アパレル編・2015年【業界トレンド】

インターネット通販市場は着実に拡大。各社は通販サイトを強化して売り上げ拡大を狙う

アパレル(apparel)とは、英語で衣服のこと。衣料品やファッション雑貨の企画・製造・販売を手がけるのがアパレル業界だ。国内企業としては、「ユニクロ」「GU(ジーユー)」を運営するファーストリテイリングや、「ファッションセンターしまむら」「アベイル」などを展開するしまむらが代表格。ほかにも、総合アパレル企業のワールドやオンワードホールディングス、紳士服チェーンの青山商事やAOKIホールディングス、下着の分野で大きな存在感を発揮するワコールホールディングスやグンゼ、セレクトショップ(特定のブランドだけではなく、オリジナルの視点で選んだ多彩なブランド・商品を販売する店舗)のユナイテッドアローズなど、さまざまな企業がある。一方、海外企業としては、「ZARA」などを展開するインディテックス(スペイン)、「H&M」で知られるエイチ・アンド・エム ヘネス・アンド・マウリッツ(スウェーデン)、「GAP」を手がけるギャップ(アメリカ)などが有名だ。

経済産業省の「商業動態統計」によれば、2014年におけるアパレル小売業の年間販売額は11兆5000億円。前年(11兆1870億円)より2.8パーセント増え、5年連続で市場は拡大中だ。ただし、販売チャネルごとに見ると、明暗は分かれている。下記データで紹介しているように、インターネット通販を含む「その他チャネル」と、大手SPA(Speciality store retailer of Private label Apparelの略。企画から小売までを一貫して手がけるアパレル企業のこと。製造小売業と呼ばれることもある)やセレクトショップなどの「専門店チャネル」は好調。これに対し、「百貨店チャネル」や、総合スーパーなどの「量販店チャネル」は縮小傾向だ。また、都市部は訪日外国人需要という追い風もあって比較的堅調だが、地方では総じて苦戦気味といえる。

インターネット通販の拡大は、今後も続きそうだ。近年は若い世代をはじめあらゆる世代で、インターネットを通じて衣服を買うことに抵抗を感じない人が増加。そこで各社は、この分野の強化に取り組んでいる。例えば楽天は、出版社の幻冬舎と協力し、スマートフォンで見られる無料ファッション雑誌『GINGER mirror』を創刊した。誌面で紹介された女性向け衣料品を、楽天のサイトで購入できる仕組みになっている。また、ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイは、ZOZOTOWNで買った服や気になった服を組み合わせられるコーディネート提案アプリ『WEAR』を提供。利用者は増えており、同社の売り上げ増に寄与している。このように、スマートフォンを活用した新たな取り組みは、今後も活発に行われるだろう。

既存の大手アパレルメーカーも、通販サイトを強化している。「ナノ・ユニバース」などのブランドを展開するTSIホールディングスは、複数の自社ブランドを並べた総合通販サイトを縮小し、ブランド別の専用サイトを増やす方針を打ち出した。これにより、各ブランドのファンにより訴求しやすい環境を作ろうとしている。また、実店舗と通販サイトを連動させる取り組みも盛ん。「ポール・スチュアート」や「マッキントッシュ ロンドン」を手がける三陽商会は、15年8月から通販サイトと直営店のポイントを共通化し、利用者の使い勝手を向上させた。ほかにも、試着ができないことを理由に通販サイトを敬遠していた層を取り込むため、配送料無料で返品・交換に応じる企業が増えている。

このところ、日本製であることをアピールする商品が増えていることにも注目しておこう。品質にこだわる消費者は一定数存在しているし、日本製品を愛好する訪日外国人が増えたことで、日本人の間にも日本製品を再評価する動きが強まったことが背景にある。また、新興国の労働コストが高まっていることに加えて、円安が進み、日本と海外との間に以前ほど製造原価の差がなくなっていることも理由の一つだ。例えばオンワード樫山は、「五大陸」ブランドの15年春夏向けビジネス用ドレスシャツで、従来は半分程度だった国産比率を100パーセント国産にした。また、海外向けの商品を日本国内で作り、ていねいな縫製や耐久性の高さを売りにするケースも目立つ。

販売チャネル別に見た小売市場規模の推移

専門店チャネル(大手SPAやセレクトショップなど)
2010年……4兆4035億円
2014年……4兆9014億円(11.3パーセント増)
百貨店チャネル
2010年……2兆1900億円
2014年……2兆1221億円(3.1パーセント減)
量販店チャネル(大手スーパーなど)
2010年……1兆1457億円
2014年……9869億円(13.9パーセント減)
その他チャネル(カタログ通販、インターネット通販など)
2010年……1兆1838億円
2014年……1兆3680億円(15.6パーセント増)

※矢野経済研究所「国内アパレル市場に関する調査結果 2015」より。「その他チャネル」の好調ぶりが目をひく。インターネット通販だけに絞れば、成長率はさらに高い。

このニュースだけは要チェック <訪日外国人向け市場は新たな成長分野>

・免税店チェーンのラオックスが、自社ブランド「オリガミ」を携えてアパレル事業に参入。国内の工場に生産を委託し、品質の高さを武器に訪日外国人への売り込みを狙う。15年の訪日外国人数は、過去最高を記録した前年をさらに上回るペースで伸びており、この市場は有望だ。(2015年5月30日)

・「アンタイトル」「タケオキクチ」などのブランドで知られるワールドが、全社員の4分の1が希望退職制度に応募したと発表した。TSIホールディングスも2015年5月に一部ブランドの廃止と人員削減を発表しており、業績改善のためにリストラを行う企業は少なくない。(2015年8月12日)

この業界とも深いつながりが<ネット関連業界との協力が不可欠に>

ポータルサイト・SNS
ポータルサイトと連携し、通販サイトにユーザーを誘導する動きが活発化

IT(情報システム系)
モニター上で行う「バーチャル試着」など、デジタル技術を活用した取り組みに注目

繊維
寒さを防いだり通気性を高めたりする衣料品を作るには、高機能な繊維が欠かせない

この業界の指南役

日本総合研究所 シニアマネージャー 高津輝章氏

gyoukai_vol226_高津さん

一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程修了。事業戦略策定支援、事業性・市場性評価、グループ経営改革支援、財務機能強化支援などのコンサルティングを中心に活動。公認会計士。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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