トルコのイスタンブールにある日系企業の現地法人に勤務。ヨーロッパとアジアとにまたがる地の利を生かして、休日や長期休暇を利用した家族旅行に出るのが現地での楽しみ。
イスタンブールにはヨーロッパ側とアジア側がある
こんにちは。クルムズベヤズです。今回は、イスタンブールでの暮らしについてお話しします。
現在の住まいは、会社を通じて知り合いの不動産会社に依頼して見つけました。会社からあまり遠くないことを一番の条件としたのですが、これが難しい。なぜなら、会社は、騒音などの関係からアジア側にある郊外に建てられているのですが、ほとんどの日本人駐在員はヨーロッパ側の市街地に住んでいるのです。ところが、暮らしやすいヨーロッパ側からアジア側に通勤しようとすると、2つしかない橋のいずれかを使わなければならず、帰りはまず間違いなく大渋滞に巻き込まれてしまいます。平均で2時間、ひどいときは3時間もの間、車に閉じ込められて通勤するよりは、アジア側に住んで、少しでも家族との時間を確保したいと考え、決断しました。
トルコで暮らしていて感じるのは、食に対してとても保守的だということ。ほかの国の人も多かれ少なかれそうだと思いますが、とにかく自分の国の料理が世界で一番おいしいと信じています。そのため、なかなかほかの国の食文化が浸透しません。元来、新しいモノ好きなので、いろいろな国のレストランが開店してはいるものの、いつの間にか味がトルコ風にアレンジされてしまうのです。そのせいか、日本の食材を探すのも一苦労。イスタンブール市内に1軒だけ、日本食材を置いている店があるのですが、厳密にいうと、売られているのは、日本から調達したものではなく、日本以外で生産されたものだけ。しかも、トルコは関税が高いこともあり、元の値段よりもかなり高額になってしまいます。例えば、緑茶の関税は145パーセントと、非常に高い水準です。
そこで、日本の食材は、もっぱらトルコ国外で調達したり、会社の送付制度を利用しています。イギリスやドイツ、ベルギーなど、日本人が多く住む国や都市には、純粋な日本産食材を扱っている店があり、小旅行の折などに訪れては、重宝しています。日本で買うよりは割高ですが、貴重な調達源です。
会社の送付制度とは、会社に規定の重量までの輸送費を負担してもらって日本の食材を購入する制度です。トルコの日系企業は大体この制度を採用しており、私たちもその恩恵に浴しています。ただし、ここトルコでは、品物がスムーズに手元に届くことなど、まずありません。通関で止められていたりするケースがほとんどで、ひどい時は1カ月くらい放置されてしまいます。そのため、家族一同、賞味期限には大分寛容になりました(笑)。賞味期限を気にしていると、心ゆくまで味わえなくなってしまうためです。
女性の目の前で着替えるのはタブー
トルコは、国民の99パーセントがイスラム教を信仰しているイスラム国家ですが、中東諸国のように厳格な戒律によって縛られているわけではなく、政教分離を原則とした世俗主義を貫いています。戒律で禁じられているはずのお酒を飲んだり、礼拝に行かないトルコ人も珍しくありません。ラマザン(断食月)時期のイスタンブールでは、構わずに飲食している人も見かけます。
とはいえ、信仰の形や深さには地域差があり、イスタンブール以外では、非常に敬虔(けいけん)なイスラム教徒も目にします。現に、ここイスタンブールでも、たまにヒヤっとすることがあります。週末に日本人駐在員で集まってサッカーを楽しんでいるのですが、ある日、サッカーが終わった後に更衣室まで行くのが面倒だったので、更衣室ではないところで着替えをしたところ、たまたまそこにいた管理人の女性に、「女性の前で肌を見せるとは何事だ!」と、こっぴどく叱られたのです。上半身裸になった程度だったのですが、それだけでもイスラムの女性の目の前では失礼だったということなのでしょう。それ以来、迂闊(うかつ)な行動をしないように部員一同、気をつけています。
イスタンブールは、実はヨーロッパへのアクセスがとても良い街です。飛行機を使えば、ミラノまで2時間半、パリまでも3時間半かからずに行くことができるので、「週末を利用して、ちょっくら行ってくるわ!」みたいなノリで気軽に小旅行が楽しめます。私たち家族も、ブリュッセル、フランクフルト、パリ、ロンドン、ミラノといったヨーロッパの都市をすでに訪れました。トルコ国内でも、風光明媚なアンタルヤや、世界遺産のあるカッパドキアといった街を今までに巡っています。子どもがまだ小さいため、なかなか遠出はできませんが、最近では、クロアチアのドゥブロブニクとスペインのバルセロナにも行ってきました。
次回は、私とトルコ語のかかわりについてお話しします。
自宅付近の風景。アジア側ということもあり、街並みは賑やか。
主にトルコ国外で調達した日本の食材。特に調味料は貴重な和食材だ。
イスタンブールにある日本庭園。「鯉のぼり祭り」も行われる。
週末は駐在員仲間とのサッカーが楽しみ。自分でプレイするだけでなく、プロの試合を観戦することも。
クロアチアのドゥブロヴニクは「アドリア海の真珠」とも呼ばれる美しい街並みと海岸線を誇っている。
カッパドキアにある「キノコ岩」。火山灰と強い風によってできたと言われている。
構成/日笠由紀