ビール・酒造編

ビール業界では世界的な業界再編が加速。新商品投入で市場活性化を目指す動きも盛んだ

国内のビール市場は、サントリーホールディングス(2015年12月期売上高2兆6868億円)、キリンホールディングス(15年12月期売上高2兆1969億円)、アサヒグループホールディングス(15年12月期売上高1兆8574億円)、サッポロホールディングス(15年12月期売上高5187億円)の4大メーカーが大きなシェアを握っている。一方世界では、「バドワイザー」などのブランドを持つアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)、「ミラー」や「ピルスナー・ウルケル」で知られるSABミラー(英国)、「ハイネケン」「ビンタン」のハイネケン(オランダ)といった巨大外資系メーカーが大きなシェアを握っている。

 

キリンホールディングスがまとめている「2014年度版データブック」によると、14年における国内のビール・発泡酒・「新ジャンル」(キーワード参照)の消費量の合計は540万キロリットル。05年(634万キロリットル)に比べると15パーセント以上も落ちこんでいる。背景にあるのは、若者を中心とした「アルコール離れ」だ。各社は発泡酒や「新ジャンル」といった安価な商品や、本格志向の「プレミアムビール」(キーワード参照)を投入して市場の活性化を図っているが、市場縮小に歯止めがかからない状態が続いている。一方、世界のビール市場は年々拡大中。「2014年度版データブック」によれば、04年における世界のビール消費量は1億5184万リットルだった。これに対し、13年は1億8881万リットルと24パーセントも増加。とりわけ経済成長が続くアジア新興国では、需要が急拡大している。

 

ここ数年、世界のビール業界ではグローバル化が加速している。15年11月、世界1位のビールメーカーとされるアンハイザー・ブッシュ・インベブが、2位のSABミラーを買収すると発表(下記ニュース参照)。世界シェアの約3割を占める両社の経営統合は、世界中に衝撃を与えた。ただし、両社合わせたシェアが大き過ぎる国では独占禁止法が適用される可能性があり、その場合は第三者への事業売却が行われるとみられる。そのため、国内企業も含めた世界規模での業界再編が進みそうだ。一方、国内では「地ビール」「クラフトビール」(ともにキーワード参照)が人気となるなど、小さなビールメーカーの活躍が目立つ。例えば、茨城県の木内酒造が製造販売する「常陸野ネストビール」は海外のビールコンテストで何度も入賞し、国内はもちろん世界でもファンを獲得している。

 

日本酒の分野でも国内市場は縮小傾向だ。国税庁によると、1975年当時167.5万キロリットルだった日本酒の消費量は、2013年には58.1万キロリットルにまで減少している。そこで各社は、発泡(スパークリング)日本酒などの新商品によって、新たな楽しみ方を提案。例えば、宝酒造の発泡日本酒「松竹梅白壁蔵『澪』」はスッキリした味わいの姉妹品などをそろえ、女性など新たなファンの獲得に成功している。また、海外に向けた取り組みも盛ん。「ユネスコ無形文化遺産」に登録されるなど和食の認知度は世界的に高まっているため、日本酒へのニーズも伸びる可能性がある。

 

ウイスキーへの注目度も高まっている。近年、日本のウイスキーは海外のコンクールで入賞するなど世界的な評価が定着しつつある。また、ウイスキーをソーダで割ったハイボールがブームとなったこと、NHKのテレビドラマでウイスキー造りが取り上げられたこともあり、消費拡大が期待されているところだ。

 

ビール・酒造業界志望者が知っておきたいキーワード

新ジャンル
ビール系の飲料は酒税法上、ビール、発泡酒、その他の醸造酒、リキュールに区分される。このうち、その他の醸造酒やリキュールに当てはまるのが「新ジャンル」と呼ばれる飲料だ。「第三のビール」と呼ばれることもある。ビールより税率が低いため、より安い価格で提供できるのが特徴。

プレミアムビール
一般のビールより原料や製法にこだわって造られた高級ビールの総称。2000年代中盤に「ザ・プレミアム・モルツ」(サントリー)が大ヒットし、一つのジャンルとして確立された。高品質な商品を求める消費者が増えていることから、今後も根強い人気が期待できる分野だ。

地ビール・クラフトビール
規模が比較的小さなビールメーカーによって生産されているビールのこと。味にこだわり、個性豊かなビールを求める人が増えていることを背景に、ここ数年、急成長をとげている。大手メーカーもこうした流れに乗り、「クラフト」と銘打った新商品を発売するケースが増加中だ。

寡占市場
ある市場が、少数の事業者によって支配されている状況のこと。ビールの国内市場は大手4社が大きなシェアを占めており、典型的な寡占市場と言える。寡占市場では、事業者側が消費者側に対して立場が強く利益を得やすいため、独占禁止法等によって法的な制限が加えられることがある。

ウイスキー原酒の不足
ウイスキーは麦などを発酵・蒸留した後、木製の樽に詰めて熟成させて原酒を造り、それをブレンドして出荷するのが一般的。熟成には10年以上の歳月を要するケースが多いが、近年のウイスキーブームで原酒が不足する傾向が出てきている。

このニュースだけは要チェック <世界的2企業の統合はきわめて大きなニュース>

・アンハイザー・ブッシュ・インベブが、SABミラーを買収することで合意したと発表。買収額は710億ポンド(約13兆円)で、両社を合計した世界シェアは3割に達するとの見方もある。この件をきっかけとし、今後世界規模での業界再編が活発化するものと見込まれている。(2015年11月11日)

 

・サントリーホールディングスが、「角瓶」「オールド」などの国産ウイスキーや、「ジムビーム」などの輸入ウイスキーを値上げすると発表した。製造コストが上がったことに加え、ウイスキーの人気が急激に高まって原酒が不足したため、値上げによって需要抑制を目指したといわれている。(2015年12月21日)

 

この業界とも深いつながりが <飲料メーカーと関係の深い企業は多い>

飲料
大手ビールメーカーの中には、自社グループ内に飲料部門を持つところが多い

外食
居酒屋やレストランなどは、ビールや日本酒の消費チャネルとして大きな存在

医薬品メーカー
ビールや日本酒で培った技術を基に、医薬品や化粧品づくりに乗り出すケースも

 

この業界の指南役

日本総合研究所 シニアマネジャー 吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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