われる。
シェールガス革命
シェールガスとは、地中深くの頁岩層(けつがんそう。別名シェール層)から採掘される天然ガスのこと。新エネルギーとして大いに関心が集まっている。シェールガス向けの技術を応用し、シェール層から「シェールオイル」を取り出すことも実用化されつつある。
石油メジャー
石油業界において「川上」から「川下」までの全段階を手がけている、世界的な巨大企業のこと。エクソンモービル、ロイヤル・ダッチ・シェル、BPなどが当てはまる。

このニュースだけは要チェック <業界再編に関わる動きに注目しよう>

・石油元売り4位の東燃ゼネラル石油が、同7位の三井石油の買収を検討していると報道された。販売網の拡大と、設備の効率的な運用が目的とされている。実現すれば、売上高の合計は3兆円を超え、業界3位のコスモ石油に並ぶ規模となる見込みだ。(2013年9月19日)

・出光興産が三井化学、クウェート国際石油、ペトロベトナムと共同で、ベトナム北部のニソンにおいて製油所・石油化学工場の複合施設を建設すると発表。13年夏に建設工事が始まり、16年の完工・17年の商業運転開始を目指している。(2013年1月15日)

この業界とも深いつながりが <総合商社とのつながりは強い>

総合商社
石油の権益確保・採掘などで深い関係。合弁企業を設立するケースもある

電力・ガス
国内で使われる石油のうち、約1割が電力用途。震災後は石油の消費量が増加

化学
化学品の生産には、ナフサ・エチレン・ベンゼンといった石油由来の原料が不可欠

この業界の指南役

日本総合研究所 マネージャー 田中靖記氏

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大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修修了。専門は、新規事業・マーケティング・海外市場進出戦略策定。鉄道・住宅・エネルギー等、主に社会インフラ関連業界を担当。また、インド・ASEAN市場開拓案件を数多く手がけている。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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