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Vol.359 自動車メーカー編

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世界市場は順調に拡大中。環境規制への対応で「次世代自動車」への移行が加速している

国内の自動車メーカーには、トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車、SUBARU、マツダ、スズキなどがある。一方、海外企業としてはフォルクスワーゲン(ドイツ)、ゼネラルモーターズ、フォード(共にアメリカ)、現代自動車(韓国)、ルノー(フランス)などが代表格だ。

 

国際自動車工業会によると、2016年における世界全体の自動車販売台数は、前年比4.7パーセント増の9386万台。市場は7年連続で拡大している。中でも好調なのが、世界最大の市場である中国だ。小型車(排気量1600 ㏄以下)の自動車取得税が10パーセントから5パーセントに減税された影響で、販売台数は前年比13.7パーセント増の2803 万台と大きく伸びた。また、アメリカ(0.1パーセント増、1787 万台)、EU(7.0パーセント増、1699 万台)、インド(7.1パーセント増、367 万台)、ASEAN(2.0パーセント増、317 万台)などでも、市場は拡大している。一方で、日本市場は前年比1.5パーセント減の497万台にとどまった。原因としては、人口減少や若者の「車離れ」、2015年4月に行われた軽自動車に対する増税などが挙げられる。そのため、日本メーカー各社は海外市場、特に北米・アジアへの依存度を高めている(下記データ参照)。

 

自動車業界にとって大きな課題となっているのが、世界各国で厳格化されている環境規制(燃費や二酸化炭素排出量を対象にした規制)への対応だ。例えば、二酸化炭素の排出量規制が厳しいEUは、現在1キロメートルあたり130グラム以下としている排出量を、2021年に95グラムまで削減するよう定めている。こうした動きに連動し、オランダとノルウェーでは2025年、ドイツでは2030年、イギリスとフランスでは2040年までに、ガソリン車やディーゼル車(以下「内燃エンジン車」)の販売を禁止する方針を発表。また、アメリカや中国でも、同様の検討が進められている。そこで日本メーカーも、長期的な視点で対応を進めているところだ。例えばトヨタ自動車は、2050年までに一部地域を除いてハイブリッド車を除く内燃エンジン車の生産をやめ、燃料電池車やハイブリッド車を含む電気自動車(以下「次世代自動車」)に移行する方針を打ち出している。

 

こうした事情もあり、次世代自動車の市場は着実に伸びている。特に最大市場の中国では、補助金や税制優遇によって次世代自動車の市場が急拡大。2012年に1.3万台だった販売台数は、2016年には50.7万台にまで伸びた。中国では、政府が各メーカーに一定割合以上の燃料電池車・電気自動車を販売するよう義務づけていることもあり、さらに次世代自動車の売れ行きに勢いが付きそうだ。

 

技術動向にも目を向けておきたい。安全性を高め、運転者の負担を減らす「自動運転」への取り組みは、各社が力を入れているところ。また、環境規制の強化などによって燃費向上が求められているため、「車体の軽量化」も大きな研究テーマとなっている。そこで注目されているのが、鉄に代わる素材だ。特に炭素繊維は、「軽く(比重が鉄の1/4)、強く(強度が鉄の10倍)、硬い(硬度が鉄の7倍)」素材として注目されている。特に欧米の自動車メーカーは、材料メーカーとの提携に積極的。例えば、ダイムラー(ドイツ)が東レ、ゼネラルモーターズが帝人、フォードがダウ・ケミカル(アメリカ)と共同で、自動車向け炭素繊維複合材の開発を進めている。ただし、一般に炭素繊維は再利用が難しく、現状は焼却や埋め立てが主流となっているが、長期的にはリサイクルについても目を向けることが必要だ。すでに、欧州企業と中国企業がタッグを組み、炭素繊維のリサイクル材を活用した電気自動車の検討を始めた事例もある(下記ニュース記事参照)。この点、日本メーカー各社はリサイクル材を含む炭素繊維の採用に関して、やや乗り遅れ気味。今後の巻き返しに期待したい。

 

国内主要3社のすべてで、アジアでの売上比率が高まる傾向

トヨタ自動車
2006年度売上高の地域構成比
日本47パーセント、北米29パーセント、欧州11パーセント、アジア7パーセント、その他6パーセント

2016年度売上高の地域構成比
日本42パーセント、北米30パーセント、欧州8パーセント、アジア13パーセント、その他6パーセント

本田技研工業
2006年度売上高の地域構成比
日本15パーセント、北米54パーセント、欧州11パーセント、アジア12パーセント、その他8パーセント

2016年度売上高の地域構成比
日本24パーセント、北米47パーセント、欧州5パーセント、アジア20パーセント、その他4パーセント

日産自動車
2006年度売上高の地域構成比
日本41パーセント、北米36パーセント、欧州13パーセント、アジア・その他11パーセント
※日産自動車の2006年度売上高では、「アジア」と「その他」が合算されている。

2016年度売上高の地域構成比
日本30パーセント、北米41パーセント、欧州12パーセント、アジア10パーセント、その他7パーセント

このニュースだけは要チェック<先端技術の活用を目指す動きが活発>

・イギリスの炭素繊維リサイクル企業であるELGカーボンファイバー社が、中国の自動車メーカーの奇瑞汽車(Chery New Energy Automobile Technology)が開発する電気自動車「Chery eQ1」向けに、リサイクル炭素繊維複合材を開発していくと発表した。(2017年2月15日)

 

・日産自動車は、資格を持たない従業員が完成車の検査を実施していたと発表。大規模なリコールや、納車遅れが起きる可能性がある。SUBARUでも同様の発表を行っており、両社の業績や、業界全体に与える影響などにはぜひ注目しておきたい。(2017年9月30日、同10月27日)

 

この業界とも深いつながりが<炭素繊維の採用に向け繊維メーカーと協力>

繊維
軽くて強くて硬い炭素繊維は、自動車の車体への採用が増えそうだ

電子部品メーカー
自動運転などを実現するため、現代の自動車は大量の電子部品を搭載

損害保険
自動運転が広まると、新たなタイプの自動車保険の登場が求められる

 

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 未来デザイン・ラボ コンサルタント
小林幹基氏

kobayashi_sama

京都大学大学院情報学研究科修士課程修了。大手電機メーカー、ニューヨーク大学客員研究員を経て現職。専門は、海外進出戦略、事業戦略、未来洞察による新規事業開発。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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