カナダにある日系企業の現地法人に勤務。オフの時間は、買い物やジム通い、ドライブや日本の情報をインターネットで収集したりして過ごしている。
あるもので楽しむ柔軟性が求められる
こんにちは。KAWです。今回は、海外駐在生活についてのアドバイスをお送りします。
初めに正直に申し上げると、「これはこうじゃなきゃダメ」といった具合に、暮らしに細かいこだわりがたくさんある人は、海外向きではないと思います。なぜなら、海外ではそんなふうに思い通りには物がそろわないからです。例えば、カナダには「醤油(しょうゆ)」はありますが、「○○メーカーの、丸大豆減塩醤油でないと」となると、まず見つかりません。別の言い方をすれば、メーカーや種類などを選ばなければ手に入るわけで、そんなふうに前向きに捉えられるといいですね。
同じような名称でも中身が違う「似て非なるもの」もいくつかあります。例えばウスターソース。イギリス原産の「ウスターシャソース」は、日本の「ウスターソース」の語源にもなっていますが、まるっきり別物です。加えて、マグロやヒラメといった魚は、こちらでは見たことがありません。薄切り肉も、アジア食材店に行かないと入手は難しいでしょう。
こうした環境では、食生活をはじめ暮らし全般に強いこだわりがある人だと、ストレスがたまり過ぎてしまうのではないでしょうか。それよりも、「せっかくカナダに来たんだから」と気持ちを切り替えて、カナダのものを思う存分エンジョイする姿勢が大切。幸い、カナダの食べ物は、味付けが日本人の口に合いやすく、チャレンジしやすいと思います。甘さは控えめだし、料理も、割と凝った味が多い印象で、「なんとなくトマトの味しかしないトマトソース」みたいな大味な料理にはあまりお目にかかりません。そのせいか、アメリカに住んでいる日本人がカナダに来ると、その多くが「カナダは食事がおいしい」と感動するほどです。カナダ料理以外にも、メキシコ料理のタコスやブリトー、韓国、中国、タイ、ベトナム、インドなどのアジア料理…さまざまな国の料理を味わいましたが、今のところハズレはありません。食生活に限らず、細かいことを気にせずに駐在国の生活や文化を柔軟に楽しむ姿勢が、駐在員には求められているような気がします。
日本についての質問に答えられるように
実は、私自身は、海外志向のようなものは一切持ち合わせていません。ただ、海外に拠点がある会社に勤めている以上、海外赴任は当たり前だと考え、さほど気負わずに受け入れています。「海外駐在」の従来のイメージは、一部のエリート社員のみが選ばれてキャリア形成のために赴任するというものでしたが、時代も変わり、今や、そのようなイメージとはだいぶかけ離れていると思います。むしろ、望むと望まざるとにかかわらず、社員であればそれなりの確率で自然に話が来るというのが実情。もちろん、拒否することもできますが、僕の場合は、「会社のお金でホームステイするようなものだから」という気楽な気持ちでこの話を受けました。
海外で仕事をすることで私自身が得たものは、「どこにいても、何とかやっていけるかな」という自信でしょうか。現地の文化や習慣をうまく吸収して、順応していくスキルは身についたと思います。同時に、現地の人々に、日本の仕事のやり方をそのまま踏襲してもらうことは難しいということも身をもって知ることができました。加えて、細かいことは気にならなくなり、おおらかで本質的なものの考え方ができるようになりました。
将来、海外で仕事をしたいと考えている皆さんに言いたいのは、例えば英語であれば、「英語を完璧に話そう」とは思わないこと。知っている単語や言い回し、最低限の範囲でコミュニケーションがとれれば、それで大丈夫だと思います。私も、語学力自体はあまり変化していないと思う一方で、コミュニケーション力は確実に向上したという実感があります。伝えたいという熱い思いを持って臆せずにぶつかれば、違う考えを持つ人や、言葉が片言でしか通じない人とも理解し合うことができるようになったからです。もちろん仕事なので、交渉もするし、議論もします。ときには議論が白熱することもありますが、十分、やりとりができています。
加えて、海外では日本のことをいろいろ聞かれたりするので、答えられないと少し恥ずかしいかも。日常の暮らしの中で、日本の歴史や最近の風潮、時事問題などには触れておいた方が良いと思います。
カナダ名物バタータルト。バター、卵、砂糖、ドライフルーツやナッツを混ぜ合わせたものをタルトに流して焼き上げてある。
アイスホッケーはカナダの国技のひとつ。もうひとつの国技はラクロスだ。
アルパカは、カナダでは頻繁に見かけるかなり身近な動物。雪が降る中でもモフモフとした毛が暖かそう。
大手ハンバーガーチェーンの巨大看板にも国旗のカエデのマークをあしらっているのは、愛国心の現れなのかも。
構成/日笠由紀