鉄道編

各社は成長を加速するために多角化を推進。訪日外国人向けの取り組みにも注力している

大手鉄道会社には、東日本旅客鉄道(JR東日本)、東海旅客鉄道(JR東海)、西日本旅客鉄道(JR西日本)、近鉄グループホールディングス、東京急行電鉄、阪急阪神ホールディングス、名古屋鉄道、東武鉄道、小田急電鉄、西武ホールディングスなどがある。これら大手10社の2017年3月期における総売上高は、前年比0.4パーセント増の11兆3417億円。東日本大震災などの影響から脱した2012年度以降、市場は堅調に推移している。

 

鉄道事業の拡大には多大な投資が必要だし、売り上げを伸ばすまで時間もかかる。そこで各鉄道会社は、成長を加速するために事業の多角化を進めている。例えば、バス・タクシーなど鉄道以外の運輸事業、小売業や飲食店などの流通事業、オフィス賃貸や住宅分譲といった不動産事業、ホテルやレジャー施設の運営などが代表格。こうして「沿線開発」(下記キーワード参照)を進めて自社の線路沿いに多くの人を集めることで、本業である鉄道事業との相乗効果を狙っているのだ。こうした背景があるため、2017年3月期は大手10社のうちJRを除く7社で、鉄道事業(運輸事業)の売上額が全売上額の50パーセント以下にとどまっている。中でも、近鉄グループホールディングスと東京急行電鉄は、運輸事業が全体の20パーセント以下と低い。その代わりに、近鉄グループホールディングスではホテル・レジャー事業が40パーセント程度、東京急行電鉄では生活サービス事業(百貨店・スーパーなどのリテール事業、CATV・セキュリティ事業、電力小売事業など)が50パーセント以上を占めている。

 

多角化を進める鉄道会社において現在好調な分野が、訪日外国人の増加が追い風になっているホテル・レジャー事業だ。例えば西武ホールディングスは、同社傘下のグランドプリンスホテル高輪で外国人向けに生け花教室・茶道・利き酒・風呂敷包みの体験を提供するなど、インバウンド需要の取り込みに積極的。こうした試みが功を奏してか、プリンスホテルでは、2017年1~8月の訪日外国人宿泊客数が前年同時期より4.7パーセント増。訪日外国人から得られた室料収入などの売上額も、13.2パーセント増えたという。こうした取り組みは、他社も注力しているところだ。

 

中には、鉄道会社同士が連携してサービスを提供する事例も見られる。例えば京成電鉄と東武電鉄は、相手企業が発行している訪日外国人向けの企画乗車券を相互に販売。また、東京エリアの鉄道事業者であるゆりかもめ、東京地下鉄、東京都交通局、東京モノレール、東京臨海高速鉄道、JR東日本の6社は、共同で訪日外国人向けの観光マップを作成している。インバウンド需要の拡大は政府も後押ししており、鉄道会社にとっては大きなビジネスチャンス。今後も、さらなるサービスの開発が求められている。

 

人口減少やテレワーク(下記キーワード参照)の増加などが進み、長期的に見れば、鉄道による移動需要が伸びるとは考えにくい。そこで注目されているのが、鉄道で移動すること自体を楽しめる「クルーズトレイン」だ。2013年10月に九州旅客鉄道(JR九州)が運行を始めた「ななつ星in九州」は、豪華寝台列車で九州各地を巡るというもの。1人あたりの料金は最低でも30万円台と高額だが、大人気となっている。これに続いて、2017年5月にはJR東日本による「TRAIN SUITE 四季島」、2017年6月にはJR西日本による「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の運行が始まり、どちらも成功を収めている。単なる移動手段ではなく「楽しむための鉄道」を提案する動きは、長距離路線を保有するJRを中心に、今後も加速する可能性があるだろう。

 

鉄道業界志望者が知っておきたいキーワード

沿線開発
自社の線路沿いで小売業や飲食店などの流通事業、マンションなどの不動産事業、レジャー事業などを展開することで、その沿線の価値を高めていくこと。沿線価値が高まれば住民や買い物客、レジャー客などが増え、鉄道の乗客数増加にも寄与する。

テレワーク
「遠く」という意味の接頭辞の「tele」と「work」を組み合わせた言葉で、自宅や外出先、サテライトオフィスなどで働くことを指す。働く側には通勤時間が短くなるなどのメリットがあるが、鉄道会社にとっては通勤客の減少につながる危険性も考えられる。

直通運転
異なる鉄道会社同士が協力し、列車を互いに乗り入れること。乗り換えの必要がなくなるため、乗客にとっては非常に便利だ。直近では、2019年に相鉄線とJR線、2022年に相鉄線と東急線の直通運転などが予定されている。

地方創生
東京一極集中を是正して地方を活性化し、日本全体を盛り上げようとする取り組み。例えばJR西日本は、鳥取県(サバ)、広島県(カキ)、富山県(サクラマス)で陸上養殖に取り組んでいる。こうした事業が成功すれば、非鉄道分野の売り上げアップにつながるだけでなく、沿線住民を増やして鉄道収入の拡大も期待できる。

このニュースだけは要チェック<訪日外国人増に対応し、ホテル事業を強化>

・近鉄グループ傘下の近鉄・都ホテルズが、東京都のJR品川駅近くと、大阪府の地下鉄堺筋本町駅近くでホテルを開業すると発表。同社は訪日外国人の需要が今後も増えるとみており、現在約6500あるホテル・旅館の室数を、2030年までに約8000室まで増やす方針。(2017年7月5日)

 

・相鉄ホールディングスが、ホテルの運営を手がける子会社を新設して傘下のホテル事業を再編。さらに、新タイプの低価格ホテルの出店も始めると報道された。現在37店の直営ホテルを、2020年3月には50店以上、将来は100店にまで増やす方針という。(2017年7月28日)

 

この業界とも深いつながりが<レジャー・ホテル・旅行業界とも協力>

重工メーカー
鉄道車両の製造や運行システムの構築などで密接な関係

レジャー施設
鉄道会社がレジャー施設を運営するケースは少なくない

地方自治体
自治体や地域企業と協力しながら沿線価値を高める

 

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 未来デザイン・ラボ コンサルタント
小林幹基氏

kobayashi_sama

京都大学大学院情報学研究科修士課程修了。大手電機メーカー、ニューヨーク大学客員研究員を経て現職。専門は、海外進出戦略、事業戦略、未来洞察による新規事業開発。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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