コンビニ編・2016年【業界トレンド】

上位企業が合従連衡を加速。宅配受け取りなどのサービス提供で来店客増を目指す動きも活発だ

社団法人日本フランチャイズチェーン協会によると、2015年における同協会正会員10社の全店売上高は10兆1927億円。前年(9兆7309億円)より4.7パーセント伸び、初めて10兆円の大台を超えた。05年(7兆2179億円)に比べると4割以上拡大しており、市場規模は着実に成長している。一方、05年末時点で3万9877店だった店舗数は、10年末に4万3372店、15年末に5万3544店に増加。そのため、1店舗あたりの売上高は頭打ちの傾向だ。

競争が激化する中、各社は合従連衡を加速している。業界3位だったファミリーマートは、ユニーグループ・ホールディングの経営統合を発表(下記ニュース参照)。15年12月には、東海地方を地盤とするココストアを買収した。これでファミリーマートの店舗数は1万8000店ほどになる見込みで、業界最大手のセブン-イレブン・ジャパンに匹敵する規模となった。また、業界2位だったローソンも14年12月に中国地方などで展開するポプラと、15年12月には関東が地盤のスリーエフと資本・業務提携を締結している。4位以下の企業が3強に追いつくのは難しく、今後も業界再編の可能性はありそうだ。これに対し、セブン-イレブン・ジャパンは15年だけで1000店以上を新規出店。独自路線で他社の追撃を振り切る構えを見せている。

来店客を増やすため、「消費者に選ばれる店づくり」も重要だ。例えば、公的サービスを手がける動きはホットな話題。ローソンやファミリーマートなどは、シャープとNTT西日本のサービスを活用して大学の卒業証明書や成績証明書・健康診断証明書等を発行できるサービスを開始した。また、各社はマイナンバーカードを使った住民票などの交付サービスを順次導入する方針を打ち出している。

宅配の受け取りサービスを手がけ、来店客を増やそうとする企業も多い。ファミリーマート、ミニストップ、ローソンでは、以前からAmazon.co.jpの商品を店頭で受け取れるサービスを実施。セブン-イレブン・ジャパンも14年から、イトーヨーカドーのネットスーパーで注文した商品をコンビニ店頭で受け取れるサービスを一部地域において展開している。また、セブン-イレブン・ジャパンが岩谷産業と連携して燃料自動車向けの水素ステーションを設置したり、ローソンが電気自動車用充電設備を設置したりするなど、車で来店する人を増やそうとする企業もある。

新事業の展開も盛んだ。ローソンは三菱商事と連携し、家庭向け電力小売事業への参入を発表(下記ニュース参照)。コンビニは顧客と直接触れ合う機会が多く、電力小売分野でもシェアを拡大できるのではないかと期待されている。また、一部報道によればファミリーマートがジャパンネット銀行と資本・業務提携に向けて協議中。ローソンも、三菱UFJフィナンシャル・グループと協力して新銀行を設立する見込みだ。セブン-イレブン・ジャパンは傘下にセブン銀行があり、大手各社は銀行業への進出を進めつつある。

海外展開も新たなステージに突入している。これまでは店舗展開という「ハード面」の施策が主体であったが、現在は「ソフト面」での展開が拡大。例えば、三菱商事の関連会社であるロイヤリティマーケティングは、ローソンなどで利用できる共通ポイント「Ponta」のサービスを台湾でも開始。台湾からの訪日客が、日本の提携店でポイントを獲得できるようにする。Pontaのサービスはインドネシアでも展開しており、今後も国をまたいだ取り組みが拡大していくだろう。

コンビニ志望者が知っておきたいキーワード

セルフレジ
商品のバーコードを読み取ることで、来店客が自ら精算できるレジのこと。人手をかけずに精算スピードを上げられるため、駅構内の店舗や昼休みに来店客が集中するオフィス街の店舗などでの設置が進められている。

シニア向け商品・サービス
かつてコンビニ利用客の多くは若い世代だったが、現在では高齢者の比率が高まりつつある。そこで、高齢者向けプライベートブランド食品の開発、弁当の宅配サービスなどを手がけるコンビニが増えている。

マイナンバー制度
国民一人ひとりに番号を割り振り、年金や保険料などを一元管理する仕組みのこと。この制度で発行されたカードを使い、コンビニで住民票などを交付するサービスの準備が各地の自治体で進められている。

電子マネー
ICチップを搭載したカードやスマートフォン・携帯電話を、読み取り用の端末にかざして決済するサービスのこと。セブン&アイ・ホールディングスの「nanaco」、イオンの「WAON」が有名。ローソンも15年11月から「おさいふPonta」をスタートした。

このニュースだけは要チェック<合従連衡の動きは今後も注目の要あり>

・ファミリーマートと、サークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングが、16年9月に経営統合することで基本合意したと発表。店舗数3位と4位の合併で、業界地図は大きく塗り変わることとなったが、店舗ブランドの統合など課題も指摘されている。(2015年10月15日)

・ローソンが三菱商事と共同で、家庭向け電力小売事業への参入を発表した。コンビニが電力小売を手がけるのは初めてのケース。16年2月から予約受付を始め、4月から電力を供給する予定。利用料金に応じて共通ポイント「Ponta」を付与することで、利用者の囲い込みを目指す。(2015年12月25日)

この業界とも深いつながりが<さまざまなサービス産業と競合が激しくなりそう>

メガバンク
コンビニが銀行業務に本格参入し、メガバンクや地方銀行が直接の競合に

外食
イートイン(店内で食べること)スペースのあるコンビニが増えるなど競争が激化

鉄道
コンビニチェーンが「駅ナカ」店を手がけるなど協力の動きが活発化している

この業界の指南役

日本総合研究所 未来デザイン・ラボ シニアマネージャー 田中靖記氏

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大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修修了。同大学院工学研究科客員研究員。専門は、未来洞察、中長期事業戦略策定、シナリオプランニング、海外市場進出戦略策定など。主に社会インフラ関連業界を担当。また、インド・ASEAN市場の開拓案件を数多く手がけている。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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