建設編・2014年【業界トレンド】

人手不足などの課題はあるが、建設需要の急増で各社の業績は好転している

建設会社の代表格は、連結売上高が1兆円以上を超える「大手ゼネコン(スーパーゼネコン)」。大林組、大成建設、鹿島建設、清水建設、竹中工務店の5社が該当する。それに続くのが、長谷工コーポレーション、戸田建設といった連結売上高2000億円~1兆円規模の「準大手ゼネコン」だ。これらの企業は、設計・研究開発から施工までの幅広い分野を手がけるため、ゼネラル(=総合)・コンストラクター、通称「ゼネコン」と呼ばれている。さらに、五洋建設など海洋土木工事に強い「マリコン」(マリン・コンストラクターの略)、NIPPOなど道路舗装に強い企業、基礎工事や建設設計など特定部門だけを担当する企業などもある。

国土交通省の「平成26年度建設投資見通し」によれば、2013年度における日本国内の建設投資額は48.7兆円となる見込み。これは、1992年度(84.0兆円)の6割以下に過ぎない。政府が財政再建のために公共事業費を大幅削減したことと、不景気によって民間の建設需要が低迷したことが足を引っ張り、建設業界は長年にわたって縮小傾向が続いていた。しかし、2011年度以降は3年連続で市場が拡大中(下表参照)。東日本大震災の復興需要や、景気回復による民間設備投資の増加によって、建設投資は大きく伸びている。さらに、20年の東京オリンピック・パラリンピック開催決定で、首都圏を中心にインフラ整備が進められると見込まれており、今後もしばらくは好景気が続きそうだ。

強い追い風が吹く建設業界だが、大きな課題もある。1つ目の課題は、資材価格の高騰だ。震災復興事業、オリンピック関連事業など、各地で大規模な建設プロジェクトが進行中。また、政府は「国土強靭化」「地方創生」の方針を掲げ、長期間にわたって削減されてきた公共事業を再拡大している。そのため、各地で建設資材の需要が高まり、コストを押し上げているのだ。さらに、12年末から始まった円安傾向も、輸入材の仕入れ値上昇をもたらしている。

2つ目の課題は、かつてないほどの人手不足と、それによる人件費の上昇だ。建設投資額が縮小した1990年代以降、各社は新卒採用を抑制。さらに、団塊世代(第1次ベビーブームの47~49年に生まれた人々)が、2010年前後に定年を迎えた。その結果、1997年時点で685万人だった建設業の就業者数は、2013年時点で499万人に減少。とりわけ、高度な知識・経験を持つ技能労働者や技術者、施工管理技士の不足は深刻で、各社は現場の技術力維持に頭を悩ませている。そのため、新卒採用はもちろん、中途採用に積極的な企業は増える傾向だ。ただし、復興需要やオリンピック特需が一巡した後を見越して、採用増に慎重な企業もある。また、人件費の高騰に対応し、契約後に労務単価が上昇した場合に地方自治体などの発注者に請負代金の変更を要求できる「インフレスライド」を採用するケースも増えている。

こうした中、キーワードになりそうなのが「女性の活用」である。14年9月、大林組で女性の所長が誕生(下記ニュース参照)。また、大成建設も同社として初めて女性を部長に起用するなど、女性の積極登用を打ち出す企業が増えている。現状、建設業界では女性管理職の比率も、女性労働者の育児休暇取得率も低い。これらを改善し、女性でも働きやすい環境を整備できるかどうか、業界全体の取り組みが問われている。

海外進出も、大手建設会社にとって引き続き重要な課題。リーマン・ショック後に急減した海外受注額は、10年以降、アジアを中心に増加に転じた。13年度の海外工事受注は、過去3番目の水準となる1.6兆円台となっている。今後は単に工事を請け負うだけでなく、建設プロジェクトの立案を支援するなど、幅広いサービスの提供が鍵になりそうだ。

国内建設投資額は、2011年度以降上昇している

2009年度建設投資額
43.0兆円(政府投資17.9兆円、民間投資25.0兆円)
2010年度建設投資額
41.9兆円(政府投資18.0兆円、民間投資23.9兆円)
2011年度建設投資額
43.3兆円(政府投資18.6兆円、民間投資24.7兆円)
2012年度建設投資額
44.2兆円(政府投資18.7兆円、民間投資25.5兆円)
2013年度建設投資額
48.7兆円(政府投資20.6兆円、民間投資28.1兆円)

※国土交通省の「建設投資見通し」より。2011年度までは実績値、12年度、13年度は見込み値。建設市場は10年度に底を打ち、上昇に転じたことが見て取れる。

このニュースだけは要チェック <女性の活用を目指すニュースが注目を集める>

・大林組が、地下鉄南北線・溜池山王駅関連プロジェクトの所長職に、1994年入社、40代の女性を抜擢したと報道された。同社には約600人の所長がいるが、女性が起用されたのは初めて。また、大手ゼネコンとしても、女性所長の誕生は初めてのケースだという。(2014年9月5日)

・鹿島建設が、工場や研究所の立案支援サービスを本格的に海外展開すると報道。シンガポールに専門の事務所を開設し、顧客企業と共に生産設備の選定や工場レイアウトの策定などを行う。工事を請け負うだけでなく、プロジェクト支援サービスに乗り出す試みとして注目したい。(2014年9月5日)

この業界とも深いつながりが <鉄鋼価格の上昇はコスト増に直結>

鉄鋼
ビルやマンション、橋などを建設するためには、大量の鉄鋼が必要となる

マンションディベロッパー
マンションの建設、大都市の再開発事業などで協力する機会が多い

総合商社
建設会社がアジアなどに進出する際に、総合商社の協力を得るケースもある

この業界の指南役

日本総合研究所 マネージャー 田中靖記氏

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大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修修了。専門は、新規事業、マーケティング、海外市場進出戦略策定。鉄道・住宅・エネルギーなど、社会インフラ関連業界を担当。環インド洋諸国におけるコンサルティング・調査案件を中心に手がける。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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