家電量販店編・2015年【業界トレンド】

住宅リフォーム、携帯電話、医薬品など、家電以外の分野を強化して売り上げ増を狙う

市場調査会社であるジーエフケー マーケティングサービス ジャパンの「2014年 家電・IT市場動向」によると、14年における家電製品の国内小売額は、対前年比1.2パーセント増の7兆5400億円だった。3月までは、消費税増税前の駆け込み需要で大活況。4月以降は反動がみられたものの、タブレット端末の売り上げ増、洗濯機・掃除機などの成長などが牽引(けんいん)役となり、通年では前年を上回っている。

ただし、ヤマダ電機、ビックカメラ、エディオン、ケーズホールディングス、ヨドバシカメラといった大手家電量販店の業績は、必ずしも明るいとは言えない。背景にあるのは、アマゾンに代表されるインターネット通販の拡大だ。前出の「2014年 家電・IT市場動向」によれば、家電業界におけるネット通販の構成比は徐々に拡大しており、14年は初めて10パーセントを超えた。家電は、同じ商品であればどの販売チャネルで買っても品質は変わらない。そのため、自宅で簡単に購入でき、値段も比較的安いネット通販は、今後もシェアを伸ばす可能性が高いだろう。

そこで大手家電量販店は、家電製品以外の分野を強化することで売り上げ増を目指している。例えば、ビックカメラは11年8月、調剤薬局のクオールと提携して医薬品販売に参入。また、日用品やお酒、食料品を販売する家電量販店も少なくない。そして、近年目立つのが住宅関連事業に取り組む動きだ。ヤマダ電機は、11年10月に大阪の住宅メーカーのエス・バイ・エルを買収。13年8月には、エディオンが住宅設備メーカーのLIXILグループとの提携を発表した。スマートハウス(太陽光発電や燃料電池などを使った自家発電システム、蓄電池、各種センサーを組み合わせ、エネルギー消費の最適化を目指した住宅のこと)への関心が高まる中、住宅のリフォーム・販売を手がけながら、省エネ家電も売り込むのが各社の狙いだ。

携帯電話ビジネスへの進出・強化に乗り出す企業も目立つ。14年11月、ビックカメラは子会社を通じて「ドコモショップ」の運営会社を買収すると発表。また、神奈川県周辺を地盤とする家電量販店のノジマも、14年11月に携帯電話販売代理店を買収すると発表した(下記ニュース記事参照)。通信端末の販売は伸びるとみられており、同様の動きが起こる可能性は今後もあるだろう。また、安価にデータ通信を利用できる「格安スマホ(SIMフリー端末などと呼ばれることもある)」も、注目の分野。ビックカメラの「BIC SIM(ビックシム)」、ヨドバシカメラの「ワイヤレスゲート WiFi+LTE」、ヤマダ電機の「YAMADA SIM」など、各社が格安スマホサービスを展開。大手スーパーであるイオンが手がける「イオンのスマートフォン」などとシェアを争っている。

グローバル化への対応も進んでいる。訪日外国人客が増えたことで、家電量販店における外国人向け売上高は増える傾向。特に、国際空港に近い店舗、大都市圏にある店舗では、外国人観光客への対応力が重要だ。また、海外出店を目指す企業もある。例えば、ノジマは14年6月、カンボジア・プノンペン市で家電量販店を開業した。ただし、海外事業の一部撤退を決めた企業もあり、今後の成り行きには注意が必要だ。

家電量販店志望者が知っておきたいキーワード

SIMフリー
携帯端末の利用者を識別する「SIMカード」のロックを解除し、どのSIMカードでも携帯端末に差し込んで使えること。SIMロックフリーとも呼ぶ。安価なネット回線と組み合わせることにより、比較的低料金でスマホが使えるようになる。
MVNO
Mobile Virtual Network Operator(仮想移動体通信事業者)の略。携帯電話キャリアからネットワークを借りて通信事業を行う事業者のこと。各家電量販店は、MVNO事業者と手を組んで格安スマホを提供している。
爆買い
外国人旅行者が猛烈な勢いで買い物をする様子を指した言葉。円安によって日本での買い物に割安感が出たこと、免税制度の拡大、アジアからの旅行客の購買力アップなどが背景にある。家電量販店でも、外国人向けの売り上げがかなりの割合を占めている。
即日配送エリア拡大
各社は物流拠点の新設・拡充などによって配送網を強化し、「即日配送」「翌日配送」のエリア拡大を進めている。配送時間を短くすることで利便性を高め、アマゾンなどのインターネット通販専業会社に対抗するのが目的とみられる。
スマート家電(スマホ家電)
スマートフォンと連動して使える家電のこと。スマホの普及に伴い、「レシピを電子レンジにダウンロードして調理」「体重計で測った身体データを専門家にチェックしてもらう」「外出先からエアコンを操作し、帰宅時には快適な気温に」といった使い方が実用化できるのではないかと期待されている。

このニュースだけは要チェック <家電製品以外に進出する取り組みが活発>

・ノジマが、携帯電話販売代理店のアイ・ティー・エックス(ITX)の買収を発表。ノジマの14年3月期売上高が2184億円であるのに対し、ITXは2573億円。ノジマとしては、多額の買収金額を引き受けるリスクを負いつつも、携帯電話販売の成長に賭けた格好だ。(2014年11月18日)

・ヨドバシカメラが、インターネット通販サイト「ヨドバシ・ドット・コム」で医薬品の取り扱いを開始。すでに医薬品のネット販売に乗り出しているコジマ、ビックカメラなどに続いた。家電以外の品ぞろえを強化し、アマゾンなどの総合ネット通販サイトに対抗する。(2014年8月8日)

この業界とも深いつながりが <住宅関連企業のM&Aは引き続き可能性あり>

住宅メーカー
スマートハウス事業で協力。家電量販店が住宅関連企業を買収するケースも

デジタル家電
テレビなどのデジタル家電は重要な商品。キャンペーンなどで協力も行う

eコマース
ネット通販の品ぞろえを強化し、アマゾンなどのeコマース企業に対抗

この業界の指南役

日本総合研究所 副主任研究員 粟田 輝氏

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慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。専門は経営・事業戦略、各種戦略策定・実行支援や事業性評価。幅広い業界・規模の企業を対象としている。最近では、今後さらなる発展が期待されるブラジル市場に注目し活動中。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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