化学編

日本企業は 高付加価値製品で世界をリード。シェールガスの実用化による影響に注目を

化学業界とは、石油・天然ガスに代表される原料に化学反応を加えて素材を生みだし、ほかの企業に提供する産業だ。業界全体は、原油から、ナフサ・エチレン・ベンゼンなどを精製して基礎商品を生み出す「川上」、ポリエチレンやポリスチレンなどのプラスチック、合成繊維や合成ゴムの原料などの中間原料などを作る「川中」、自動車、電機製品、住宅建材、日用品などに使われる最終製品を作る「川下」に大別される。

 

経済産業省が発表した「平成24年経済センサス‐活動調査(製造業に関する速報)」によれば、2012年における化学業界の従業者10人以上事業所の製造品出荷額は、対前年度比で8.1パーセント増の26兆510億円。これは、全製造業の9.2パーセントを占めており、化学業界はわが国の基幹産業の一つと言える。なお、代表的な総合化学メーカーには、三菱ケミカルホールディングス(12年度売上高3兆886億円)、住友化学(同1兆9525億円)、旭化成(同1兆6666億円)、三井化学(同1兆4062億円)などがある。なお、東レや帝人といった繊維メーカーや、信越化学工業などのシリコンウェハー(ICチップなどに使われる、シリコン半導体で作られた基板のこと)メーカーも、広い意味で化学メーカーに含めることもできるだろう。

 

さまざまな業界で日本企業が生み出している高性能・高品質な製品や技術は、化学業界によって下支えされている。例えば、太陽電池の素材や、リチウムイオン電池の素材などを手がける日本の化学メーカーは少なくない。また、次世代ディスプレイと言われている有機ELの素材や、高度な水処理に使われるイオン交換樹脂なども、化学業界の企業によって供給されている。「川上」では、天然ガス・原油産地に近い中東の企業や、需要地に近い中国の企業が強い競争力を誇っているが、「川下」に強みを持つ高付加価値型の日本の化学メーカーは、今後も世界をリードしていくことに期待が持てそうだ。

 

近年、最も注目されているのは、シェールガスの動向だ。これは地中深くの頁岩層(けつがんそう。別名シェール層)から採掘される天然ガスで、新エネルギーとして大いに関心が集まっている。現在、シェールガス関連のビジネスをリードしているのはアメリカで、近い将来アメリカで安価なシェールガスが採掘されるようになると、日本の化学メーカーは大きな影響を受けるだろう。1つ目の可能性は、シェールガス由来の安価なエチレンなどが供給されることで、原材料価格がより安くなるというプラスの影響。そして2つ目は、シェールガスによって、原材料や加工などの工程に必要なエネルギーが安価に供給されることで、アメリカの化学業界や製造業の企業が日本のライバルとして復活するというマイナスの影響だ。

 

他社の買収、協力体制の構築などによって合理化や事業強化を目指す動きが盛んであることも、この業界の特徴。日本・海外のプレイヤーを巻き込んだ業界再編の動きには、常に注目しておきたい。例えば、三菱ケミカルホールディングス傘下の三菱化学は、13年2月にベルギーの化学メーカーであるテッセンデルロ・グループから樹脂コンパウンド(複数の樹脂、あるいは添加剤を混ぜた樹脂のこと。さまざまな樹脂製品の原料として使われる)事業を買収すると発表。さらに4月には、アメリカの化学メーカーであるコムトレックスLLCから、同じく樹脂コンパウンド事業を買収すると発表した。このように、世界市場を見据えて生産体制・販売網を強化しようとする動きは、今後も十分に起こりうるだろう。

 

押さえておこう <シェールガスの推定埋蔵量ランキング>

1位……中国(1115兆立方フィート)
2位……アルゼンチン(802兆立方フィート)
3位……アルジェリア(707兆立方フィート)
4位……アメリカ(665兆立方フィート)
5位……カナダ(573兆立方フィート)
(世界全体……7299兆立方フィート)

※アメリカエネルギー情報局(Energy Information Administration)調べ 。アメリカの推定埋蔵量は4位だが、採掘技術の高さなどから実用化は最も早いと予測されている。

要チェックニュース! <生産体制を再構築する取り組みが進んでいる>

・住友化学が、家庭用・業務用殺虫剤などで知られる白元への出資を発表。両社はこれまでも防虫剤の開発などで協力してきたが、さらに提携関係を強化することになった。新商品開発での一層の協力や、販路の相互活用などを促進していくものと見込まれる。(2013年4月26日)

 

・住友化学が、石油化学製品の基礎原料であるエチレンの国内生産を停止する方針だと発表。三菱化学も、14年に鹿島営業所のエチレンプラントを1基停止すると発表している。汎用品の生産体制をどう再構築していくか、あるいは、どう高機能・高付加価値製品にシフトしていくかは、業界にとって重要な課題の一つだ。(2013年2月1日)

つながりの深い業界 <原料の供給先である石油業界と深いつながり>

石油
石油化学製品の原料供給元として密接な関係。原油発掘などで提携も行う

半導体
半導体用のシリコン製品や、液晶、有機ELなどの原材料を提供している

重工メーカー
LNG運搬船の建造、石油・天然ガスプラントの建設で協力関係にある

 

この業界の指南役

日本総合研究所 主任研究員 吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

 

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

 

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