インターネット音楽配信編

定額制サービスの登場で市場の活性化はなるか? 映像配信にも注目が集まる

社団法人日本レコード協会によると、2012年における有料音楽配信(インターネットを経由して楽曲を販売すること)の市場規模は543億円だった。09年(910億円)までは右肩上がりに増えていたが、10年からは縮小に転じている。一方、11年における音楽ソフト(CD、カセット、音楽ビデオなど)の市場規模は2819億円。ピーク時の1998年(6075億円)に比べて半分以下に縮小していたが、12年は3108億円と対前年比で約10パーセント上向き、長らく続いた市場の縮小傾向に歯止めがかかっている。

 

音楽ソフト全体で見ると下げ止まりの兆しが見えているのに対し、インターネット音楽配信の市場は冷え込んでいる。最大の理由は、スマートフォンの普及だ。日本のインターネット音楽配信市場は、従来型の携帯電話(フィーチャーフォン。いわゆる「ガラケー」のこと)での利用を中心に組み立てられていた。ところが、この1、2年ほどでスマートフォンの利用者が急速に増えたことで、音楽配信の仕組みがうまく機能しなくなってしまった。そこで、従来型携帯電話からスマートフォンに切り替える際に音楽配信サービスを解約する人が増え、市場の縮小につながった。また、スマートフォンの利用料金がかさんで音楽への支出を圧迫したり、ソーシャルゲームなどに利用者の時間を奪われるなどの影響も大きい。

 

動画サイトも頭の痛い存在だ。YouTubeやニコニコ動画などを利用して無料で音楽を聴くスタイルは、若い世代を中心に定着している。プロの楽曲が違法アップロードされているケースも多いし、アマチュアが高品質な作品をタダで公開することも増えてきた。そのため、わざわざお金を払ってダウンロードしたくないという人が、若い層を中心に増加している。さらに、少子化によって音楽の中心購買層であった若者が減っていることも、この業界に暗い影を落としている。

 

ただし、スマートフォン・タブレット端末向けの音楽配信サービスも、徐々に仕組みが整ってきた。キーワードは「定額制」だ。これまでは楽曲をダウンロードするごとに料金を支払うサービスが中心だったが、今後は定額料金を支払うことで音楽が聞き放題になるビジネスモデルが勢力を伸ばすと見られている。例えば、NTTドコモの「dヒッツ powered by レコチョク」は月額315円で音楽が聴き放題となるサービスで、開始から10カ月後の13年5月には契約数が100万件を突破した。ほかにも、auの「うたパス」や、ソニーエンターテインメントネットワークの「Music Unlimited」など、さまざまな定額制サービスがスタート。今後も新サービスの登場は十分に可能性があるし、競争の激化で楽曲の拡充やサービスの改善なども進むだろう。「定額制」で取り込んだ利用者を、お気に入り楽曲のダウンロードや、ライブへの集客など、様々な音楽サービスへとつなげていくことが、有料音楽配信市場のみならず、音楽業界全体の発展にとっての重要な課題だ。

 

また、端末の画面サイズの拡大やデータ通信の高速化は、映像配信にとって追い風となっている。音楽ソフト市場全般で見ると、音楽ビデオの占める割合は増える傾向。そのため、インターネット音楽配信市場でも映像に力を入れようと考えている企業は少なくない。また、ネットならではの新サービスを考えて音楽を聴くシーンを生み出すことも、各社にとって大きなテーマと言えるだろう。

押さえておこう <インターネット音楽配信業界志望者が知っておきたいキーワードとは?>

ストリーミング
ダウンロード後に再生するのではなく、データを受信しながら同時に再生を行う方式。楽曲をダウンロードする場合は曲ごとに販売金額が設定されるのが一般的だが、最近ではストリーミングを用いて定額で聴き放題となるサービスが増えてきている。

アーティストアプリ
スマートフォンで、アーティストに関する情報を簡単にチェックできるようにするソフト。アーティストアプリを入り口に、ライブへの集客や、グッズ販売など、さまざまなサービスへの展開が可能となる。

DRM
Digital Rights Management(デジタル著作権管理)の略。楽曲などの著作物をインターネット上で流通させる際に、無制限な利用や複製を防ぐ技術や仕組みのこと。デジタル化された楽曲を適切に管理することは、著作権保護のために重要だ。

要チェックニュース! <スマホ向け新サービスが続々と登場>

・米グーグルが、スマートフォン向けの定額制音楽配信サービス「Google Play Music All Access」を開始すると発表した。月額9.99ドルで、数百万曲が再生可能。まずはアメリカで提供を開始し、いずれは他国でも展開される予定で、業界全体に大きなインパクトを与えそうだ。(2013年5月15日)

 

・ディー・エヌ・エーが、スマートフォン向けの音楽配信サービス「Groovy」を開始すると発表。楽曲を有料で購入することはもちろん、無料で手に入れることも可能な「チケット」を使ってストリーミング再生することもできる。また、SNS的な要素を取り入れて、ファン同士のつながりが生まれる仕組みが盛り込まれている点も特徴。(2013年3月28日)

つながりの深い業界 <携帯電話キャリアとは強い結びつきがある>

携帯電話キャリア
携帯端末向けネットワークの高速化が、映像コンテンツの普及を後押ししそう
テレビ
ドラマやアニメなどの主題歌をダウンロード販売するなど、緊密な関係がある
出版
デジタル書籍と音楽をセット販売するなど、協力関係が深まる可能性がある

 

この業界の指南役

日本総合研究所 主任研究員 吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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