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掲載日:2013年2月18日

Vol.161 建設編

震災復興需要で業績回復も、経営力強化は不可欠。技術を生かした新施設建設と海外進出に活路を見いだす

技術力や作業効率の高さは、日本の建設企業にとって強み。各社は質の良い建物や土木施設を短い工期で仕上げることによって、アジアなど海外での評価を高めつつある。

国土交通省の「平成24年度建設投資見通し」によれば、2010年度における日本国内の建設投資額は40.9兆円。ピーク時の1992年度(84.0兆円)に比べ、半分以下に落ち込んだ。一方、10年度における建設業界の就業者数は、ピーク時の97年に比べて27パーセント減。許可業者数はピーク時の97年に比べて17パーセント減だった。建設需要の落ち込みに比べて、就業者・企業数の減少幅は小さい。したがって、業界内の競争はますます激化する傾向にある。

長期にわたり、縮小傾向が続いてきた建設業界。しかし、東日本大震災の復興予算が計上されたため、11年度の建設投資額は対前年度比2.7パーセント増の42.0兆円となる見込み。12年度も45.3兆円と増加する見通しとなっている。震災復興需要により、しばらくの間、建設業界の業績は順調に推移しそうだ。ただし、人手不足によって技能工の単価が上昇しているため、各社の収益を圧迫しているのは懸念材料。これに対応するため、被災三県(岩手県、宮城県、福島県)では、契約後に労務単価が上昇した場合に請負代金を変更する「インフレスライド」の適用が始まっている。

復興需要が一巡した後は、新たな需要増は期待しづらい状況だ。そこで近年では、合併によって経営力の強化を目指す企業も少なくない。例えば、準大手ゼネコンの安藤建設と間組が13年4月に合併し、新会社「安藤・間」として再出発。このように、準大手以下の企業を中心に、業界再編の機運が高まっている。ただし、ゼネコン同士の場合、機能の重複が大きいために合併の効果が得られにくいとも言われる。そこで、12年8月、住宅メーカー大手の大和ハウス工業が準大手ゼネコンのフジタを買収したように、異業種間の合従連衡が広がる可能性もあるだろう。

海外進出も、国内市場の縮小に悩む大手建設会社にとって重要な課題。大手ゼネコンは、過去に高速道路や鉄道などの「土木工事」で大きな損失を出した経験があるため、相対的に、ビルや工場などの「建築工事」に力を入れている。特に目立つのが、海外での生産体制構築を急ぐ日本企業から、工場建設などの案件を受注するケースだ。こうした状況に対応し、各社はアジアなどに現地法人を相次いで設立している。

国内の建設会社にとって、最大の強みは技術力。無線を使って建設機械を遠隔操作する「無人施工技術」、耐震(建物の構造を強化して地震に耐えられるようにすること)・免震(地面と建物の間に免震装置を据え付け、建物に振動が伝わらないようにすること)・制震(屋上や壁に振動を軽減する装置を組み込み、建物の揺れを抑えること)関連の技術は、大きな需要が期待されている。また、新技術を生かした施設の建設に力を入れる企業もある。例えば大林組は、安全な野菜を天候に左右されずに生産可能な「植物工場」を、千葉大学と共同で開発すると発表。初期費用と運用コストを、これまでより3割安くできるとしている。ほかにも、省エネ、土壌浄化、メガソーラー、ITといった分野でも、新たな需要の掘り起こしが進みそうだ。

【押さえておきたい情報をピックアップ!】

主な建設会社を整理しておこう

大手(スーパーゼネコン)
※連結売上高1兆円以上
鹿島建設、清水建設、大成建設、大林組、竹中工務店
準大手
※連結売上高2000億円〜1兆円
長谷工コーポレーション、戸田建設、五洋建設、三井住友建設、前田建設工業、フジタ、西松建設、熊谷組、東急建設

※各社の決算報告資料より独自に作成。ほかにも、売上高2000億円未満の中堅企業や、「マリコン」(マリン・コンストラクターの略。埋め立て工事や海底工事など、海洋土木事業に強い建設会社のこと)など、多くの企業がある。

【このニュースだけは要チェック!】

海外での商機拡大に注目

・三井住友建設が、ベトナム・ハノイ市の高架道路建設工事を、契約時工期(30カ月)の半分である15カ月で完成にこぎ着けた。従来の工法に工夫と改善を加え、高い品質を保ちながら納期の短縮に成功したのは、日本企業ならではの強みを発揮したからこそ。(2012年10月25日)

・国土交通省が「第2回日・インド建設会議」を開催。日本の建設会社による講演や、両国企業のビジネスマッチングなど行われた。このように、日本企業が海外進出を進めるため、政府と一体化した取り組みが活発化している。(2012年10月31日)

この業界の指南役
日本総合研究所 コンサルタント 田中靖記氏
日本総合研究所 コンサルタント 田中靖記氏
大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修修了。専門は、新規事業・マーケティング・海外市場進出戦略策定。鉄道・住宅・エネルギー等、主に社会インフラ関連業界を担当。また、インド・ASEAN市場開拓案件を数多く手がけている。
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取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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