ガラス編・2017年【業界トレンド】

建設用やスマホ用ガラスの需要が一服。各社は高付加価値製品と海外市場に注力して成長を目指す

ガラスの用途として最も多いのは、ビルや住宅などに用いられる建築用ガラスだ。また、自動車用ガラスや、液晶テレビなどに使われるディスプレイ用ガラスも、売り上げの中でかなりの割合を占める。さらに、デジタルカメラや医療器具に使われる光学レンズ用ガラス、食器や装飾品といった工芸品向けのガラスにも一定のニーズがある。代表的な国内メーカーには、幅広い種類のガラスを手がける旭硝子、建築用・自動車用ガラスに強い日本板硝子とセントラル硝子、液晶用ガラスが主力の日本電気硝子、カメラやメガネなど光学レンズ用ガラスの分野で存在感を誇るHOYAなどがある。

建築用ガラスや自動車用ガラスは、「板ガラス」と総称される。この分野では、旭硝子と日本板硝子が世界トップクラスのシェアを獲得。一方のディスプレイ用ガラス市場では、世界シェア1位のコーニング社(アメリカ)に続き、旭硝子が同2位、日本電気硝子が同3位につけている。グローバル市場では、どちらの分野でも日本企業の存在感が大きい。

ここ数年の国内需要は、板ガラス・ディスプレイ用ガラス共に旺盛だった。板ガラスの分野では、東日本大震災からの復興需要や、東京オリンピック・パラリンピック関連の建設需要によって売り上げが拡大。ディスプレイ用ガラスの分野も、スマートフォンやタブレット端末の急速な普及が、各社の業績を後押ししていた。しかし、今後の日本では人口減少が見込まれており、建設需要や自動車販売台数が小さくなって板ガラスの需要は縮小する可能性が高い。また、国内ではスマートフォンやタブレットの普及が一段落し、ディスプレイ用ガラス市場の成長も鈍化した。さらに、中国や韓国などから安価な商品が流入しており、価格競争が激しくなっているのも懸念材料と言える。

このような状況の中で、各社は「高付加価値ガラス」の開発に力を入れている。例えば建築用ガラスでは、冷房効率を上げる省エネガラスの開発が進行中だ。旭硝子、日本板硝子、セントラル硝子は、優れた断熱性で冷暖房の効率を高める「エコガラス(下記キーワード参照)」を提供している。

自動車用ガラスでは燃費向上に資する商品の開発が活発だ。日本板硝子は独特の形状によって空気抵抗を減らし、燃費向上につながる自動車用ガラスを提供している。また旭硝子は、寒い場所での曇りを抑える「防曇ガラス」を開発。曇りを解消するために車内のエアコンを使う必要がなく、燃費向上につながるという。さらに、自動車の性能向上に合わせた自動車用ガラスの開発も進められている。旭硝子は、自動運転の自動運転技術の普及を見据え、センサーやカメラなどさまざまな電子機器の電波を妨げないガラスの開発などを進めている。

事業領域の拡大や海外事業強化に向けたM&Aの動きも活発だ。HOYAは2017年8月に、アメリカの眼鏡レンズメーカーであるパフォーマンス・オプティクス社を買収した(下記ニュース参照)。これにより獲得した販路と生産拠点を活用し、アメリカ市場での販売拡大につなげる。また、日本電気硝子はアメリカの大手塗料会社から、ガラス繊維事業を買収すると発表(下記ニュース参照)。主力事業である液晶用ガラス事業は競争が激化しているため、自動車の軽量化などに寄与する部材として需要が増加しているガラス繊維事業を強化するのが狙いだ。今後も、海外進出に向けた各社の動きに注目する必要があるだろう。

ガラス業界志望者が知っておきたいキーワード

エコガラス
旭硝子、日本板硝子、セントラル硝子の3社が製造する「Low-E複層ガラス」(複層ガラスの間に特殊な金属膜をコーティングしたガラス)の共通呼称。断熱性が高く、ガラスからの熱の出入りを防ぐことで、暑い夏も寒い冬も室温を快適に保つ。

電波透過型ガラス
通信に必要な各種電波を透過するガラス。これまでは金属膜によって断熱性を高めたガラスが自動車のフロントガラスなどに使われていたが、電波を通しづらく、自動車に搭載された機器や携帯電話などの通信を邪魔することが難点だった。今後は断熱機能と、通信に必要な電波透過性を両立したガラスが求められている。

ガラス繊維
ガラスを溶かし、引き延ばして繊維状にしたもの。建築・土木分野においては、鉄筋に代わる新たなコンクリート補強材として使われている。また、自動車やエレクトロニクス機器、住設機器などでプラスチックの補強材料としても用いられるケースが増えている。

このニュースだけは要チェック<海外進出に向けたM&Aが活発化>

・日本電気硝子が、アメリカの大手塗料会社であるPPGインダストリーズ社から、アメリカ国内のガラス繊維事業を買収すると発表した。自動車の車体などに使われるガラス繊維の市場において、存在感をさらに増すことが狙いとみられる。(2017年5月26日)

・HOYAが、アメリカの眼鏡用レンズ製造会社パフォーマンス・オプティクス社と、その子会社であるビジョン・イーズ社および大明光学を買収した。パフォーマンス・オプティクス社はアメリカ、韓国、中国、タイ、インドネシアに生産拠点を構えており、買収によって技術力の向上、販路の拡大などが期待できる。(2017年8月2日)

この業界とも深いつながりが<建設、自動車業界などに商品を提供>

建設
成長中の海外新興国では、建築用ガラスへのニーズが高まっている

自動車メーカー
空気抵抗を減らして燃費向上をもたらす自動車用ガラスを開発

住宅メーカー
断熱性の高いガラスを提供することで、電力消費の小さな家造りを支援

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門成長戦略グループ コンサルタント
堀内くるみ氏

horiuchi_sama

ケンブリッジ大学大学院化学工学科修士課程修了。企業のビジョン作り、経営戦略・事業戦略策定支援、マーケティング戦略策定支援などのコンサルティングを中心に活動。

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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