飲料編

小売業界の商品が強力なライバルに。各社は新商品開発や他社との提携などで競争力強化を図る

国内の飲料メーカーには、日本コカ・コーラ、サントリーホールディングス、アサヒグループホールディングス、伊藤園、キリンホールディングスなどがある。社団法人全国清涼飲料工業会によれば、2015年1~12月の国内清涼飲料生産量は、対前年比2.1パーセント増の2047万キロリットル。2年ぶりに増加に転じ、13年を上回る過去最高を記録した。1990年に比べると、生産量は約2倍となっている。中でも好調なのは炭酸飲料で、生産量は9年連続で増加。国産ミネラルウォーターも15年連続、豆乳飲料も7年連続で増えている。一方、果実飲料や野菜飲料、スポーツ飲料などは前年割れとなった。なお、生産者販売金額は3兆7004億円で、こちらは前年より1.4パーセントの伸びだった。

 

空前の生産量を記録した飲料業界だが、今後の市場環境は楽観を許さない。その理由の一つは、国内で進んでいる人口減少。そしてもう一つが、小売業界の商品が強力なライバルとして存在感を強めていることだ。例えば大手スーパー・コンビニは、飲料メーカーの商品より安価なPB(キーワード参照)商品を開発して市場を奪おうとしている。また、セブン-イレブンの「セブンカフェ」などコンビニ店頭で提供されるコーヒーも、飲料メーカーにとって脅威だ。

 

こうした中、各社は新たなジャンルの商品を開発して需要を喚起しようとしている。代表格は、ここ数年人気が高まっているエナジードリンク(キーワード参照)。また、炭酸入りのスポーツ飲料(サントリー食品インターナショナルの「C.C.スポーツ」など)や、果汁入りや果実風味の炭酸飲料(サントリー食品インターナショナルの「オランジーナ」や「レモンジーナ」、アサヒ飲料「三ツ矢サイダー」シリーズや「ウィルキンソン」シリーズのオレンジ・レモン味商品など)も注目されている新ジャンル商品だ。

 

原料や製法にこだわったり、特別感・高級感を強調したりした「プレミアム飲料」も、各社が注力している分野。缶コーヒーでは、下記ニュースで紹介しているアサヒ飲料「ワンダ極」、こだわりのコーヒーで有名な猿田彦珈琲が監修した日本コカ・コーラの「ジョージア」、「世界一のバリスタ監修」をうたっているダイドードリンコのコーヒー飲料シリーズなどが挙げられる。また、トクホ(キーワード参照)など健康や機能性を売りにした商品の市場も、着実に成長中だ。

 

流通・販売の面では、自動販売機の活用強化に関する取り組みに着目したい。下記ニュースでも紹介しているように、アサヒ飲料と大塚製薬グループ、キリンビバレッジとダイドードリンコが自動販売機について提携。1台の自動販売機を2社で共同利用し、両社の人気商品を並べることで注目度アップ・売り上げ増を目指している。また、訪日外国人増加に対応して自動販売機の多言語化を進めたり、タッチパネル式の液晶画面をつけて多くの情報を買い手に与える自動販売機を開発したりする取り組みも盛んだ。

 

提携の動きは、自動販売機だけにとどまらない。15年7月、JT(日本たばこ産業)が飲料分野から撤退。同社の商品ブランドと自動販売機網は、サントリー食品インターナショナルに売却された。今後も、競争力を高めるために他社との提携・合併を模索する企業が現れるかもしれない。

 

自社のブランドイメージを高めるため、事業と社会的課題を結びつける「CSV」(キーワード参照)に熱心な企業もある。例えばサントリーグループは、日本各地で森林保全活動を実施。自社商品の原料である水を守りながら、環境保護にも貢献している。飲料メーカーは消費者との接点が多く、事業を通じて社会的課題解決を実現すれば、ビジネスの継続可能性を高められるのではないかと期待されている。

 

飲料業界志望者が知っておきたいキーワード

PB
Private Brandの略。小売業者が企画し、メーカーに生産を依頼した独自ブランドのこと。イオンなどが手がけている「トップバリュ」、イトーヨーカ堂などが手がけている「セブンプレミアム」などのPB飲料は莫大な売り上げを誇り、飲料メーカーにとって強力なライバルとなっている。

エナジードリンク
ビタミン類やアミノ酸などの有効成分や、カフェインなどを含んだ清涼飲料水。レッドブル・エナジードリンク(レッドブル・ジャパン)が人気になったことで一躍注目を浴びた。「元気を出したい」「頭や体をリフレッシュしたい」などの消費者ニーズにマッチし、市場が拡大している。

トクホ
特定保健用食品のこと。「おなかの調子を整える」「血糖値の上昇を緩やかにする」「歯の健康維持に役立つ」「骨の健康維持に役立つ」など、特定の保健機能に役立つ成分を含んでいる。製品ごとに有効性や安全性について審査を受け、国からの許可を得られれば、トクホ商品であることを表示できる。

CSV
Created Shared Valueの略で「共通価値の創造」と訳される。企業の社会的責任(CSR=Corporate Social Responsibility)を果たすだけでなく、事業を通じて社会的な課題を解決する考え方を指す。アメリカの経営学者であるマイケル・ポーター氏が提唱した概念。

このニュースだけは要チェック <自動販売機を巡る提携の動きが盛んに>

・キリンビバレッジとダイドードリンコが、自動販売機で互いの主力商品を取り扱うことを発表。2015年3月にも、アサヒ飲料と大塚製薬グループが同様の提携を発表している。双方の人気商品を併売することで、自動販売機の競争力を高め売り上げ増につなげるのが狙い。(2016年1月15日)

 

・アサヒ飲料が、老舗珈琲店「丸福珈琲店」が監修したコーヒー飲料「ワンダ極」を発売。人気コーヒー店独自の焙煎方法を参考にし、深い味わいに仕上げた。高価格帯・高品質な飲料には一定の需要があり、利益率も高く設定しやすいため、参入を目指す企業は少なくない。(2016年3月22日)

 

この業界とも深いつながりが <小売業界は重要な販売チャネルで、かつライバル>

コンビニ
「セブンカフェ」などのコンビニコーヒーは、飲料メーカーにとって脅威

スーパー
PB飲料は低価格を武器に、飲料メーカーのシェアを奪おうとしている

医薬品メーカー
製薬技術を生かし、トクホ飲料の製造に乗り出す医薬品メーカーもある

 

この業界の指南役

日本総合研究所 シニアマネジャー 吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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