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Vol.358 機械編

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グローバルな競争は激しい。機械同士を連携させて価値を生み出そうとする動きが盛んに

ここでは、「建設機械」「工作機械」「産業用ロボット」について取り上げる。建設機械に該当するのは、油圧ショベル、ブルドーザー、道路舗装機械、クレーンなど。建物や道路を造ったり、鉱山の開発をしたりする際に利用される。工作機械とは、旋盤、ボール盤、フライス盤、研削盤、マシニングセンタといった、金属や樹脂などを加工する機械。機械部品なども工作機械で作られるため、「マザーマシン(機械を作る機械)」とも呼ばれる。そして産業用ロボットは、工場ラインなどに設置され、人間に代わって部品の取り付けや溶接などの作業を行う機械だ。

 

国内の建設機械メーカーとしては、コマツ、日立建機、コベルコ建機などが代表格。外資系企業としてはキャタピラー(米国)などが挙げられる。工作機械の分野では、ファナック、ヤマザキマザック、アマダなどの国内メーカー、シーメンス(ドイツ)などの外資系メーカーが有力だ。産業用ロボットは、ファナックや安川電機などの国内メーカー、KUKA(ドイツ)、ABB(スイス)などの外資系メーカーがよく知られた存在だ。

 

一般社団法人日本建設機械工業会によれば、2016年における建設機械の出荷額は、対前年比7.4パーセント減の2兆1428億円。工作機械の総受注額は、対前年比15.6パーセント減の1兆2500億円。これに対し、一般社団法人日本ロボット工業会によると、産業用ロボットの総受注額は対前年比5.2パーセント増の7393億円だった。中国の景気が減速した影響を受け、建設機械と工作機械の市場は落ち込んだ。一方、中国での自動車生産拡大や人件費高騰、国内で生産性向上を目指す動きが活発化したなどが後押しし、産業用ロボットへのニーズは拡大している。

 

建設機械、工作機械、産業用ロボット業界に共通しているのは、景気変動の影響を受けやすい点だ。不景気になると企業は設備投資を控えて機械類を買い控えるようになり、逆に好景気が訪れると、設備投資を積極的に行うようになるからだ。例えばリーマン・ショック後の2009年には、建設機械の総出荷額が対前年比42.6パーセント減、工作機械の総受注額が68.4パーセント減、産業用ロボットの総受注額が56.5パーセント減と大幅に落ち込んだ。そのため、これらの業界を志望する人は、建設業界や自動車業界、家電業界といった「機械を使う業界」への目配りも欠かせないだろう。

 

海外輸出比率が高いのも各業界の共通点だ。例えば、2016年度におけるコマツの海外売上比率は78.2パーセント。また、ファナックの海外売上比率は78.3パーセントだった。市場全体で見ても、建設機械出荷額の55パーセント、工作機械受注額の58パーセント、産業用ロボット出荷額の69パーセントが海外向けであり、海外企業との競争は避けては通れない。

 

機械業界は、今まさに転換点を迎えている。建設業界や自動車業界などでは人件費の高騰や熟練技能者の減少などが進み、人から機械・ロボットへの置き換えが強く求められているからだ。その象徴が、「インダストリー4.0」(下記キーワード参照)。さまざまな現場でIoT(下記キーワード参照)技術の導入が進み、機械の統合制御・自動化による新たな付加価値提供を目指した動きが加速している。例えば、コマツは国土交通省が推進する建設現場の生産性革命「i-Construction」(下記キーワード参照)に対応した建設機械の販売を開始。より安全性が高くて誰でも操作しやすい、そして場合によっては無人で動かせる建設機械の開発を進めている。ファナックも、製造現場の工作機械や産業用ロボットをつなぎ、データを相互利用可能にするサービス「FIELD system」(下記ニュース参照)の運用を開始した。このように、ITを活用した新たなサービス、商品の広がりにはぜひ注目しておきたい。

 

機械業界志望者が知っておきたいキーワード

インダストリー4.0
ドイツ政府が推進する、製造業における「4回目の産業革命」のこと(1回目の産業革命は蒸気機関の発明による機械化、2回目はベルトコンベア方式による大量生産、3回目はプログラミングによる生産工程の自動化を指す)。製造プロセス全体をデジタル化して統合することで、工場の生産性向上を目指すもの。類似する概念を含むものには、Society5.0(日本)、インダストリアルインターネット(米国)、メイド・イン・チャイナ2025(中国)もある。

IoT
Internet of Thingsの略で、「モノのインターネット」と訳される。身の回りのさまざまなモノがインターネットに接続され、データがやり取りされることを指す。例えば、建設機械、工作機械、産業用ロボットをインターネットに接続して情報を収集することで、稼働状況を把握して故障予知に役立てたり、離れた場所から操作したりすることが可能になる。

i-Construction
測量・設計から、施工、管理に至るプロセスを、情報・通信技術を活用して建設現場の生産性を改革しようとする動きで、国土交通省が導入を表明している。建設機械メーカーも、「i-Construction」に対応した製品の開発・販売を行っており、今後の需要拡大が期待されている。

このニュースだけは要チェック<先端技術の活用を目指す動きが活発>

・コマツが、「i-Construction」に対応したICT油圧ショベルを発売。GPSや、インターネット経由で得られたさまざまな情報を活用してオペレーターの操作を楽にするなど、最新技術によって作業効率の向上を実現している。(2017年8月31日)

 

・ファナックが、製造業のオープンプラットフォーム「FIELD system」の運用を開始した。これは、製造現場のさまざまな機械を、メーカーなどの壁を超えて接続できるようにした仕組みのことで、機械同士が連携しながら効率アップを目指す基盤となり得る。(2017年10月3日)

 

この業界とも深いつながりが<自動車業界の景況は機械業界に大きく影響>

自動車メーカー
自動車業界は、工作機械、産業用ロボットにとって最大の需要先

電子部品メーカー
IoT化により、機械類は多くのセンサー・ネットワーク関連部品を搭載

建設
土木建築には、ブルドーザーやショベルカーなどの建設機械が欠かせない

 

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門未来デザイン・ラボ コンサルタント
橘田尚明氏

橘田尚明

東京大学大学院技術経営戦略学専攻修士課程修了。新規事業テーマ構築支援、未来洞察のコンサルティングを中心に活動。米国公認会計士。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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