カード・信販・消費者金融編・2017年【業界トレンド】

利用者が増えてクレジットカード業界は好調。消費者金融業界でも需要が回復傾向に

この業界は、「販売信用」に関わる分野と、「消費者金融」の分野に大別できる。販売信用とは、商品やサービスを購入した際に後払い・分割払いのサービスを提供することで、手数料収入・金利収入を得る事業のこと。代表格が、三井住友カード、三菱UFJニコス、クレディセゾンなどのクレジットカード会社や、オリエントコーポレーション、ジャックスなどの信販会社だ。

この分野では、クレジットカード決済の取扱高が増加傾向だ。経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、2015年度の取扱高(キャッシング除く)は45兆6270億円で、前年度に比べて6.6パーセント増加した。16年度に入ってからも、月ごとの取扱高は前年より5~7パーセント増えており、高い成長率で推移している。背景としては、電気代やガス代などの公共料金に加えて、家賃などもクレジットカードで支払えるようになってきていること。訪日外国人の急増に伴い、外国人のクレジットカード利用額が増えていること。そして、ポイント獲得を目的に、できる限りクレジットカードを使おうとする消費者の増加などが挙げられる。

Square(米スクエア)や楽天ペイ(楽天)、Coiney(コイニー)といったモバイル決済サービスの普及も、クレジットカード会社にとっては追い風だ。これらのサービスは、簡易なカードリーダーと、スマートフォンやタブレットPCさえあれば利用可能。設備投資の予算に限りがある企業・店舗などで導入が進んでおり、クレジットカードの利用増をもたらしている。

一方、消費者金融は貸金業者が個人にお金を貸し付けて金利収入を得る事業。アコム、SMBCコンシューマーファイナンス、アイフルなどが大手の消費者金融会社として知られる。なお、消費者金融の中には専門の貸金業者とは別に、銀行が融資事業の一環で手がけるケースも多い。

金融庁の「貸金業関係資料集」によると、06年3月末時点で約21兆円に達していた消費者向貸付残高(貸金業者の業務報告書ベース)は、16年3月末には約6兆円まで減った。いわゆる「グレーゾーン金利」(「利息制限法」で定められた上限金利は超えているが、「出資法」で定められた上限金利には達しない金利のこと)を認めない判決が下され、利用者から消費者金融会社への過払い請求が相次いだこと。そして、10年6月に完全施行した改正貸金業法で、貸出総額を利用者の年収の3分の1までに制限するよう義務付けられたことなどが影響し、貸付残高は減少の一途をたどってきた。しかし、景気回復で消費意欲が戻って資金需要が回復してきたことや、メガバンク系のカードローンが伸びていることなどから、この1、2年、消費者金融市場全体はプラスに転じている。

このところの消費者金融業界では、利用の手軽さをアピールする取り組みが盛ん。Webで申し込みから借り入れまでできてしまうサービスは、その典型例だ。中には、現金引き出し時にATMの利用すら不要で、かつ手数料なしで手元のプリペイドカードに借入金が自動入金されるサービスも出てきている。

カード・信販・消費者金融業界での新たな取り組み

ATMを使わない消費者金融
2016年9月、三井住友カードと、消費者金融「プロミス」を運営するSMBCコンシューマーファイナンスが、ATMを使わずにお金が借りられるサービスを提供開始。スマートフォンサイトなどで借り入れの手続きをすると、プリペイドカードに自動的に入金される仕組みで、ATMに足を運んでお金を引き出す手間が省ける。

クレジットカードのポイントを運用
16年12月、クレディセゾンが、同社のクレジットカードで買い物をした際に得られる「永久不滅ポイント」を運用できるサービスを開始。投資信託と連動して増減したポイントは、ギフトカードなど多彩な商品と交換できる。投資初心者に、投資を身近に感じてもらうのが狙いとみられる。

人工知能で融資可能額を算出
16年6月、新生銀行は傘下の消費者金融「レイク」などで、人工知能を使って融資可能額を算出する取り組みをスタート。銀行口座の入出金履歴や、利用者の性別、服装、申し込み書類の筆跡といった「ビッグデータ」を人工知能で分析し、適切な融資可能額を算出する。このようなIT活用事例は、今後も増えそう。

このニュースだけは要チェック <アップルペイなどの新サービスは大きな商機>

・アップルのスマートフォン「iPhone」などを使った決済サービス「アップルペイ」が、日本でもサービス開始。クレジットカード会社の中にはアップルペイ開始を利用者拡大のチャンスと見る企業も多く、各社が新規利用者向けのキャンペーンを行っている。(2016年10月25日)

・経済産業省が、クレジットカード会社が管理している顧客情報の共通規格を策定。各社の情報を同じ切り口で分析しやすくなるため、ビッグデータを活用したマーケティング戦略が立てやすくなるのではと期待されている。(2016年12月26日)

この業界とも深いつながりが <メガバンクとの関係は緊密>

メガバンク
クレジットカード・消費者金融会社の中にはメガバンク傘下の企業も多い

eコマース
他地域の信用金庫・信用組合と協力し、観光客増加の支援をすることもある

外食
小規模な店舗でもクレジットカードの利用が増えていることが追い風に

この業界の指南役

日本総合研究所 シニアマネジャー
高津輝章氏

gyoukai_vol226_高津さん

一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程修了。事業戦略策定支援、事業性・市場性評価、グループ経営改革支援、財務機能強化支援などのコンサルティングを中心に活動。公認会計士。

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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