百貨店編

店舗の魅力アップで専門店に対抗。外国人客への対応力強化や海外進出も成長のカギだ

百貨店とは、衣・食・住などにまつわる幅広い商品を販売する大型小売店のこと。国内の大手百貨店グループには、三越伊勢丹ホールディングス(三越、伊勢丹を展開)、J.フロント リテイリング(大丸、松坂屋)、髙島屋、エイチ・ツー・オー リテイリング(阪急、阪神)、セブン&アイ・ホールディングス(そごう、西武)、近鉄百貨店、東急百貨店などがある。

 

日本百貨店協会によると、1991年の全国百貨店売上高は9兆7130億円に達した。しかしその後は、衣料品・家電・食品など各分野で専門店に顧客を奪われ、売上高は減少傾向が続いている。2013年は「アベノミクス効果」で16年ぶりにプラスとなったが、2014年以降は再び減少に転じた。2017年の売上高は前年(5兆9780億円)より0.4パーセント減の5兆9533億円で、ピーク時に比べると3分の2以下の規模だ。

 

特に厳しいのが地方の百貨店である。東京の百貨店だけを見ると、2012年の売上高が1兆5203億円だったのに対し、2016年は1兆6014億円と成長している。これに対し、主要10都市(東京・大阪など)以外にある百貨店の売上高は、2012年が2兆1110億円だったのに対し、2016年は1兆9167億円と減った。今後は人口減少が進む地方が増えると予想されるため、こうした地域では店舗の統廃合といった施策が求められるだろう。また、衣料品の売り上げ減少も悩みの種だ。百貨店の売り上げのうち、衣料品の比率は3割強。その3分の2を占める婦人服・婦人用品部門が苦戦している。女性の心をつかんで衣料品販売のてこ入れを行い、アパレル専門店やネット通販などに対抗することが必要だ。

 

こうした中、百貨店は消費者をひきつける努力を重ねている。代表的な施策の一つが、売り場の改装だ。例えば東武百貨店の池袋本店は、2017年秋に食品売り場の大改装を実施。さらに2018年秋にも、第2弾の改装を行う予定だ。また、三越の日本橋本店も、2016年から2020年にかけて大改装を進めているところ。店内の施設をリニューアルすることで、「ワクワクでき、出かけたいと思える場所」としての魅力を高めようとしているのだ。また、単に消費者ニーズを満たすだけではなく、消費者を驚かせるような新鮮味のある提案をしていくことも重要。そのためには、長年培ってきた「目利き力」(優れた商品を見極める能力)を生かして魅力的な商品を集めたイベントなどを企画したり、自社企画品を開発したりすることも必要だろう。

 

訪日外国人への対応も、引き続き大切だ。2015年に話題を呼んだ「爆買い」(訪日外国人が、日本で積極的に消費行動をすること)は、2016年になると一段落。しかし、2017年には再び、訪日外国人の買い物が活発化した(下記データ参照)。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは多くの外国人が日本を訪れるものと予想されるが、これを大きなビジネスチャンスと捉え、準備をする動きも盛んになっている。反対に、海外展開を強化する動きもある。髙島屋は2016年、ベトナム・ホーチミンシティに新店舗をオープン。2018年秋には、タイ・バンコクでも新店舗を開く予定だ。また、エイチ・ツー・オー リテイリングは2018年秋に、中国の寧波市で阪急百貨店を出店するプロジェクトを進めている。アジアを中心とした新興国市場での出店は、百貨店業界にとって成長の原動力となり得るだろう。

 

自社の売り場から得られる売り上げより、百貨店に誘致したテナントからの賃料収入を重視する方向性も模索されている。例えば、J.フロント リテイリングは2017年4月、多くのテナントを集めた「ギンザシックス」を開店(下記ニュース参照)。このように、百貨店自身が店舗全体のコンセプト作りやブランディングに集中するやり方は、今後、増える可能性もありそうだ。

 

訪日外国人数と、その買い物代の推移

2015年
訪日外国人数……1974万人
買い物代……1兆4539億円
2016年
訪日外国人数……2404万人
買い物代……1兆4261億円
2017年
訪日外国人数……2869万人
買い物代……1兆6398億円

※観光庁「訪日外国人消費動向調査」と、JNTO(日本政府観光局)資料より。訪日外国人数とその消費額は、今後も増えていく可能性が高い。

このニュースだけは要チェック<海外進出に関わる話題に注目>

・三越伊勢丹ホールディングスが野村不動産などと共同で、フィリピン・マニラにてタワーマンションと商業施設を組み合わせた不動産複合開発案件に取り組むと発表。三越伊勢丹ホールディングスは日本での小売業のノウハウを生かし、商業施設の開発を行う予定だ。(2017年7月10日)

 

・J.フロント リテイリングが、松坂屋銀座店の跡地とその隣接地に、銀座エリア最大級の商業施設「ギンザシックス」をオープン。開業時のテナント数は241店舗にも上り、自社の売り場よりテナント重視の姿勢が見える。初年度来館者数の目標は2000万人。(2017年4月20日)

 

この業界とも深いつながりが<アパレルは重要なパートナーかつ競合>

アパレル
アパレル専門店は競合だが、百貨店内のテナントとして協力もする

鉄道
百貨店を経営し、主要駅に大型店を出店している鉄道会社は多い

旅行
旅行会社と百貨店が協力して訪日外国人を呼び込むケースも
 

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー
吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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