就活は人生を決める一大事だから、頭では「やらなくちゃ」と思いながらもエンジンがかからず、悩んでいる学生は少なくないはず。そのうちに誰かが内定を取ったという話を聞き、自分とのギャップに気分はますます落ち込むばかり…。こんな状況をリセットし、就活へのやる気を出すにはどうすればいいのでしょうか?
そこでご登場いただいたのが、世界中のモチベーションに関する研究を集めた『図解モチベーション大百科』の著者・池田貴将さん。就活にやる気が出ないと悩む学生に、行動心理学的なエビデンス(根拠)に基づいた、「やる気アップ」のメソッドを伝授してもらいました。
→ESが書けない、友達だけに内定が…。「うまくいかない」「へこみそう」そんなときをめげずに乗り切る方法はコチラ
早稲田大学卒業。行動心理学・リーダーシップの研究に基づいたセミナー、サービス、コンサルティング、出版などを手がける。著書は『覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰』『図解モチベーション大百科』(いずれもサンクチュアリ出版)など、累計55万部を突破。会員制度・オンラインサロン「図書館」を1200名以上に提供中。
目次
モチベーションは無理に上げなくて大丈夫。就活へ気持ちをスタートさせる3つのヒント
最初に池田さんは「就活をしたくない自分を責めてはいけません。そもそも人は、自分にとって居心地の良い状態、いわゆる『コンフォートゾーン』を離れたくない生き物です。ですから、就活に気が乗らないのは、ごく普通の反応なのです」と強調します。
大学生は自分の意志に関係なく、4年たったというだけで強制的に元の場所を追い出されてしまいます。さらにその行く先は、髪形や服装、言葉遣い、スケジュールの厳守など、今までとはすべてが変わる社会人の世界。「そうなれば、よほど周到にキャリア構築を考えてきた人でなければ、モチベーションが下がって当たり前なんです」(池田さん)
そんな感情を、気合や頑張りで乗り越えるのは結構難しいもの。そこで池田さんは、世界中の実験から明らかになった感情と行動のメカニズムを利用し、就活に向けて自分の背中を押すためのヒントを教えてくれました。
「やる気でない」に効くヒント1
「就活始めなくちゃ」ではなく「もう始めている」と考える
「就活を始めなくてはと焦っているときは『ゴール(内定)までまだこんなに遠い』と思っているもの。でも『もうこんなにゴールに近づいている』と見方を変えるだけで、やる気はグンと上がります」と池田さん。それを裏付ける、「スタンプカード実験」を紹介してくれました。
- Aグループ→コーヒーを10杯飲むと1杯無料になるスタンプカードを渡す
- Bグループ→コーヒーを12杯飲むと1杯無料になるスタンプカードに、最初からスタンプを2個押して渡す
その結果、スタンプを全部集めて無料のコーヒーを飲んだ人の数は、BグループがAグループをはるかに上回りました。
(コロンビア大学ビジネススクールの研究)
つまり、どちらも10個のスタンプが必要なのに、スタート時点で「もう6分の1進んでいる」と認識したBグループの方が、目標達成率がグンと上がったのです。
「就活も同じです。ESを1枚も出していなくても、サイトを見たりセミナーに参加している時点で、すでにスタンプが5個くらい押されているんです」と池田さん。「だから『始めなくては』ではなく、『もう始めている』と頭を切り替えてください。そうすれば、次のステップが意外に軽く踏み出せることでしょう」
「やる気でない」に効くヒント2
優しく、自分に「できそう?」と問いかけてみる
「また、やる気が出ない自分に対しては『さっさとやれ!』と気合を入れるのではなく、『できる?』とおうかがいを立てる方が、ずっと効果があります」と池田さん。それを物語るのが、次の実験です。
被験者たちにアナグラム(言葉の並び替え遊び)を出題します。その直前の1分間に、それぞれ違うことをしてもらいました。
- Aチーム→「I will.(私はやる)」と自分に言い聞かせる。
- Bチーム→「Will I ?(私はやるかな?)」と自分に質問する。
その結果、Bチームの人はAチームの人より平均して50パーセントも多く課題を解きました。
(イリノイ大学 イブラヒム・シネイたちの実験)
「『私はやるべき!』と厳しく言い続けると、どんどん心が疲れていくだけでなく、モチベーションが下がっていきます。逆に『やるつもりがある?』と優しく問いかければ、心の中で『やろう』という声が出やすくなり、やる気も引き出されやすいんです」と池田さんは解説します。
「やる気がない自分はダメ」と自己嫌悪に陥りがちな人は、まず自分への思いやりを持つことから始めてみましょう。
「やる気でない」に効くヒント3
姿勢と呼吸を整えるだけで「やる気がでる脳」になる
「やりたいことがない、自己PRがないという人は、単純に脳が『思いつきにくい状態』になっているのかも。そんなときは、姿勢や呼吸を整えることで脳を活性化しましょう」と池田さん。これは、次の実験が示唆しています。
男女数名の被験者に、1分間ずつ2通りのポーズを取ってもらいました。
- Aチーム→手を頭の後ろに回し、足をデスクの上に乗せて偉そうな態度で座ってもらう。
- Bチーム→手を膝の上に乗せ、肩をすぼめて座ってもらう。
その結果、Aチームの人はテストステロン(有能感や自信に関するホルモン)の値が上昇し、コルチゾール(ストレスホルモン)の値が下降してパワフルな気分に。さらに参加手当が倍になる賭けにも、積極的に参加する人が目立ちました。
一方、Bチームの人は逆にテストステロンが下降、コルチゾールが上昇して緊張感が強くなり、無力感を覚え、参加手当が2倍になる賭けを拒否する人が目立ちました。
(ハーバード大学 社会心理学者エイミー・カディの実験)
「これはパワーポーズといわれ、人は偉そうな態度を取るだけで、やる気や自信に関係するホルモンが出やすくなるのです。頭で自分の働くイメージが浮かばないなら、まずは身体を意識してみましょう。椅子に深く腰かけて背筋を伸ばし、両肩が前に出ないように引いて、深くゆっくり呼吸をするように心がけてみてください」(池田さん)
まとめ
誰もが心の中で「やる気をだしたい」「自分にもっと期待したい」と願っているもの。「そのために必要なのは自分を追い詰めることではなく、私たちを動かす力となるモチベーションと、うまく付き合うことが大切なんです」と池田さんは強調します。
そうすれば、「やらなくちゃ」というストレスを、「やりたい」という気持ちにきっと変えることができるはず。皆さんもぜひ、自分に合っていると感じた方法を試してみてください!
文/鈴木恵美子
撮影/刑部友康
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