鉄鋼編

アベノミクスや東京オリンピックが追い風に。コスト削減と高付加価値品の開発が成長のカギ

鉄鋼メーカーは、「高炉」を使って鉄鉱石から鉄を生み出す「高炉メーカー」、鉄スクラップから「電炉」を使って鉄を生み出す「電炉(電気炉)メーカー」、高度な鉄合金を生産する「特殊鋼メーカー」に大別できる。高炉メーカーの代表格は、新日鐵住金、JFEホールディングス、神戸製鋼所、日新製鋼の大手4社。このうち新日鐵住金は、2012年10月に新日本製鐵と住友金属工業が大型合併して生まれた企業だ。また、電炉メーカーには東京製鐵や大和工業、特殊鋼メーカーには大同特殊鋼、日立金属などがある。

 

経済産業省の「鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計年報」によれば、07年の国内粗鋼生産量は1億2020万トン。ところが、12年には1億723万トンと1割以上落ち込んでいた。背景には、リーマン・ショック以降の世界的な不況による需要停滞、長く続いた円高による競争力低下、低価格を武器にシェアを拡大してきた韓国・中国メーカーとの競争激化などが挙げられる。しかし、12年に自民党政権が誕生し、いわゆる「アベノミクス」によって円高是正・建設需要の回復などが進んだことで、各社の業績は急回復を遂げている。例えば新日鐵住金では、13年度第1四半期(4-6月期)の経常利益が865億円の黒字と、前年同期(統合前の2社合算は17億円の赤字)から業績が大幅に改善。JFEホールディングスは352億円、神戸製鋼所は171億円で、こちらの13年度第1四半期経常利益も大きく伸びた。世界最大手のアルセロール・ミタル(ルクセンブルク)などの海外勢が伸び悩んでいるのに比べ、日本メーカーの好調ぶりは目立っている。

 

20年に東京オリンピックの開催が決まったことも、国内の鉄鋼各社にとって大きなニュース。スタジアムやホテルなどの建設、高速道路や鉄道などのインフラ整備が進むと予測されるため、鉄鋼の需要も拡大が期待できそうだ。ただし、楽観ばかりはしていられない。世界的に見れば、中国メーカーによる増産などの影響で、鉄は生産過剰の状況が続いていると言われる。そこで各社には、価格競争に陥りにくい高付加価値製品分野の強化とコスト削減によって、利益を確保していくことが求められている。

 

高炉メーカーでは、一部の高炉を停止することで、コスト削減、付加価値向上を目指す動きが相次いでいる。例えば新日鐵住金は13年3月、君津製鉄所(千葉県君津市)に3基ある高炉のうち、1基を休止することを発表。古い高炉を休止し、残り2基に集約することで効率的な生産体制の確立を目指す。神戸製鋼所も13年5月に、神戸製鉄所(兵庫県神戸市)の高炉を休止し、加古川製鉄所(兵庫県加古川市)に生産を集約してコスト削減を目指す方針を発表した。ほかにも、下表に示したような取り組みを通じ、各社は付加価値向上・コスト削減を目指している。

 

二酸化炭素削減への取り組みも、業界全体で進められている。高炉や電炉の運用には莫大なエネルギーが必要で、鉄鋼業界は製造業の中で最も多くの二酸化炭素を排出しているからだ。生産設備の効率化、排出された熱エネルギーの有効利用などは、各社にとって引きつづき課題となるだろう。

 

押さえておこう <鉄鋼メーカーの付加価値向上、コスト削減に関する取り組み>

不純物除去の効率化
鉄鋼各社は、鉄から不純物を取り除く設備の整備を進めている。リンなどの不純物を低コストで除去できれば、安価な鉄鉱石を使用することが可能。そのため、原材料費のコストダウンが期待できる。
家電メーカーと協力して廃鉄循環の仕組み作り
東京製鐵は、パナソニックと協力して冷蔵庫や洗濯機などの廃家電を回収。ここから得られた良質の鉄スクラップを原料に、パナソニックグループ向けの鋼板を生産する流れの構築を目指している。鉄鋼メーカー、家電メーカーの双方に利益がある新手法として注目。
自動車向け高付加価値鉄鋼の開発
省燃費化への取り組みが急ピッチで進められている自動車業界では、薄くても十分な強度を持ち、加工もしやすい鉄鋼が強く求められている。こうした高付加価値鉄鋼は、技術力で勝る日本メーカーにとって得意分野と言えそうだ。

このニュースだけは要チェック <二酸化炭素削減に関するニュースに注目>

・新日鐵住金など大手高炉メーカー4社が日本鉄鋼連盟などと共同で、二酸化炭素削減技術を確立するための試験高炉を建設すると発表した。これは、業界を挙げて進めている「革新的製鉄プロセス技術開発(COURSE50)」の一環。酸化した鉄から酸素を奪う「還元」に水素を使うのが特徴だ。(2013年8月6日)

・新日鐵住金が、トヨタ自動車に納入する鋼板を2年ぶりに値上げすることで合意。円高が是正されて自動車メーカーの業績が好転したことが、鋼板価格にも反映された格好。価格上昇の動きは自動車業界だけにとどまらず、電機、造船などの他業界でも広まりそうだ。(2013年7月22日)

この業界とも深いつながりが <自動車、建設業界などが大口顧客>

自動車
付加価値の高い鋼板を提供して燃費改善に貢献するなど、密接な関係

建設
高層ビルや橋といった大規模な建築物には、大量の鉄鋼が使われる

電力・ガス
鉄鋼業界は非常に多くの電力を消費するため、電力会社との関係は深い

 

この業界の指南役

日本総合研究所 副主任研究員 高津輝章氏

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一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程修了。事業戦略策定支援、事業性・市場性評価、グループ経営改革支援、財務機能強化支援などのコンサルティングを中心に活動。公認会計士。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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