レジャー施設編・2016年【業界トレンド】

2大テーマパークが好調。今後は外国人取り込みと滞在型施設への脱皮がカギに

経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によれば、2010年における「遊園地・テーマパーク」の売上額は4626億円。11年は東日本大震災の影響で入場者数が減り、売上額も4302億円と落ち込んだが、12年には5004億円、13年には5705億円、14年には6061億円と急拡大。15年は、対前年比8.3パーセント増の6560億円とさらに伸びた。

好調な業界をけん引しているのが、東西の2大テーマパークだ。東京ディズニーリゾート(TDR)は、開業30周年を迎えた13年に「ザ・ハピネス・イヤー」と題してさまざまなイベントを開催し、年間入場者数が3000万人を超えた。14年には、過去最高となる3138万人を記録。15年の入場者数は減少したものの、依然として3000万人台を維持している。一方、西の雄であるユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の入場者数は、13年に初めて1000万人を突破。続く14年は1270万人、15年は1390万人と順調に増加し、世界の入場者数ランキングで4位にランクアップした(下表参照)。

2大テーマパークが入場者数を伸ばしているのは、顧客を飽きさせないために多くの施策を打ち出しているからだ。TDRは、人気映画『アナと雪の女王』をモチーフにしたショーを導入し、「ジャングルクルーズ ワイルドライフ・エクスペディション」や「マーメイドラグーンシアター」などのアトラクションをリニューアル。USJも、12年に「ユニバーサル・ワンダーランド」、13年に 「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド~バックドロップ~」、14年に「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリーポッター」と、新規の大型アトラクションを立て続けにオープンした。またUSJは、人気アニメ『エヴァンゲリオン』『進撃の巨人』をモチーフにしたアトラクションや、少年マンガ雑誌『週刊少年ジャンプ』とコラボレーションしたイベントなどを期間限定で開くなどの取り組みも行っている。

日本のテーマパークは、主要な顧客が周辺住民に限られ、来場者のパーク滞在日数が1日~2日程度の「都市型テーマパーク」に分類される。例えば、TDRの来場者の約67パーセントが関東からの来場者で、海外からの来場者は約6パーセント。USJも、来場者の約50パーセントは関西圏からで、国外からは10パーセント程度にすぎない。今後、国内人口は減少が予測されており、入場者数を伸ばすためには訪日外国人旅行者の確保が大きな課題となっている。

また、「ディスティネーション型テーマパーク」という概念にも注目しておきたい。これは、複数のテーマパークやレジャー施設を1カ所に集め、国内外からの「目的地(=ディスティネーション)」となることを目指すもの。その典型例が、4つのテーマパークに2つのウォーターパーク、ショッピングモール、ホテル、ゴルフ場を集めたアメリカ・オーランドの「ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート」だ。この施設には国内外から多くの人々が訪れ、長期にわたって滞在するスタイルが確立している。また近年では、アジアを中心にディスティネーション型テーマパークを建設する動きが加速中だ。中国では、米映画製作会社ユニバーサルのテーマパークを中心とした大規模リゾートの開発計画が進行。また韓国では、米映画製作会社20世紀フォックスのテーマパークを中心に、ホテル、カジノ、映画館などを併設した大規模な施設の開発が計画されている。TDRを運営するオリエンタルランドも、25年にかけて5000億円を投じ、パークやホテルの拡張、新アトラクションの導入を計画しており、日本初のディスティネーション型テーマパークとなるかもしれない。

一方、TDR、USJ以外の遊園地・レジャー施設は、厳しい状況に立たされている。スマートフォンで手軽に遊べるオンラインゲームの台頭により、「非日常を味わえるテーマパーク」と「日常のオンラインゲーム」といったすみ分けが進んでおり、いずれにも属さない遊園地の存在価値が薄れてきているのだろう。今後、レゴブロックで知られるレゴ社のテーマパーク「レゴランド・ジャパン」(愛知県名古屋市)や、ムーミンをモチーフにしたテーマパーク「metsa(メッツァ)」(埼玉県飯能市)など開業が計画されているが、各施設は「顧客に訴えるべき価値」が何か、今一度見直す必要に迫られている。

「RDE(Retail, dining and entertainment)」という考え方も押さえておこう。例えば、15年のオリエンタルランドのテーマパーク事業において、アトラクション・ショーの占める割合は全体の44パーセントにすぎない。収益の半分以上は物販・飲食・ホテル・その他エンタテインメントからもたらされており、これらを含めてトータルで事業を捉える必要があるのだ。

世界のテーマパーク 入場者数ランキング(2015年)

1位
マジックキングダム(アメリカ・オーランド)
2049万人

2位
ディズニーランド(アメリカ・アナハイム)
1828万人

3位
東京ディズニーランド(日本・千葉)
1660万人

4位
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(日本・大阪)
1390万人

5位
東京ディズニーシー(日本・千葉)
1360万人

※アメリカに本部を置くテーマエンターテインメント協会(Themed Entertainment Association)が発表した「The TEA/AECOM Theme and Museum Index report」より。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが東京ディズニーシーを抜き、4位にランクアップした。

このニュースだけは要チェック <2大テーマパークの動きに注目>

・TDRを運営するオリエンタルランドが、2020年度までの開発計画の一部について決定したと発表。年間500億円程度の投資を継続し、新規アトラクションや施設の整備を進める。また、東京ディズニーシーの拡張や、ホテルの客室数増加にも取り組むという。(2016年4月27日)

・USJを運営するユー・エス・ジェイが、沖縄への進出計画を取りやめたと発表。大阪のUSJは好調だが、敷地に拡張の余地が乏しい。そこでユー・エス・ジェイは、沖縄進出によって売り上げ増を狙っていたが、大阪に投資を集中する方が有利と判断して白紙撤回となったようだ。(2016年5月11日)

この業界とも深いつながりが <ホテルや鉄道会社と協力する機会が多い>

旅行・ホテル
併設ホテルや旅行会社などと連携し、来場者増や売り上げ拡大を目指す

鉄道
鉄道会社が遊園地をはじめとするレジャー施設の親会社であるケースは多い

外食
レジャー施設内の外食施設は、売り上げのうちかなりの部分を占める

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 未来デザイン・ラボ コンサルタント
小林幹基氏

kobayashi_sama

京都大学大学院情報学研究科修士課程修了。大手電機メーカー、ニューヨーク大学客員研究員を経て現職。専門は、海外進出戦略、事業戦略、未来洞察による新規事業開発。

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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