企業規模にこだわらずに就活をしたいと思っていても、探し方や選び方がわからないという学生も多いのではないでしょうか?中小企業は有名企業や大企業と比べると基準がわからず、応募しにくいと感じている人もいるかもしれません。
そこで、自分に合った優良中小企業を探して選ぶための5ステップと、中小企業を選ぶときの7つの基準を解説。ケース別にどの基準を重視すると良いのか、考え方の例も紹介します。中小企業と大企業との年収の違いなども含めて、リクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザーが後悔しないための注意点をプロの立場からアドバイスします。
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目次
そもそも中小企業とは
「中小企業」という分類を知ってはいても、その具体的な定義までは知らないという人も少なくありません。その企業数の多さと雇用数の多さから、日本を支えていると言っても過言ではない中小企業について、まずは基本的な情報を紹介します。
中小企業は企業の約99%を占め、全労働者の約70%を雇用している
独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が「平成28年経済センサス-活動調査結果」(総務省統計局)を基に算出したデータによると、日本にある企業の約99%は中小企業。さらに、日本の従業者の約70%は中小企業で雇用されている計算になるとのことです。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「日本を支える中小企業」
中小企業の定義
なお、中小企業基本法では中小企業者の範囲を、業種ごとに以下のように定めています。
業種分類 | 下記のいずれかを満たすこと | |
資本金の額 または出資の総額 |
常時使用する従業員の数 | |
製造業、建設業、運輸業、その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5000万円以下 | 50人以下 |
自分に合った優良中小企業の探し方・選び方5ステップ
まず前提として、「優良企業」の定義は人によってさまざまです。同じ環境、同じ仕事内容、同じ福利厚生や待遇であっても、それを「働きやすい!」と感じる人もいれば、「自分には合っていない…」と感じる人もいるのです。優良中小企業を探したい場合には、「自分に合っているのはどんな企業なのか」といった自分の価値観に軸を置きながら探し、企業選定を進めていくことが大切です。
それでは、実際に自分に合った優良中小企業を探して選ぶ方法を、以下の5つのステップで紹介していきましょう。なお、ここで紹介する5つのステップは、中小表企業だけではなく、大企業も含めた様々な企業の中から、自分にあった企業を探したい時にも有用です。
自分に合った優良中小企業を探して選ぶ5つのステップ
- 自己分析
- 自己分析の結果を基に、やりがいが接続できる仕事を考える
- 設定した軸を基に、中小企業を探す
- 興味を持った企業について調べる
- 企業ごとに優先順位をつけ、より選定基準を明確にする
ステップ1. 自己分析
まずは、「過去の行動」をベースにして自己分析を進めましょう。学業や部活動、アルバイトなどの過去の経験・行動を振り返り、そこで形成された価値観・やりがいを表出化することが目的です。
頭で考えていることと、やってきたことには、大なり小なりの乖離(かいり)が生まれるものですが、就活では「なぜそう思うのか?」「なぜこの会社を志望するのか?」という疑問に対して、説得力のある理由が求められます。
最初から行動をベースにして分析しておくと、深掘りしやすく、振り返った結果を裏付けとなるエピソードとしても使うことができます。
最終的に導き出した「自分が大切にしている価値観」や「やりがい」に対して、過去の行動がそのまま裏付けや証明ともなるので、分析結果に自信も持ちやすくなるでしょう。
ステップ2. 自己分析の結果を基に、やりがいが接続できる仕事を考える
ステップ1の自己分析で、表出化された価値観・やりがいを接続できる仕事は何かを考えます。
例えば、カフェでのアルバイトに打ち込んでいたとしましょう。「なぜそのアルバイトに打ち込んだのか?」と考えた先に、レジや客席でお客さまとの会話をする時間が好きだったことを認識したら、「なぜその業務が好きだったのか?」とさらに深掘りします。その結果、顧客にオススメ商品の魅力を伝え、提案し、受け入れられることにやりがいを感じていたからだと気がついたのであれば、同じような体験を得られそうな業務の求人を探します。この場合は、「対人折衝の多い仕事ができる企業」「自身の介在価値を提供できる仕事ができる企業」という軸を設定してみるのも良いでしょう。
ステップ3. 設定した軸を基に、中小企業を探す
設定した軸を基に、企業を探していきます。中小企業を探す場合は、主に以下のような方法が考えられます。
<中小企業を探す方法>
- 就職情報サイト
- キャリアセンター
- ハローワーク
- エージェント
- テレビやビジネス情報誌、新聞など
例えば、リクナビのような就職情報サイトでは、「業種」「職種」「地域」に加えて、休暇・残業、勤務形態、新卒採用者の定着率、給与・福利厚生、社員・組織、グローバル、キャリアアップ・スキルアップなどの「制度や特徴」などから絞り込んで検索をすることができます。設定した軸が「働き方」に関するものの場合などには使いやすいでしょう。
「地元の中小企業を探している」場合には、地場の企業とのつながりが強いキャリアセンターや、ハローワークなどで求人を探してみると良いでしょう。ほかにも、特許など独自の技術を持つ企業で働きたいといった「特徴的な軸がある」場合には、中小企業を特集するテレビ番組やビジネス情報誌、新聞などに目を通し、そこから気になった企業に求人募集をしているか問い合わせてみるのも一つの手です。
なお、「幅広く自分に合った中小企業を探したい」場合には、リクナビ就職エージェントのような、就活をサポートしているエージェントに相談をしてみるのもオススメです。中小企業の中には、定期的には新卒採用をしていない企業もあります。そういった企業では、その年の新卒採用のためだけに人員を割くよりも、就職エージェントに採用活動を委託して、通常業務に力を入れるという選択をする場合もあるため、結果的に就職エージェントには多くの求人が集まっています。中には、一般公開していない企業の求人もあり、非公開求人の中からも隠れた優良企業に出会うチャンスを得ることができます。
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ステップ4. 興味を持った企業について調べる
気になる企業を見つけたら、会社説明会に参加し、実際にその企業でどのような仕事をするのかを調べましょう。会社説明会では、就活の軸の選定基準と照らし合わせて、「自分の希望を満たせそうか」をチェックしながら話を聞くのがオススメです。自分のどんな面を仕事で生かしながら働けるのかも、チェックしておきましょう。
ステップ5. 企業ごとに優先順位をつけ、より選定基準を明確にする
就活を進めていくと、同じ職種であっても、自然と企業ごとに優先度がついていくでしょう。「どうして同じような仕事内容なのにA社よりもB社でより働きたいと感じるのか」といった理由を洗い出し、より選定基準を明確化することが大切です。A社とB社の違いに注目しながら、企業研究と職種研究を絡ませていくと、より自分にとっての「優良企業」の基準が明確になっていくはずです。基準が明確になると、新たな企業探しもよりスムーズにできるようになります。
中小企業を見極める7つの基準と具体的なチェックポイント
「自分に合った企業なのか」「優良中小企業と言えるのか」など、中小企業を見極めるときには、以下の7項目に注目をしてみると良いでしょう。それぞれの項目について、具体的なチェックポイントの例を箇条書きで紹介しているので参考にしながら、企業研究を進めていきましょう。
中小企業の見極めに使える7項目
- 事業内容
- 経営層や企業の方針
- 仕事内容
- 企業規模と他社優位性・安定性
- 企業風土・組織文化・社風
- 待遇・福利厚生・働き方
- 入社後3年以内定着率
チェックポイント1. 事業内容
- 企業は何を目的とし、誰に対して、何をしているか
- どのような仕組みで利益を生み出しているか
チェックポイント2. 経営層や企業の方針
- 創業者はどのような思いでその企業を設立したのか
- 創業者の思いや意思はどのような形で伝承されているか
- 現在はどのような経営方針・企業理念・ビジョン・パーパス(企業の存在意義)を掲げているか
チェックポイント3. 仕事内容
- 新卒で採用をされた際にはどのような仕事に携わるのか
- キャリアを歩むにつれてどのようなキャリアステップがあるのか
- 一人が抱える仕事の量や幅はどのようなものか
- 事前に求められるスキル、入社後に求められるスキルはどのようなものか
- 自身の経験やスキルとの接点はあるか
チェックポイント4. 企業規模と他社優位性・安定性
- 会社としての余力(内部留保などの蓄え)がどの程度あるのか
- どの程度、純利益(売上高からコストを引いたもの)があるか
- 社員1人当たりの利益はどの程度か
- 同業他社との比較優位性やセールスポイントは何か
- 業界内でシェア率の高い商品、ニッチトップの商品・技術があるか
チェックポイント5. 企業風土・組織文化・社風
- どのような価値観・考え方を持った人々が集まっている企業なのか
- 実際の企業・社員の雰囲気や印象はどのようなものか
- 家族経営か非家族経営か。家族経営の場合、経営一族と社員の関係性はどのようなものか
- 昇進や昇給などは年功序列か、実力主義か
- 社員の平均年齢や属性の構成比
チェックポイント6. 待遇・福利厚生・働き方
- 待遇・給与が社会の物価指標やトレンドに合わせて変化しているか
- 待遇・給与がキャリアを積むにつれて変化しているか
- 休日日数・有給取得率・残業時間の実績
- 従業員の健康や幸福のための最低限の福利厚生を持ち合わせているか
チェックポイント7. 入社後3年以内定着率
- 新入社員が入社後どの程度腰を据えて働いているか
【事例紹介】中小企業の見極めで重視すると良いこと
中小企業の主な見極めポイントをいくつか紹介しましたが、すべての条件を満たせる自身にとって完璧な企業はそう多くはありません。ここでは、「数ある基準の中で何を重視すれば良いのか」迷ったときの参考用に、いくつか考え方を紹介します。
就活の軸を基に見極める場合
企業の見極めの際に重視する基準を、就活の軸をベースに考えるやり方があります。例えば、「社会人として幅広いスキルを身につけて成長したい」という軸を設定している場合には、「経験できる仕事の幅」と「社風」に注目してみましょう。
中小企業は、大手に比べて裁量が大きく、1人当たりに提供される機会が多い傾向にあるので、実際に直近5年目くらいまでの新卒社員がどんな仕事を任されてキャリアを積んできたのかを確認するのがオススメです。
また、仕事に関する軸を設定している場合には、「求められる成長のスピード」にも注目しておきましょう。若手のうちからスピード感を持って多くの経験をさせることを重視しているのか、ゆっくりと着実にスキルを高めることを重視しているのかによって、働き方が変わるからです。
働きやすさを基に見極める場合
「社員の平均年齢・男女比」は、働きやすさの指標にもなります。中小企業の中にも女性の働き方や、従業員の長期就業のための制度や教育を充実させている企業があるので、チェックしておくと安心です。「ニッチトップの商品・技術」があったり、「業界内でシェア率の高い商品」があったりすると、経営が安定しやすく、その分従業員の教育や福利厚生などに還元できる場合があります。制度や働きやすさの指標にもなり得るので、チェックしておくと良いでしょう。同様に、「取引先の顔触れ」は、どれだけその企業が世の中から求められているかという指標にもなります。ニーズの高い事業では安定した経営がしやすく、働きやすさにもつながるでしょう。就活をするまで名前を知らなかった中小企業であっても、取引先に名だたる大企業やグローバル企業を抱えているということも珍しくありません。
中小企業ならではの観点を基に見極める場合
中小企業はその定義からもわかるように、どうしても組織が小さくなりがちです。「どのような価値観・考え方を持った人々が集まっている企業なのか」や「経営者の方針」と自分の考えが合うかどうかは、最初から慎重に見極めておくと良いでしょう。
同じベクトルを向いた経営者と社員が集まる企業では一致団結して力を発揮できるという利点になりますが、そこに自分がフィットしない場合には、居心地の悪さを感じるだけではなく、思うように力を発揮できずストレスを感じるかもしれません。従業員の人数が少ない企業では、部署異動がしづらく、異動できたとしても人間関係をリセットするのが難しいこともあります。
【注意点】中小企業で働く前に知っておきたいこと
中小企業への就職を考えている場合には、大企業との違いも事前に知っておくと良いでしょう。入社後に「知らなかった…」と後悔しないように、中小企業で働くときの特徴的な項目をいくつか紹介します。ここで紹介している内容はあくまでも傾向であり、すべての中小企業に当てはまるわけではありません。企業研究を行い、企業ごとに実際の特徴を調べることが大切です。
経営層と距離が近い
柔軟な考え方を持つ経営層の場合は、現場の意見などを柔軟に反映した方針や目標の設定がされやすいというメリットがあります。そういった企業では、企業としての意思決定スピードが早くトレンドに合わせた方向転換や、チャレンジの機会を多く得やすいかもしれません。
経営層の考えが強固な場合は、それが事業を経営する上での強みとなる場合もありますが、雇用側と被雇用側で温度差が生まれる場合があります。
ヒト・モノ・カネの経営資源が限られる
その企業で働くヒトが限られるということは、社員1人に対して与えられる仕事の幅が広く、多くの経験を積みやすいというメリットにつながります。企業によっては、年次の浅い段階でマネジメントに携わりやすいというケースもあるでしょう。一方で、1人当たりの裁量が多い場合は、業務量が多くなりがちというデメリットにもつながります。経営資源不足に陥り、仕事を任せてもらえてもやりたいことが実現できないというケースもあるかもしれません。
事業幅が狭い場合、競合や他社参入で経営が不安定になる可能性もある
事業幅を狭めることでニッチトップを実現しているような企業では、それが業界内での強みとなる一方で、競合や他社が参入することで経営が不安定になる可能性もあります。ニッチトップを誇っていた技術が、技術革新などによって不要になってしまう可能性もあるかもしれません。
中小企業の平均賃金
企業規模別に賃金を見ると、以下の通りとなります。給与の平均値を取ると中小企業の給与は大企業よりも少ないことがわかります。
もちろん、実際の賃金は企業によって異なるので、中小企業であっても大企業と並ぶ年収を実現できることもあります。募集要項や企業の採用サイトなどを基に、平均年収などをチェックすると良いでしょう。
【対処法】中小企業の選び方・判断基準に迷ってしまった就活生へ、就活のプロからのアドバイス
最後に、本記事を監修したリクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザー、八下田護(やげた・まもる)さん に、中小企業の選び方・判断基準に迷ってしまった就活生へのアドバイスをもらいました。
企業選びに自信を持てない、軸や判断基準を決め切れない場合のアドバイス
就活では、企業を選ぶ基準を1つに定める必要はありません。そして、最初から最後まで1つの基準だけを頼りに就活を進めなければいけないわけでもありません。「途中で変わってもいい」「今はまだ100パーセントしっくりこなくてもいい」と思いながら、最初は気楽な気持ちで企業を探してみましょう。就活を進めるうちに見えてくるものがあるはずです。
就活を進めていても、自分なりの基準が何も見つからない場合のアドバイス
自分1人で考えていると、本当は気がついている、感じていることがあるのに、なかなか言語化できないというケースは少なくありません。こういったときは、誰かに話すことで気持ちや考えを整理してみましょう。
家族や友人、先輩などに相談するのが気恥ずかしい場合には、就活のサポートをする私たちのような就職エージェントを頼ってください。リクナビ就職エージェントは、単に企業を紹介しているだけではありません。それももちろん一つの大切なサポートではあるのですが、学生が頭の中で考えていることを一緒に整理し、頭の中ではまとまっているけれどまだ言語化できていないことを言語化するようなサポートもマンツーマンで行っています。そうして言語化した就活の軸、企業選びの軸、仕事探しの軸を基に、そこにひも付く仕事と企業を一緒に探し、優先順位をつけながら企業を選んで選考を進め、内定につなげていくためのサポートをしているのです。
そもそもやりたいことがない場合のアドバイス
初回の面談でお話をうかがうと、「やりたいことがないです」「どんな仕事でもいいです」という思考の学生は、実は少なくありません。その感情を否定するつもりはないですし、恥ずかしがる必要もないと思います。ただ、この後の人生で長い時間を費やす“働く”場面で、少しでも楽しい要素、やりがいを感じる要素がある方が幸せじゃないかな、と考えています。だからこそ、そんな方は早めに私たちのような就職エージェントのサポートを受けてもいいかもしれません。一緒に自分らしくいられる仕事・環境を探しましょう。
リクナビ就職エージェントへの相談は、就業意欲さえあれば大丈夫!その人に合っている仕事と企業を探して、内定までサポートするのはキャリアアドバイザーの仕事です。安心して気軽な気持ちで相談に来てみてください。
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『リクナビ就職エージェント』は就活を無料で支援するサービス。
会員登録後、専任のアドバイザーが個別に電話相談を行い、あなたの希望や適性に合う企業選びを一緒に考えます。
エージェントだからこそできる求人情報の紹介、面接アドバイスやOpenESの添削なども行っています。
プロフィール 八下田 護(やげた・まもる)
リクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザー。新卒で入社した旅行代理店では、ハネムーンや退職旅行など、“人生の節目でのサポート”にやりがいを感じ、さらに多くの人々が直面する就職の場面でのサポートができればと、株式会社リクルートへ中途入社。現在は大学生・大学職員に向けたキャリア支援を行っている。