教育サービス編

社会環境や受験制度の変化に合わせ、ビジネスモデルの変更や多角化が求められている

教育サービス業界は、主に子どもを対象にした学習塾・予備校と、社会人向けのサービスを提供する企業とに大別できる。どちらの分野も、急激に進む少子高齢化や技術革新・グローバル化などに伴い、めまぐるしく変化しつつある。

 

学習塾・予備校分野では、東進ハイスクールなどを展開するナガセ、学校法人河合塾グループ、駿台予備校で知られる学校法人駿河台学園などの大手予備校のほか、市進ホールディングス、日本公文教育研究会などが広く知られた存在。また、ベネッセホールディングスや学研ホールディングス、Z会グループなど、通信教育中心の企業も存在感を発揮している。一方、社会人向けサービスを中心に展開する企業としては、語学教室を展開するGABAやアルク、幅広い生涯教育講座を手がけるヒューマンホールディングスやユーキャン、資格取得分野に強いTACなどがある。

 

学習塾・予備校分野では、大学への入学希望者が定員総数を下回る「大学全入時代」が到来し浪人生が激減しているため、予備校が苦戦している。例えば代々木ゼミナールは、2015年に全国27校のうち20校を閉鎖。ナガセも2017年、全国23校のうち11校を閉鎖した。予備校には、浪人生を主とする従来のビジネスモデルの見直しが迫られている。一方、小中高校生対象の学習塾は、都市部を中心に成長が期待されている。文部科学省の「平成26年度 子供の学習費調査」によると、子ども1人あたりの年間学習塾費は、公立中学で16.8パーセント増(2012年17.5万円→2014年20.5万円)、私立中学で4.2パーセント増(同13.0万円→13.5万円)、公立高校で16.4パーセント増(同8.2万円→9.5万円)、私立高校で14.5パーセント増(同12.4万円→14.2万円)と伸びているからだ。

 

また、学習塾・予備校の分野ではここ数年、大きな環境変化が起きている。大学受験では従来のセンター試験に代わって、2020年に「大学入学共通テスト」(下記キーワード参照)が導入されるなど、「高大接続改革」(下記キーワード参照)の動きが加速。入学試験のやり方・仕組みが、かなり変化すると予測されている。予備校などは、思考力や主体性を伸ばし、小論文やディベートなどにも対応した教育プログラムを作り上げることが必要だ。また、「新時代に対応できる人材の育成」もポイントになりそう。政府が策定を進めている「第3期教育振興基本計画」では、技術革新やグローバル化が進み、産業構造や社会が大きく変化する時代に対応できる人材の育成が求められている。

 

こうした中、2020年から小学校でプログラミング教育(下記キーワード参照)が必修化されるのに合わせ、タブレット教材やプログラミング教育の導入を進める学習塾は多い。また、英語教育の強化や、社会的イノベーションをけん引する実践的教育プログラムの提供など、ニーズに対応した多彩なサービス展開を目指す学習塾・予備校も増えるだろう。今後は、大学受験向けのサービスを提供している企業が小・中学生向けのサービスにも手を広げたり、学習塾・予備校がプログラミング教育に乗り出したりするなど、ビジネスモデルの修正や多角化が進んでいくかもしれない。

 

社会人向け教育分野では、インターネットなどを利用して学ぶ「eラーニング」が引き続き好調だ。矢野経済研究所の「eラーニング市場に関する調査(2017年)」によると、2016年度のeラーニング市場は1767億円(見込み)で、前年度(1657億円)より6.7パーセント増、2013年度(1378億円)より28.2パーセント増だった。また、矢野経済研究所の調査によれば、資格取得学校(市場規模1900億円、対前年度比1.1パーセント増)、成人向け外国語教室(同2100億円、対前年度比0.5パーセント増)の分野も安定している。安倍内閣は人材育成の一環として、社会人の「リカレント教育」(下記キーワード参照)を進めようとしており、「学び直し」を目指す社会人をターゲットとした市場は成長が期待できそうだ。

 

教育サービス業界志望者が知っておきたいキーワード

大学入学共通テスト
現在行われている「大学入試センター試験」に代わり、2020年から実施される試験のこと。受験生の「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」について、多面的・総合的に評価する。これまでのような択一式問題に加えて記述式問題の導入や、英語が「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能評価となるなどの変更が予定されている。

高大接続改革
「高大」とは高校と大学のこと。国際化や情報化が急速に進む中、高校教育・大学入試・大学教育という一連の流れをまとめて改革する取り組みを指す。大学入試では「入試にしか役立たない知識」の有無ではなく、「社会で自立的に活動するための学力」を多面的・総合的に判定することが目指されている。

小学校におけるプログラミング教育
2020年から、小学校でプログラミング教育が必修化される。ICT(Information and Communication Technologyの略称。情報伝達技術)社会において、コンピュータをツールとして使いこなすだけでなく、「ものづくり」の観点から理解すること、また今後の社会を生きていく上で不可欠となる論理的思考力や問題解決能力を育むことを目指す。官民連携組織「未来の学びコンソーシアム」において、産業界の協力の下、教材開発や外部講師派遣などが進められている。

アクティブラーニング
ひと言で表せば「能動的な学習」。教える側が一方的に講義を行うのではなく、ディスカッションやプレゼンテーションなどを通じ、学ぶ側が能動的・主体的に参加するスタイルの授業形態。急速に進む技術革新や社会変化に対応し、リーダーシップを発揮できる人材を育てるため、小・中・高校から積極的に推進されようとしている。

リカレント教育
リカレント(recurrent)とは「循環する」という意味の言葉。リカレント教育とは、いったん学校を卒業して社会に出た人が、必要に応じて学校やスクールで学び直す仕組みを指す。世の中の変化が激しくなっている中、最新の知識を学ぼうと教育サービスを利用する人は増える可能性もある。

このニュースだけは要チェック<社会変化に応じた新サービスが登場>

・北海道や東北地方を地盤とする学習塾の練成会グループが、人工知能型タブレット教材「Qubena(キュビナ)」の採用を決定。問題に対する解答はもちろん、解答スピードや理解度などの情報を自動的に蓄積、分析することで、生徒一人ひとりに合った問題を出題できるという。(2017年7月31日)

 

・一般社団法人教育人間科学研究所が、英語やプログラミングなども学べる送迎付き民間学童保育施設を神奈川県横浜市に設立すると発表。放課後の児童を預かるだけでなく、「習い事つきのアフタースクール」を目指している。(2017年8月9日)

 

この業界とも深いつながりが<ITを活用した教材の開発が加速>

IT(情報システム系)
タブレットや人工知能を活用した教材を、IT企業と協力して開発

出版
教育系の出版社が教育サービスの提供も行っているケースは多い

ゲーム(ソフトメーカー)
教育コンテンツを携帯端末向けアプリとして展開するケースも

 

この業界の指南役

日本総合研究所 コンサルタント
本田紗愛氏

日本総研本田さんお写真

京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科造形工学専攻修了。専門は、官民連携まちづくり、地方創生など、主に公共分野のコンサルティングを中心に活動。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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