eコマース編・2014年【業界トレンド】

成長著しい業界だが競争も激化。各社はユーザー獲得を目指して品ぞろえ拡充に取り組む

「eコマース(Electronic Commerce。電子商取引と訳すことも)」とは、インターネットなどの通信技術を活用し、コンピュータシステムを介して商取引を行うこと。また、インターネットを通じて商品を購入できるサイトを「ECサイト」と呼ぶ。企業同士の取引に使われるB to B型、オークションサイトなど消費者同士が取引するC to C型もあるが、一般には消費者が企業から商品を購入するB to C型のサービスを指すケースが多い。なお、楽天市場のように複数のショップを集めて出店者から手数料を得る「モール型」事業者と、家電量販店・百貨店などの直販サイトに代表される「直販型」の事業者とに大別されることもある。

経済産業省の「平成24年度我が国情報経済社会における基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によると、2012年における消費者向け(B to C)eコマースの市場規模は約9.5兆円。対前年比で12.5パーセント、08年(約6.1兆円)に比べると56.2パーセントも伸びており、インターネットを通じた購買行動はますます盛んになってきている。中でも伸びているのが、「衣料・アクセサリー小売業」(対前年比21.5パーセント増)、「医薬化粧品小売業」(対前年比19.3パーセント増)、「宿泊・旅行業、飲食業」(対前年比17.8パーセント増)などだ。

総合系ECサイトとして業界をけん引するのは、楽天市場、Amazon.co.jp、Yahoo!ショッピングの「3強」。また、アパレル系のZOZOTOWN、健康食品・医薬品などを手がけるケンコーコムなど、特定の分野で大きな存在感を放つサイトもある。成長業界ゆえに、新規参入を目指す企業は非常に多い。家電量販店、百貨店、スーパーなど、さまざまな分野の事業者がECサイトを立ち上げ、事業の柱に育てようとしている。

この業界で成功の鍵を握るのは、「いかに多くの魅力的な商品をそろえているか」と「いかに多くの顧客を集めることができるか」という2点。魅力ある商品が多ければ来店客が増え、その結果、売り上げが伸びてさらに多くの魅力ある商品が集まるという良い循環ができあがる。そこで各社は、商品ラインナップの拡大に向けた取り組みを進めているところだ。例えば楽天市場を運営する楽天は、13年3月にファッション専門ECサイト「スタイライフ」を買収。また、ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイは、13年7月、ECサイトを個人でも手軽に開設できるサービス「STORES.jp」を運営するブラケットを完全子会社化した。どちらも、出店者の裾野拡大を目指した動きと言えるだろう。また、海外で「Fab」や「Etsy」といった雑貨などを扱うサイトが事業を拡大し、日本でも「MONOCO」や「Sumally」といったサイトに注目が集まるなど、おしゃれな雑貨・小物やアクセサリーなどの売れ行きが急伸。それに対応し、大手サイトでも、一点ものの雑貨やアクセサリーを扱うケースが増えている。

インターネット経由で消費者に働きかけ、リアル店舗での売り上げ増につなげようとする「O2O」(下記キーワード参照)にも注目。例えば、「無印良品」を運営する良品計画は、スマートフォンのアプリやSNSなどの活用に積極的に取り組み、ネットと店舗の双方で購入の活発化を目指している。また、ZOZOTOWNはPARCOと連携し、店頭で商品のバーコードを読み込むと、関連したコーディネートを見たり、ネット経由で購入できたりするスマートフォンアプリ「WEAR」をリリース。こうした試みも、ネットとリアルの連携を目指した一手法として注目が必要だ。

押さえておこう <eコマース業界志望者が知っておきたいキーワード>

O2O
Online to Offlineの略。O to Oと表記することもある。ネット上の働きかけにより、リアル店舗の購買活動を活発化させること。インターネット経由で割引クーポンを発行して来店客増加につなげる、来店するとスマートフォンアプリ上でポイントが貯まるなどは、O2Oの一種。
オムニチャネル
「オムニ(omni)」とは、「すべての」「総合」という意味。実際の店舗、カタログ通販、ECサイト、SNS、スマートフォンアプリなど、さまざまな消費者との接点を活用・連携させ、より多くの消費行動を生み出そうとするマーケティング戦略の一つ。
SEO
Search Engine Optimizationの略。インターネットでの検索結果が上位となるように工夫すること。ECサイトそのものやECサイトで扱われている商品が、検索結果の上位に表示されることは、より多くの購入に直結する。そのため、eコマース事業者にとってきわめて重要。

このニュースだけは要チェック <出店拡大に向けた取り組みが活発>

・「Yahoo!ショッピング」を運営するヤフーが、同サイトへのストア出店料と売り上げロイヤリティを無料にすると発表。これにより、出店社数・出品アイテム数の飛躍的な拡大が期待できそう。収入源を出店料・ロイヤリティから広告収入へと大転換する今回の試みは、業界内外から大きな注目を浴びている。(2013年10月7日)

・コンビニのセブン-イレブンなどを運営するセブン&アイ・ホールディングスが、通販大手のニッセンホールディングスを買収すると発表。ネット通販、カタログ通販を手がけるニッセンを傘下に収めることで、消費者にあった販路で商品を提供する「オムニチャネル」化をさらに進めるのが狙いと見られる。(2013年12月2日)

この業界とも深いつながりが <ポータルサイトとは緊密な関係がある>

ポータルサイト・SNS
ポータルサイト経由の消費者は多い。SNSの口コミで販売を拡大する試みも活発

IT(情報システム系)
顧客の購買情報などの「ビッグデータ」を分析し、売り上げ向上に役立てるケースが増加

家電量販店
ヨドバシカメラなどの通販サイトが品ぞろえを強化し、ECサイトの強力なライバルに

この業界の指南役

日本総合研究所 主任研究員 吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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