ガラス編・2016年【業界トレンド】

グローバル市場で「協調と競争」が活発に。高付加価値ガラスの研究開発が成長のカギ

代表的な国内ガラスメーカーには、幅広い種類のガラスを手がける旭硝子、建築用・自動車用ガラスに強い日本板硝子、カメラやメガネなど光学レンズ用ガラスの分野で存在感を誇るHOYA、ディスプレー用ガラスが主力の日本電気硝子、建築用・自動車用ガラスがメインのセントラル硝子などがある。

ガラス業界ではグローバル化が進んでおり、国内大手企業の中には海外売上比率が半分を超えているところも珍しくない。また、旭硝子が世界でもトップレベルの売上高を誇るなど、グローバル市場における日本企業の存在感が大きい業界でもある。こうした中、コーニング(アメリカ)、サンゴバン(フランス)といった海外有力企業と、日本企業の競争は激化。一方で、サンゴバンがセントラル硝子と自動車向けガラス分野で、日本電気硝子と有機EL照明用部材の分野で提携を行うなど、ある分野では提携を結び別分野では争う「協調と競争」の動きも見られる。

ガラスの用途として最も多いのは、ビルや住宅などに用いられる建築用ガラスだ。また、自動車用ガラスや、液晶テレビなどに使われるディスプレー用ガラスも、売り上げの中でかなりの割合を占める。そして、デジタルカメラや医療器具に使われる光学レンズ用ガラス、食器や装飾品といった工芸品向けのガラスにも一定のニーズがある。

建築用ガラス分野の国内需要は、東日本大震災の復興需要や東京オリンピック関連の建設需要などで短期的には期待ができそう。しかし、今後は人口減少が進むため、中長期的には先細りが懸念される。一方、海外市場では各社が生産拠点の閉鎖などの構造改革を進め、欧州などで起きていた供給過多傾向が解消。一時に比べれば市場環境は安定し、大手企業の決算は改善傾向だ(下記データ参照)。ただし、中国の景気の先行き不安など世界経済の動向には不透明さがあり、楽観視はできない。

ディスプレー用ガラス分野は、スマートフォンやタブレット端末の急速な普及に伴い、順調に拡大を続けてきた。しかし、これらの商品の需要が一段落したことから、ディスプレー用ガラスの成長も鈍化。価格も下落傾向にある。そこで各社は技術力アップに努め、競争力確保に向けた取り組みを進めているところだ。

中でも「高付加価値ガラス」の開発が、各社にとって重要な課題だ。断熱性が高く冷房や暖房の効果を高めて省エネを実現するガラスや、紫外線(UV)をカットするガラスなどの開発に注目が集まっている。また、透明度が高くて発電効率アップに役立つ太陽光発電パネル用ガラス、割れづらくて防犯効果の高い住宅用ガラスなども有望株。スマートフォンの使い勝手を損なわないまま、割れたり傷ついたりしにくいガラスの開発も進められている。さらに最近では、ガラスにディスプレー機能を持たせる商品(下記ニュース参照)が発表されるといった動きもあった。

付加価値の低い商品はどうしても価格競争に陥りやすく、メーカーにとって生産するメリットが小さい。そこで、技術力を高めて付加価値の高い製品を作ろうとする取り組みは、今後も続くだろう。

大手各社の業績は拡大傾向

旭硝子
2013年12月期 売上高1兆3200億円
2014年12月期 売上高1兆3483億円(2.1パーセント増)

日本板硝子
2014年3月期 売上高6060億円
2015年3月期 売上高6267億円(3.4パーセント増)

HOYA
2014年3月期 売上高4275億円
2015年3月期 売上高4899億円(14.6パーセント増)

セントラル硝子
2014年3月期 売上高1915億円
2015年3月期 売上高1990億円(3.9パーセント増)

※各社が公表している資料から独自に作成。なお、日本電気硝子は決算期変更があったため掲載していない。

このニュースだけは要チェック <高付加価値ガラスの開発が進む>

・旭硝子が、鏡とディスプレーを融合した製品「インフォベール ミラー」の販売を開始。映像をオフにした状態では鏡として使え、オンにすると好きな映像を流すことができる製品だ。商業施設や住宅向けのインテリアとして売り出される。(2015年6月3日)

・日本板硝子が、2層構造の高断熱複層ガラス「ペアマルチレイボーグE4(仮称)」を発売すると発表。ガラスに特殊なコーティングを施すことで、従来の3層構造並みの断熱性能を持たせることに成功した。高性能と薄型・軽量化を両立した新製品だ。(2015年11月6日)

この業界とも深いつながりが<建設、自動車、住宅業界などが重要な顧客>

建設
ASEANや中南米など新興国では、建築用ガラスの需要が期待できそう

自動車メーカー
紫外線カットや防音性能の高いガラスは自動車の乗り心地を大きく左右する

住宅メーカー
断熱性の高いガラスや、割れづらく防犯に役立つガラスのニーズが増加

この業界の指南役

日本総合研究所 シニアマネジャー 吉田賢哉氏

yoshida_sama

東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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